【声明】離婚後共同親権法案-立ち止まって議論を

【声明】離婚後共同親権法案-立ち止まって議論を

2024年4月22日 
緑の党グリーンズジャパン運営委員会

離婚後も父母双方が親権を持つ「共同親権」の導入を柱とした民法などの改正案が、4月16日、衆院本会議を通過しました。
家族法制の改正77年ぶりで、様々な論点があったにもかかわらず、法制審議会内部でも異論のあるまま法案が提出されるという異例の経過を経たもので、審議に入ってからもDV被害当事者や各地の弁護士会が慎重審議を求めていました。離婚後の8割以上が母親側に親権があるという実情の中で、現行の制度によってDVや虐待から逃れることができている母子からの怯えや不安の声があることを、まず確認する必要があります。

法案では、共同親権か単独親権かに合意できない場合は、家庭裁判所の決定に委ねることになっています。その決定が適切になされるか、国会審議でも答弁はきわめて曖昧で不十分でした。父母の一方が虐待やDVに及ぶ恐れがある場合は裁判所が単独親権と定めることとしていますが、虐待やDVを見極められず、力関係などから一方の当事者が納得できないまま共同親権となる可能性があります。そのような場合などでは、居所指定や子どもの進学・医療等での許可などを通して、相手方により虐待やDVが続く懸念が指摘されています。また、現在でも家庭裁判所の負担は大きく(2020年の全国の離婚調停の申立件数は4万件以上)、調停等でもDVや虐待が軽視される事例も少なくありません。共同親権が導入されれば負担はさらに増え、脆弱な人員・体制のもとで、公正な判断ができる体制にあるか、疑問です。

一方、今回の問題を、単純に「単独親権」と「共同親権」との対立として考えるのは不十分と思われます。離婚後の父母と子どもとの関係はさまざまで、現行制度の中でも問題が生じている事例も含めて、さらに多様で多面的な議論が必要です。また、そもそも子を養育する「権利」としてだけでなく、養育の責務との関係で、「親権」という概念の整理や再定義も必要です。何よりも、子どもの幸せやその将来をどのように守るかという視点こそ重要で、子ども自身の決定権、意見の聴取・尊重、そのための制度をどのように組み込むかを十分検討すべきです。しかし、法案ではそれらの点がまったく不十分です。

以上のような観点からも、衆議院での今回の法案審議と採決はあまりに性急であり、私たちは政府と法案に賛成した各党に抗議します。参議院ではさらなる徹底的な審議を求めるとともに、いったん立ち止まって、家族や親子のあり方も含めた、より本質的な観点も含めた国民的議論こそ必要だと考えます。

PDFファイル:https://greens.gr.jp/uploads/2024/04/seimei_kyoudoushinken.pdf