【声明】「国の補充的指示」を可能にする地方自治法改正法案に強く反対します

【声明】「国の補充的指示」を可能にする地方自治法改正法案に強く反対します

2024年5月26日
緑の党グリーンズジャパン運営委員会

今国会では、大規模災害や感染症蔓延など「国民の安全に重大な影響を及ぼす事態」が発生した場合、個別法に規定がなくとも自治体に必要な指示を行なうことができるとする特例を設ける地方自治法改正案がすでに衆議院で審議され、与党は早期の成立を図ろうしており、重要な局面を迎えています。

しかし、これまでの国会内外での議論ですでに明らかになっている通り、その「重大な影響を及ぼす事態」の定義が曖昧であるばかりか、このような規定を必要とする立法事実がないことを、政府は公然と認めています。その理由を「想定外のことが起こった際に対応するため」としていますが、そのような立法を許せば、およそあらゆる「想定外」に対処するため、国による強権的な統制を可能にするあらゆる恣意的法制度へと結びつくことになります。何が起こるかわからないから「国の補充的指示が必要」だと言う政府の論理は不公正・非合理で破綻しています。また、国会の関与もなく「閣議決定」」で行うというのも許されるものではありません。地方自治を具現化するための法律に、いくらでも拡大解釈可能な形でその地方自治を制限する条項を盛り込むことも、きわめて不適切です。

この法案に対し、全国知事会も「国と地方の対等な関係が損なわれる」「法案上必ずしも明記されていない点もある」との懸念を示し、「地方自治の本旨に反し安易に行使されることがない旨が確実に担保される」ことを求めています。「改正案の考えには賛同」とする自治体首長も「安易に行使されることにより、地方分権改革の中で築かれた国と地方の関係性が損なわれるおそれ」「国は現場から遠い分、実態にそぐわない画一的な判断をするおそれ」「国の無謬性や国の方が適切な判断ができるということを前提とした議論ではなく、丁寧な議論が必要」などと指摘しています。

この法案は、現に進行している「重大な事態」に無力であるばかりか、有害です。2020年からの新型コロナ感染拡大では、国の対策に先行して自治体の現場で手探りの中で独自の対応も進められる一方で、国による自治体への事実上の「指示」が、逆に自治体の取り組みを阻害し、その実効性や法的根拠も問われる問題も生じました。今年初めに発生した能登半島地震でも、被災地では劣悪な避難所環境が続き、被災者への支援制度も不十分です。この地震で必要だったのは、国による「指示」ではなく、現場で苦闘する被災者や自治体への適切かつ充分な「支援」です。

また、この間、自民党政権が民主主義や立憲主義を踏みにじってきた経緯や、改憲議論での「緊急事態」条項の動きなどを見れば、国家の統制を強化しようとする政治的意図も明確であり、この法案もその流れの中にあることは明白です。米軍辺野古基地問題で沖縄県の権限を剥奪する「代執行」の動きも同様です。

客観的根拠も曖昧で説得力も欠けたあいまいなまま、衆議院総務委員会での採決が強行されようとしています。地方自治と民主主義を強権から守るため、私たちもこの法案に強く反対し、地方自治を守ろうとするすべての関係者とともに声を上げ、廃案に向け行動します。

PDFファイル:https://greens.gr.jp/uploads/2024/05/seimei_jitiho.pdf