【論説】水戸地裁が東海第二原発の運転差止を命じる-全国の原発の「安全性」を…

【論説】水戸地裁が東海第二原発の運転差止を命じる

-全国の原発の「安全性」を根底から問い直す判決

 

2021年3月25日
緑の党グリーンズジャパン 運営委員会

■今回の判決の特徴と意義
 3月18日、水戸地方裁判所は、日本原子力発電株式会社に対し,東海第二原子力発電所の原子炉を運転しないよう命じる判決を言い渡しました。
 翌日には日本原電がこの判決を不服として控訴しましたが、この判決は同原発の特徴を踏まえた重要な指摘をしています。同原発は、半径30キロ以内に県庁所在地の水戸市をはじめ、日立市、ひたちなか市など人口20万人前後の都市を3つも抱え、原発周辺地域としては日本で最も人口が密集しています。このような地域で原発事故が起これば、周辺住民が迅速に避難することはほぼ不可能であり、これらの三市のいずれも避難計画を策定できていません。この判決は、原発の重大事故を完全に防げないことを直視し、避難計画を策定できていない以上、人格権侵害のおそれがあると明確に示しました。
 これは、他の原発の安全性を根本から問う重要な問題提起だと言えます。たとえば、日本一原発が密集する福井県嶺南地方では、ある原発の近くで事故が起こった場合、周辺住民は別の原発に向かって「避難」することになります。新潟県の東京電力柏崎刈羽原発では降雪時の避難計画の実効性が問われています。

■規制委員会の審査は根本的転換を
 原発の運転や設置許可に関する近年の司法判断では、多くが運転差止めや設置許可取り消しを命じています(※1)。
 一方、今回の判決と同じ日に、広島高裁が伊方原発3号基の運転差止めを命じた仮処分を取り消してしまいました。司法の責任放棄と言わざるを得ないものですが、こうした判断はむしろ異例(※2)であり、脱原発に向かう大きな歴史の流れを止めることはできません。
 それにもかかわらず、政府は未だに「規制委員会が認めた原発は動かす」という姿勢を崩していません。これ以上、脱原発への世論や司法判断の流れを無視することは、許されません。規制委員会は、今回の決定を重く受け止め、判断のあり方を見直すべきです。

■原発からの撤退、エネルギー政策の転換を
 東京電力福島第一原発事故から10年を迎える今、事故は収束せず、未だに多くの被災者が深刻な暮らしを余儀なくされている中、国は原発からの一刻も早い撤退を決断すべきです。
 繰り返し訴えるように、原発は分散型エネルギー社会とは相容れず、持続可能性はありません。その推進は再生可能エネルギーの拡大を阻み、深刻化する気候危機への対処という観点でも未来はありません。
 私たちはあらためて、エネルギー政策の根本転換を強く求め、そして社会そのものを豊かな自然のリズムに沿った持続可能なものへと創り変えることの重要性をあらためて訴えます。

※註
1:福井地裁は2014年5月に大飯原発3・4号機、そして2015年4月に高浜原発3・4号機の運転差止めなどを判断。また、大津地裁も2016年3月に高浜原発3・4号機の運転差止めを命じた。広島高裁は2017年12月、2020年1月に伊方原発3号機の運転差止めを命じた。最近では、大阪地裁も2020年12月に大飯原発3,4号機の設置許可を取り消した。

2:この判決では「地震や噴火などのリスクについて裁判所に独自の科学的知見はなく、具体的な危険性を住民側が示さなければ判断はできない」などとし、住民に高いハードルを課している。

 

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