【声明】拙速な「原発GX法」制定にブレーキを!

声明】拙速な「原発GX法」制定にブレーキを!

―原発事故や放射性廃棄物の課題を置き去りに、推進への方針転換はあり得ないー

2023年5月2日 
緑の党グリーンズジャパン運営委員会

4月27日、GX脱炭素電源法案が衆議院を通過しました。連休明けには参議院での審議に入る見通しです。この法案は、昨年7月、経団連や連合など業界団体代表で構成された「GX実行会議」の方針に基づき、原子力基本法・原子炉等規制法・電気事業法・再処理法・再エネ特措法の5つの改正案をまとめた「束ね法案」です。多岐にわたる問題があるにもかかわらず、わずか5ヶ月でパブコメにかけられ、多くの市民からの疑問や反対意見は何ら反映されることなく、短期間で審議されました。

また、国会ではこの法案の他、「軍需産業強化法案(防衛生産基盤強化法案)」やマイナンバー義務化、入管法改正案など、日本社会の今後に重大な影響を及ぼす法案が並行して上程・審議され、十分かつ広い熟議とはかけ離れた審議となったことも、大きな問題です。

これまで、自民党政権下においても、少なくとも表向きには、「原発依存」を可能な限り抑制する方向が示されてきました。しかしこの法案は、他の再エネなどと比較して原子力を特別扱いし、「国の責務」において原発の再稼働・新増設・新世代革新炉の研究開発まで推進することを詳細に書き込み、世界に類を見ない70年越えの「運転期間延長」を許すものとなっています。さらに、原発事故の教訓と反省に基づき経産省から独立させて環境省の外局として設置された原子力規制委員会による規制も骨抜きにし、原発推進政策に一大回帰する姿勢を明確にするものです。

私たち緑の党は、東電福島第一原発事故の後の放射能災禍の中から立ち上がった脱原発運動の高まりと共に発足しました。2011年の東電福島第一原発事故から12年経った今も、福島県内外で今なお高濃度汚染が確認され、3万人以上の人々が故郷に帰ることができず、多くの家族や地域が分断され、深刻な暮らしを余儀なくされています。福島の「復興」を演出しながら、被災者・避難者に背を向ける政府の方針に、私たちは強く反対します。

現在、再エネは急速な普及とコスト低下が実現されており、すでに四国や九州などでは再エネで電力需要を賄えるようになっています。再エネ100%は技術的に十分可能であり、原発は脱炭素に何ら寄与せず、再エネの発展を妨げるものでしかありません。

政府は原発活用の理由のひとつにロシアのウクライナ侵攻に伴うエネルギー危機をあげています。しかし、ロシアのウクライナ侵攻で私たちが理解したのは、原発は敵対する者の手に引き金を委ね、自国に向けられた核兵器に他ならないという事実です。日本列島に原発を並べながら「敵基地攻撃能力」を持とうとするのは明らかな自己矛盾です。

また、G7環境相会議において、汚染水の海洋放出は「歓迎」されませんでした。原発サイトに溜まる「使用済み燃料」の処理・管理もままなりません。高レベル廃棄物のゆくえも未確定のまま、原発と核燃料サイクルだけは推進しようとする国の姿勢は、未来世代に対しても無責任極まりないものです。

私たちは、政府の強引な原発推進論の詭弁を徹底的に批判するとともに、安心でコストも安く地域分散型で環境を汚すことのない再エネ100%に向けて、また、これまでの原発立地地域が原発に依存しない自立した経済を築けるように、これからも活動を続けます。

声明全文 PDFファイル→ https://greens.gr.jp/uploads/2023/05/seimei_GX.pdf