【談話】西南極の棚氷の融解が、すでにティッピングポイントに至っている可能性が明らかに

【談話】西南極の棚氷の融解が、すでにティッピングポイントに至っている可能性が明らかに

-気候崩壊を回避するため、政府は全力で対策を-

2023年10月28日

緑の党グリーンズジャパン ストップ気候危機キャンペーンチーム

 10月23日、「深刻な地球温暖化の進行によって、一番野心的な削減目標の気候シナリオで温室効果ガスの排出を減らし、産業革命以降の気温上昇を1.5度以内に抑えたとしても、今世紀中に南極西岸の棚氷(※1)の融解と海面上昇を止めることができないおそれがある」とする論文が、英国南極観測局の研究チームによって発表されました(※2)。南極棚氷の一部で「ティッピングポイント(転換点)」に至っている可能性を指摘したもので、私たちも深刻に受け止める必要があります。

 南極では、今年9月に冬の海氷面積が観測史上最小になるなど、温暖化の影響が顕著に現れています。西南極の棚氷がすべて融解すると、将来的に世界の海面を最大約5メートル上昇させる可能性があると、これまでも科学者たちは警鐘を鳴らしてきました。

 論文を発表した研究チームのケイトリン・ノートン博士は、今回の研究がひとつの海氷-海洋モデルの出力のみに基づいていることを認めた上で、現在の温室効果ガス排出目標が達成されれば、南極の他の地域で大量の氷量減少にも波及する可能性は低いと指摘しています。しかし、氷床が気候変動に十分に対応できるようになるまでに数世紀から数千年かかるため、どの排出シナリオを選ぶかによって、21世紀を超え、その先の将来にもっと大きな影響を及ぼす可能性がある、と結論づけています。

 世界気象機関(WMO)の最新の報告書によれば、世界の平均海水面は、2013年から2022年に年間平均で4.5mm上昇し、1993年から2002年までの2.1mm上昇の2倍を超えて、過去最高となっています(※3)。これは、主に氷床から氷塊が失われる速度が速まったことに起因しています。海面の上昇は低海抜沿岸地域内に暮らす人々に影響を与え、2050年には、約10億人(世界の人口の10人に1人)が洪水などのリスクに直面することになる、と2022年のIPCC報告書は述べています(※4)。

沈みゆく世界-今まさに沈没の危機に瀕する地域や人びとは、私たちと同じ地球の一部です。世界の政策立案者は、今回の論文の研究者たちの「海面上昇への対応の優先事項として、今こそ適応を真剣に考えるべきだ。西南極氷床を現在の状態で保存する機会はおそらく過ぎ去り、今後数世紀にわたる数メートルの海面上昇に備えるべきだ」との主張に耳を傾け、早急かつ強力に行動すべきです。

緑の党グリーンズジャパンは、「大洪水よ、我が亡き後に来たれ!」と言わんばかりの日本の気候無策に対し声をあげ、気候変動による深刻な影響を回避・最小化し、危機に直面する地域や人びと、将来世代の命と環境を守るため、持続可能で公正な社会への転換に向けて、私たち自身も全力を尽くしていくことをあらためて決意します。

※註

1) 陸上の氷床が海面に張り出た部分

2) 英科学誌 ”Nature Climate Change” 10月23日掲載  “Unavoidable future increase in West Antarctic ice-shelf melting over the twenty-first century” (https://www.nature.com/articles/s41558-023-01818-x)

3) 世界気象機関の「グローバル気候状況(The State of Global Climate)2021」(https://reliefweb.int/attachments/e635b630-b222-4405-bc54-42cb5e84359f/1290_Statement_2021_en.pdf)参照。概要の邦訳はRIEF(環境金融研究機構)のサイト https://rief-jp.org/ct8/125136 を参照

4) 環境省がIPCC第6次評価報告書(AR6)の第2作業部会(WG2)の資料として作成した報告書https://www.env.go.jp/content/000155003.pdf を参照

PDFファイル:https://greens.gr.jp/uploads/2023/10/danwa_nishinan.pdf