【論説】沖縄辺野古新基地問題裁判-最高裁判決は地方自治を蹂躙するもの

【論説】沖縄辺野古新基地問題裁判-最高裁判決は地方自治を蹂躙するもの
-環境破壊も技術的危険も明らかな基地建設工事の即時中止を-

2023年9月11日
緑の党グリーンズジャパン運営委員会

ㅤ沖縄県名護市辺野古の新基地建設で、軟弱地盤改良工事に伴う沖縄防衛局の設計変更申請を県が不承認とした処分を巡る県と国の訴訟の最高裁判決で、最高裁第1小法廷(岡正晶裁判長)は4日午後、設計変更申請を承認するよう指示した国の是正指示に県が従わないことは「地方自治法の規定に反している」として、県の上告を棄却しました。

ㅤこの過程において、私人の権利救済を目的とした行政不服審査法を政府が悪用して、あたかも私人であるかのように沖縄県の処分に不服を申し立てるという行為は、多くの行政法学者から違法ないしその疑いが強いと指摘されています。最高裁がこうした国の手法を追認したことは、憲法で保障された地方自治の本旨を無視するものであり、法の番人としての職責に反するものと言わざるを得ません。

ㅤ米軍基地建設問題に限らず、司法において今回のような判断がまかり通れば、国の意思と自治体の判断が対立した場合に、自治体は公正な審判を期待できず、国に従うことを強いられることになります。その点で、これは沖縄基地問題を超えて、この国の自治や民主主義の問題でもあります。

ㅤ沖縄県の玉城デニー知事は、今回の判決を受けた記者会見で、「地方自治の本旨を踏まえた公平・中立な判決を最後まで期待していただけに極めて残念」と述べるとともに、環境面からも「国は生物多様性国家戦略を作っているが、この大浦湾一帯はラムサール条約にも登録し得る重要な湿地帯として指定し(※1)、県もこれに合致する形で明確に環境保全を打ち出してきたが、新基地建設は環境面において非常に大きな影響を及ぼす」とあらためて指摘しました(※2)。

ㅤそもそも、この訴訟の契機となった沖縄県の「不承認」は、沖縄防衛局が出願した変更承認申請の内容に「埋立ての必要性」や「国土利用上の合理性」が認められないこと、軟弱地盤について国が十分な試験を実施していないことなどの合理的な根拠に基づき、公有水面埋立法の要件を満たさないとの判断によるものです。ところが今回の判決では、こうした問題の中身には一切踏み込まなかったことも問題です。

ㅤ判決翌日(9月5日)、「辺野古新基地を造らせないオール沖縄会議」は「私たち県民は、民意を背景に、法と科学に基づいて国の設計変更申請を不承認とした知事判断を強く支持します」と表明する県民集会を開いています(※3)。

ㅤ私たち緑の党グリーンズジャパンは、デニー知事と県民の揺るがぬ決意を強く支持します。2018年・2022年沖縄県知事選挙や第二次安倍政権発足以来の一連の国政選挙をはじめ、沖縄県民の「辺野古基地建設反対」の意思は明確に示されてきています。技術的にも、土木工学の専門家から「護岸の崩壊もあり得る」と指摘されており、辺野古基地の構想は文字通り足元から崩れ落ちています。そしてまた、これ以上の基地負担を沖縄県に過重に押し付けることなく、沖縄の市民・自治体が長年求めている基地のない平和を実現するための働きかけは、日本に住む全ての人の担うべき責務であると考えます。

ㅤ私たちは、2021年12月の声明(※4)でも述べたように、平和と環境保全、基本的人権や社会的公正の観点から、辺野古基地建設に向けた工事や手続きの一切に反対し、日本政府に対して辺野古への基地移転工事の即時中止と普天間基地の閉鎖を強く求めます。

※註

1)いのちの海とサンゴ礁を守れNGO共同 
https://www.wwf.or.jp/activities/statement/1189.html

2)デニー知事の記者会見動画 
https://ryukyushimpo.jp/news/entry-1778436.html...

3)9.4最高裁判決を糾弾し知事の設計変更不承認を支持する県民集会
https://all-okinawa.jp/2713/

4)声明:辺野古基地建設埋め立て設計変更-沖縄知事の不承認を支持し、工事の即時中止を求めます(2021年12月16日) https://greens.gr.jp/seimei/31039/

PDF→ https://greens.gr.jp/uploads/2023/09/ronsetsu_nobekokiti.pdf