再生可能エネルギーはこんなに広がる

□普及拡大する世界の再生可能エネルギー

 再生可能エネルギーは、この10年の間に世界各地で爆発的に普及拡大しています。2011年には世界の新設電源の約半分は再生可能エネルギーで、太陽光発電はドイツやイタリアが、風力発電は中国がけん引しています。多くの国や地域が導入の目標値を掲げ、普及を促進する政策を導入しています。再生可能エネルギーに向かう投資は拡大し、市場の活性化や多くの雇用創出につながっています。

 東京電力福島第一原子力発電所の事故を受けて2022年までの“脱原発”を決めたドイツでは、2011年の総発電量に占める再生可能エネルギー比率が19.9%に拡大し、原子力発電の比率17.7%を上回りました。さらに2012年上半期にはその割合を25.1%まで増加させています。今でこそ再生可能エネルギーの取り組みの先進国と言われるドイツですが、1990年代までの電力システムは日本と同様に民間電力会社による垂直統合・地域独占型であり、2000年には再生可能エネルギーの割合は6%に過ぎませんでした。しかし、固定価格買取制度(FIT)の導入や電力システム改革等の様々な取り組みにより、12年間で再生可能エネルギーを25%まで増やしました。さらに、2050年に再生可能エネルギーで80%電力を供給するという目標に向かい、次なるステージへと邁進しています。

 

□再生可能エネルギーを使いこなす技術の発展

 太陽光発電や風力発電の発電量は確かに天候によって変動します。しかし、同様に常に変動している需要側でも使用量をコントロールすることで柔軟な需給調整が可能になります。さらに、変動する電源も多数導入することによる“ならし効果”により、地域的にみれば変動幅を小さくできます。

 スペインでの電源の主役(主電力源)は再生可能エネルギーです。再生可能エネルギー由来の発電量は、2011年の総発電量のうち全体の約33%を占めました。2012年の早朝には、瞬間的にですがスペインの全消費電力の約60%を風力発電が供給しました。蓄電に頼らずとも、広域の系統運用と精緻な気象予測システムなどにより変動電源のコントロールが可能になっています。

 また、バイオマスや小水力、地熱は天候に左右されず一定の電力供給が可能です。欧州などでは太陽光や風力発電とバイオマス発電など、特質の異なる電源の組合せによる再生可能エネルギー平滑化手法の検討も進められています。

 

□普及に伴いコストが下がる

 国家戦略室のコスト検証委員会では、2011年10月から、原子力、火力、各再生可能エネルギー電源について、これまでは含まれていなかった事故リスク対応費用や立地交付金などの政策費用も含めてコストの検証を行いました。長らく1kWあたり5〜6円という数字が出され安いといわれていた原子力のコストについては、福島第一原発事故をめぐる費用も含め下限で8.9円/kWh、事故費用が20兆円ならば10.2円/kWhという試算が出されました。今後の事故対応いかんによってはさらにふくれ上がる可能性もあります。

 一方、風力は下限9.9円/kWh、地熱は10円/kwhと試算され、コスト的には原子力や石炭と同レベルになりました。さらに、風力や太陽光発電は大幅な価格低減の可能性も見込まれました。再生可能エネルギーは家電等と同様に、量産効果や技術改善―つまり、作り普及すればするほどコストが下がってきます。

 

□日本が持つ再生可能エネルギーのポテンシャル

環境省が2012年に発表した再生可能エネルギーポテンシャル調査によれば、日本国内では、風力発電40,000億kWh、太陽光発電(住宅を除く)約1,600億kWh、中小水力発電約800億kWh、地熱発電約900億kWhの再生可能エネルギーの導入可能性があります。数字だけをみれば、日本のエネルギー需要を十分賄うことが可能になっています。

ただし実際には、例えば風力発電の適地は北海道や東北等の一部に偏っていたり、国土が狭い日本では土地用途の利用調整が必要だったり、ポテンシャルを活かす工夫が必要になってきます。

 

□再生可能エネルギーを大きく拡大する条件

 2012年7月に再生可能エネルギーの固定価格買取制度が始まり、発電事業参入への経済的インセンティブは整いました。制度開始から約8ヶ月が経過しましたが、太陽光発電については住宅用、産業共に導入が増加しています。しかし同時に、再生可能エネルギー適地への電力系統の整備に早急に着手し、再生可能エネルギー電源の受け入れ態勢を整備する必要があります。さらには、発送電分離を含む電力システム改革を、先行する欧米の経験にも学びながら進めていく必要があります。

 日本のエネルギー消費量のうち約4分の3を占める熱エネルギーについても対策が必要です。工場等でボイラーの燃料として使われている重油、家庭や事業所などで暖房や給湯として使われている灯油やガス等を再生可能エネルギーに置き換える等、取り組むべきことは多くあり、熱政策の整備も行う必要があります。

 

□再生可能エネルギー100%の未来をめざして

 再生可能エネルギーの未来は私たちの一つ一つの「選択」の積み重ねにより決まります。同時に、国が“脱原発・エネルギーシフト”の大きな方向性を示し選択肢を用意することは非常に重要です。私たち緑の党は、知恵、ネットワークを活かし、明確にエネルギーシフトを進める政策を打ち出し、実行していきます。

 

 

【参考情報】

「自然エネルギー未来白書」REN21・ISEP、2013年1月

http://www.isep.or.jp/wp-content/uploads/2013/01/REN21_GFR_2013_print.pdf

「コスト等検証委員会報告書」2011年12月

http://www.npu.go.jp/policy/policy09/archive02_hokoku.html

「原子力のコスト」大島堅一著、岩波新書、2012年

「ドイツ視察報告書〜エネルギーヴェンデを進めるドイツ」自然エネルギー財団、2012年10月

http://jref.or.jp/images/pdf/20121018/energiewende_20121018.pdf

「発電の費用に関する評価報告書」エネルギーシナリオ市民評価パネル、2011年10月

http://www.wwf.or.jp/activities/upfiles/201110_enepane.pdf

「平成22年度再生可能エネルギー導入ポテンシャル調査報告書」環境省、2012年3月

http://www.env.go.jp/earth/report/h23-03/full.pdf