【声明】「収入の壁」めぐる予算議論は将来不安を解消できない

【声明】「収入の壁」めぐる予算議論は将来不安を解消できない

2025年4月8日
緑の党グリーンズジャパン運営委員会

 政府の2025年度予算が3月31日に成立しました。少数与党となった自公政権は、野党との協議が避けられず、いわゆる「103万円の壁」問題や物価高騰対策など、税と生活保障をめぐる議論が国会で繰り広げられました。

 当初予算からの大きな変更は、高校無償化、所得制限を設けた「収入の壁」160万円への引き上げでした。また物価対策として備蓄米の放出が行われ、ガソリン補助金の継続も決められました。しかし総じて、その場しのぎに終わり、将来不安を抜本的に解消するビジョンと政策に基づく予算案とは言えないものでした。とりわけ若者の将来不安は深まるばかりと言わざるをえません。

 財源なき議論が前提となり、国債費(借金返済)は昨年度予算から約2兆円増加し、政府の累積債務は拡大し続けています。18歳に対する世論調査では、高齢になった時には「年金制度は破綻する」または「維持が難しくなっている」との答えが75%にもなっています。累積債務の拡大を抑制できないようでは、若者の将来不安の抜本的解消は困難であり、現時点での所得増を求めてしまうのは当然なことだと思われます(※1)。緊急対策は必要だとしても、将来不安を解消できるビジョンに基づかなければ、不安は拡大するだけです。

 また、3年間で8兆円にもなったガソリンへの補助金のさらなる継続は、気候対策に逆行しています。若者の世論調査では、83%が「気候変動を心配している」と答え、約50%が「日常生活にネガティブな影響を与えている」と答えています(※2)。若者の気候不安を拡大してしまう対策と言わざるを得ません。

 他方で、「103万円の壁」の議論では、国民民主党の主張する「控除」の拡大は税制上、高所得層にも及び、この提案が実質的には高所得者優遇・格差拡大の減税案であり、所得税の累進性緩和の提案に他ならないことが十分に指摘・議論されていません(※3)。格差と貧困の解消が求められているにも関わらず、格差を拡大する減税案は、自己責任を助長し、支え合いの連帯社会に逆行するもので、本来、厳しく批判されるべきです。

 今後、ますます社会保障や格差・貧困対策の財源確保が必要となり、高所得者層や巨大な内部留保を有する大企業などへの応分の負担・増税も含む公正な税制への抜本的改革が求められています(※4)。しかし選挙での有権者からの批判を意識して、与野党全体がその議論を回避しています。公正な税制へ向けた抜本的な議論に正面から取り組み、「信頼されていない政府」から「信頼される政府」へと改革することが強く求められています。

 緑の党グリーンズジャパンも、将来不安を解消する公正な税制の提言へ向けて、全力で取り組みます。

※1 「18歳の意識調査、社会保障」、日本財団、2023年11月
※2 「気候不安に関する意識調査(国債比較版)」電通総研、2023年3月
※3 財源なき減税という意味では与党も国民民主党も同じですが、結果は、与党案は所得に関係なく2~3万円の減税、他方で国民民主党案は、年収200万円の人は8.2万円、500万円の人は13.3万円、800万円の人は22.8万円の減税となり、高所得者優遇、格差拡大の減税提案です。
※4 緑の党の「税と社会保障」の基本的方向性については、基本政策の「公正な負担によって、すべての人の生存権を保障する」を参照。

全文→
https://greens.gr.jp/uploads/2025/04/seimei_shunyunokabe.pdf