【声明】国際潮流に反する入管法「改正」案ー気候難民が急増する時代を前にー

【声明】国際潮流に反する入管法「改正」案
ー気候難民が急増する時代を前にー

2023年6月6日

緑の党グリーンズジャパン運営委員会

 現在、参議院法務委員会等において、入管法「改正」案が審議されています。しかし、この法案は2年前に非常に多くの当事者支援者や市民団体等から批判を受けて廃案になった旧法案(難民申請は2回まで、3回目は特別な事情がない限り送還措置、背けば刑事罰)からほとんど修正されずに国会に提出されたものです。

 日本の入管制度は、難民申請者の人権や生活を支援するのではなく、収容し、収容から放免されても監督するという非人道的な原則に基づいて運用されており、修正案はこの非人道的な骨格から一歩も改善されていません。収容にあたって司法などの第三者機関による審査、収容期間の上限、子どもの収容禁止などの規定もなく、国際人権法やその基準とかけ離れたものです。

 2021年、スリランカ人のウィシマ・サンダマリさんが体調不良を訴えたにもかかわらず放置されて死亡し、その過程が明らかになることで名古屋入管の非人道性が露わになりました。また、今年3月、入管職員から理不尽な暴力を受けたクルド人のデニズさんの訴訟で、東京地裁は一部入管の違法性を認めました。これらは入管行政の明らかになった実態のごく一部で、入管では被収容者が絶望から自死に追い込まれる事件すら起き、人種差別の温床だと批判されています。

 昨年11月3日、国連自由権規約委員会は日本の難民認定率の低さについて懸念を示し、国際基準に則った包括的な難民保護法制の導入を勧告しています。入管収容についても、収容期間の上限や、裁判所の実効的な審査を受けられるよう勧告しています。

 今回、入管法改定案の根拠とされた国会質疑で、「(難民認定)申請者の中に、難民はほとんどいない」と発言した柳瀬房子氏(難民審査参与員/難民を助ける会名誉会長)の発言の信憑性に重大な疑いがあることが明らかになり、難民申請審査の公正さや信頼性とともに立法根拠自体が揺らいでいます(※1)。

 また、国会審議で維新議員から差別的・排外的発言が繰り返されたことも看過できません。今回の法案に賛同する与党とともに、国際人権感覚を欠いた政党が多数を占める日本の国会状況も深刻です。

 気候危機の時代、先進各国は気候変動により土地や暮らしを奪われる地域からの難民の受け入れを、積極的に行なう責務があります。日本も海外からの移民や、さまざまな事情で自国へ帰ることのできない人々に対して寛容な受け入れ体制を整えるべき時です。

 今回の改正案は、広げるべき門戸を閉じ、救済が必要な人々に対し過酷な制度となります。

 私たち緑の党グリーンズジャパンは、ウィシマさんの死をはじめ、入管行政によって多くの人々が傷つけられてきた事実を深刻に受け止め、この改正案の廃案を強く訴えます。そして、人権や多様性の尊重を重要な基本理念のひとつに掲げる世界の緑の党(※2)とともに、国際人権基準に基づいた入管行政の抜本的改革と難民受け入れの拡大を求めます。

※註
1) 東京新聞6月3日付記事参照 https://www.tokyo-np.co.jp/article/254503
2) グローバルグリーンズ憲章:6.多様性の尊重「私たちは、個人の尊厳、からだの健康、信仰や精神的幸福がまもられる環境を差別無く享受できる全ての人びとの権利を擁護する」https://greens.gr.jp/about/intro/charter/

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