【談話】ゼレンスキー大統領の国会演説について

【談話】ゼレンスキー大統領の国会演説について

2022年3月23日
                    緑の党グリーンズジャパン
共同代表 中山 均

  本日、国会でウクライナのゼレンスキー大統領が演説することになっています。
  プーチン大統領の蛮行への非難と、一方的な軍事侵略を受けているウクライナへの共感を、私たちも共有します。その意味で、国会各会派がこの演説を受け入れたことを、理解できないわけではありません。
  しかし、市民の代表である国会議員で構成され、国権の最高機関である国会において、正式な形でこのような演説が行なわれることには、憂慮を示さざるを得ません(※1)。

  現在、ロシア軍の激しい攻撃に対し、西側の武力供与を受けたウクライナ軍が、個別の戦闘局面では有効な抵抗力となっていることは認識できます。しかし同時に、戦闘全体としては、それがより激しいロシアの攻撃を招き、その結果、一般市民の犠牲の拡大を招くという循環に陥っているという構造も直視する必要があります。大軍に抵抗するウクライナへの共感の高まりが、こうした循環を後押ししています。今回の国会での演説は、その内容がたとえ有意義で感動的なものになり得たとしても、そうした循環の一環をなす可能性があります。その意味でも、これがこれまでの制約を超えた「貢献」に踏み出す契機となり得ないか、深く考えるべきです。

  また、ウクライナ政府の責任や問題を不問にすることもできません。東部地域で8年続いた紛争では、多くの死者と150万近い難民が発生しましたが、これはロシアだけの責任ではありません(※2・3)。今進行中の戦争においても、ウクライナ側にも国際人権法違反が指摘されています
(※4)。そうした問題を抜きに、ウクライナ政府の主張を一方的に聞くことには、懸念を抱かざるを得ません。

  現に進む悲惨な戦争、そしてウクライナ緑の党の仲間たちでさえ「飛行禁止区域の設定」を訴える中で、それでもなお、踏みとどまって声を発する必要があります。
  私たちが聞くべきは、大統領の演説ばかりではないはずです。戦地から発せられる市民や犠牲者・避難者の声、それを支援する民間団体の経験、これまでの東部地域の(武装勢力ではなく)一般市民の犠牲の実情にも注意を払うべきです。
  日本はNATOを構成するわけではなく、ウクライナとの安全保障関係を有しているわけでもありません。国際紛争の解決や侵略への抵抗のために一定の武力が必要だということを条件付きで認めたとしても、日本は多様な国際社会を構成する一員として、そして憲法9条を有する国として、NATO諸国とは異なる支援、ウクライナ市民や反戦を訴えるロシア市民との連帯など、戦争の終結に向けた役割を果たすことを追求すべきです。

※註
1:国会で外国元首の演説を受けたのは1998年10月に金大中韓国大統領の例があり、今回が初めてではない。ただし、当時は内閣と国会との間での協議や共同声明など、事前の調整が図られた。

2:国際人権団体 Human Rights Watch (HRW)のレポートなどを参照https://www.hrw.org/news/2022/02/23/russia-ukraine-international-law-occupation-armed-conflict-and-human-rights

3:以下の記事も参照
https://www.jiji.com/jc/article?k=2021103100694&g=int

4:HRWの以下のレポートなどを参照
https://www.hrw.org/news/2022/03/16/ukraine-respect-rights-prisoners-war

 
PDFファイルは⇒ 
https://greens.gr.jp/uploads/2022/03/danwa_20220323.pdf