【声明】国旗損壊罪創設法案に反対します-表現の自由と市民社会を守るために-

【声明】国旗損壊罪創設法案に反対します-表現の自由と市民社会を守るために-
2026年6月30日
緑の党グリーンズジャパン運営委員会
国旗損壊罪を新設する法案が国会に提出され、本日衆院を通過しました。私たちは、この法案に強く反対します。
まず、法学者などからも指摘されている通り、この法案には明確な立法事実(法律を必要とする社会的事実)が欠けています。器物損壊罪などの現行法で対応ができないような社会的な状況にあるとは言えず(※1)、逆に言えば、現行法で規制できないような「内心」に踏み込み、市民を管理・統制しようとする意図があると疑わざるを得ません。
刑罰は国家が個人に対して行使する最も強い権力のひとつであり、その適用は、真に必要な場合に限定される必要があります。国旗を「神聖視」し、批判的表現を抑圧するような法は、民主主義社会にふさわしくありません。独裁的・強権的政府が同種の法律を利用して市民の人権を弾圧している事実にも目を向ける必要があります(※2)。
国際人権法の観点でも問題です。国際人権団体は、この法案が「市民的及び政治的権利に関する国際規約(自由権規約)」にも反していると指摘しています(※3)。また、国連人権委員会もすでに「国旗やシンボルに対する不敬」に関する法律に対する懸念を表明していることにも留意すべきです。
また、この法案は、構成要件が著しく不明確です。刑罰法規は、どのような行為が犯罪となるかを市民が予測できる程度に明確でなければならないことが、罪刑法定主義(憲法31条)の要請です。「人に著しく不快又は嫌悪の情を催させる」といった基準は主観的・曖昧です。自分自身が直接受ける行為に対するものとは異なり、国旗に対する表現行為が「不快」かどうかは、受け取る人の思想・信条によって千差万別であり、恣意的な運用を招きかねません。このような曖昧な規定は、市民の予測可能性を害し、表現活動に対する抑圧につながり、不当な萎縮を生み出しかねません。この法案に対して、保守系の団体や知識人、自民党内からも、国旗への尊重は刑罰による強制ではなく、市民の自発的な敬意と自由な意思に支えられるべきだとの主張もあります(※4)。
外国国章損壊罪との均衡を理由とする主張もありますが、過去に外国国旗への損壊で立件された事例は極めて少数です(※5)。諸外国との友好関係は大事にすべきですが、現在においてもなお外国国旗の損壊につき独立の刑罰規定を維持する必要性があるかは、再検討する時期に来ています。
私たち緑の党は、「法律は人権と環境を守るためにある」と考えます。国旗損壊罪のような、表現の自由を脅かし、市民社会を窒息させる過剰な処罰立法には、強く反対します。私たちは、多くの市民や立憲野党の皆さんと共に、言論の自由と多様な意見が尊重される開かれた社会を守るために、引き続き尽力していきます。
※註
1:他人所有の国旗を損壊した場合は、器物損壊罪で処罰されるし、自己所有の国旗を燃やして公共の危険を生じさせた場合は、非建造物等放火罪で処罰が可能。
2:香港政府は中国国旗と香港国旗の損壊を禁じる二つの法律を使って民主活動家たちを弾圧してきた。2019年に香港裁判所は、13歳の女子が民主化デモの際に中国国旗を燃やしたとして12か月の保護観察を科した。また、民主活動家の古思堯氏はこれらの法律に違反したとして少なくとも8回有罪判決を受けた。下記HRWより引用。
3:Human Rights Watch記事「国旗損壊罪の法案は人権を脅かす」参照。 https://www.hrw.org/ja/news/2026/03/25/japans-flag-desecration-law-poses-a-threat-to-freedom-of-expression
4:下記投稿・記事などを参照
・「一水会」2026年5月31日付X投稿 https://x.com/issuikai_jp/status/2061033690281742515
・朝日新聞2026年6月29日記事「『国旗損壊罪』に異論を唱える理由 自民・岩屋毅前外相インタビュー」https://digital.asahi.com/articles/ASV6V1H3CV6VUTFK00HM.html
5:外国国旗への侮辱行為として最も有名な、1958年長崎市で開催された切手展において当時掲揚されていた中華人民共和国の国旗が引きずり下ろされた事件では、刑法92条の適用には「外国政府の請求」が必要であるところ、当時日本は中華人民共和国と国交がなかったため、結果として外国国章損壊罪では処理されず、軽犯罪法違反として科料処分にとどまった。
全文(pdf)→ https://greens.gr.jp/uploads/2026/07/079558325a0db9aad7a80b10fc5c0fb9.pdf

