【世界のみどり】ドイツ緑の党ジルビア・コッティング=ウール議員来日

向かって左から3番目がジルビアさん

向かって左から3番目がジルビアさん

〈報告〉長谷川平和:緑の党 国際部



2013年12月6日(金)都内のレストランにて、緑の党グリーンズジャパンのメンバーと同盟90/緑の党(以下、ドイツ緑の党)の原子力・環境政策スポークスパーソンである連邦議会議員のジルビア・コッティング=ウールさんとでランチ・ミーティングの場をもちました。コッティング=ウールさんは、12月6日から1週間の日程で来日し、福島第一原子力発電所から2年半以上が経過した現地の状況を視察するとともに、菅直人元首相や有力な国会議員と意見交換を行うほか、大学のシンポジウムにも参加する予定です。

ドイツでは今年7月26日に「最終処分場探査法」*が施行されましたが、この法案成立のきっかけをつくったのがコッティング=ウールさんでした。これまで高レベル放射性廃棄物の最終処分場に関する議論はゴアレーベン(ニーダーザクセン州)一辺倒であったのですが、バーデン・ヴュルテンベルク州で初の緑の党首相となったヴィンフリート・クレッチュマンが同州域内でも検討する用意のあることを発表しました。これを契機に最終処分場について白紙から議論をはじめることへの合意が図られることになったのですが、クレッチュマン州首相に同提案をしたのが、同じくバーデン・ヴュルテンベルク州緑の党の連邦議会議員であるコッティング=ウールさんだったのです。

ランチ・ミーティングにあたり、日本の緑の党からは共同代表のすぐろさん、運営委員会副委員長の漢人さんをはじめ4名が出席しました。日本側からは今年7月21日に行われた参議院選挙の総括、コッティング=ウールさんからは9月22日に行われたドイツ連邦議会選挙の総括についての情報を交換し、緑の党としての政策や選挙戦略などについて活発な議論が行われました。ドイツ連邦議会選挙での敗退は、やはり増税の必要性を訴えたことで「増税政党」、週に1日の菜食の日「ベジデイ」を提案したことで「(肉の)禁止政党」というレッテルを貼られたことが大きく影響したようです。2011年以降、ドイツ緑の党は地方選挙で連戦連勝していたので、「ちょっと調子に乗りすぎたかしら」とコッティング=ウールさんは悪戯っぽく笑って話されたのが印象的でした。ドイツ緑の党が掲げる選挙プログラムの優先順位は、党員投票によって決まっていくので、すべての選挙プログラムが緑の党議員団の考えるようなプログラムになるとは限りません。週に1日の菜食の日を提案する「ベジデイ」については、誰からも修正提案がなされないまま、気が付いた時には最後までプログラムに残っていたことなど、裏話も話してくれました。

また、テーマが参加型民主主義に移った時、総会の運営方法についても意見交換がありました。ドイツ緑の党の総会では約1600件の修正案が提出されるようです。しかし、それらをグループ化し、また経験豊かなスタッフによる事前調整の過程など、そこには30年の経験の蓄積と体系化されたノウハウを感じさせました。
ドイツでも若い世代の選挙離れが顕著なようで、若い世代とどのようにして政治活動を一緒にやっていけるかは、ドイツ緑の党にとっても課題のようです。日本と同様に、ドイツ緑の党にもユースがありますが、財政的に支援する「名付け親制度」などもあるそうです。最近では、ユースがシニア世代の議案をひっくり返すような事例もあり、そのような若い世代の台頭についてコッティング=ウールさんが嬉しそうに語ってくれました。
現在、秘密保護法案の陰に隠れて、原発をベース電源とし、再稼働や核燃料サイクルを推進しようとする「エネルギー基本計画」が提出されようとしています。未だに脱原発を決断することの出来ない日本に対し、世界は問題解決能力と政治力の限界を感じています。このような状況の中で、コッティング=ウールさんは日本の脱原発を進めるために国際的な交渉の枠組みを提案しようとしています。日本の緑の党でも、具体的なコンセプト内容を精査するとともに、国際的なネットワークを活かした取り組みを模索していきたいと考えています。

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*「最終処分場探査法(Standortauswahlgesetz / Endlagersuchgesetz)」では、33人からなる委員会を設置し、2015年12月31日までに最終処分場の選択方法についての報告書を提出することになっています。委員会には、連邦議会議員8名と州政府構成員8名の他、民間より科学者8名、環境団体代表2名、宗教団体代表2名、経済界代表2名、労働組合代表2名、そして委員長1名から構成されます。連邦議会議員8名の中には緑の党の枠が1名あり、そこにはコッティング=ウールさんが名前を連ねることになっています。2031年末までには最終処分場を決定し、その後2040年までには最終処分場を完成させる筋道をたてていますが、各プロセスには委員長、議員を除く民間の委員3分の2による同意が必要となります。

最終処分場探査法(Standortauswahlgesetz):↓
http://www.bmu.de/bmu/presse-reden/pressemitteilungen/pm/artikel/standortauswahlgesetz-tritt-in-kraft/