【論説】大阪地裁が大飯原発の設置許可取り消しを命じる -全国の原発の安全を根底…
【論説】大阪地裁が大飯原発の設置許可取り消しを命じる
-全国の原発の安全を根底から問い直す判決
2020年12月10日
緑の党グリーンズジャパン 政策部
■今回の判決の特徴と意義
12月4日、大阪地方裁判所は、国に対して、大飯原子力発電所3、4号機の設置許可取り消しを命じる判決を言い渡しました。
この判決には大きな特徴があります。判決では、まず、基準地震動を策定する際に使用する経験式(これまで得られた知見や経験により導かれた解析式・手法)に詳細な検討を加えています。そして、原告側の主張の一部については退け、関西電力が基準地震動策定において依拠した「入倉三宅式」自体は不合理とは言えないとしていますが、一方で、原告が依拠するよう求めた式にも採用すべき十分な理由があるとし、また「入倉三宅式」から導き出されるものが平均値に過ぎないことを明確に指摘しています。つまり、関電が依拠した式そのものの科学的妥当性を認めつつ、実際の地震においてはその算定値を超える地震の可能性があることを、冷静に判断しているのです。
その上で、基準地震動の算定や耐震設計などに関して規制委員会で定める「審査ガイド」が「経験式のばらつきも考慮される必要がある」としていることを重視し、それにもかわらず関西電力がその可能性を考慮せず、国もそれを追認して審査ガイドに適合するとしたことに看過しがたい過誤・欠落があると判断しています。審査基準の原則を厳格に守ることの重要性をあらためて明示していると言えます。
これは、国によるこれまでの安全審査の妥当性を否定するものであり、全国の他の原発の地震対策や設置許可の合理性を根底から覆すものになると言っても過言ではありません。
■規制委員会の審査は根本的転換を
福井地裁は2014年5月に大飯原発3・4号機、そして2015年4月に高浜原発3・4号機の運転差止めなどを判断しています。また、大津地裁も2016年3月に高浜原発3・4号機の運転差止めを命じました。広島高裁は2017年12月に伊方原発3号機の運転差止めを命じ、翌年にこの決定は覆されたものの、本年1月に再び差止めを命じています。これらは電力会社への運転差し止めを判断したものですが、国に対する行政訴訟としては、2011年の東京電力福島原発事故後初めて原告の請求が認められたものであり、その意義は極めて大きいと言えます。
それにもかかわらず、政府は未だに「規制委員会が認めた原発は動かす」という姿勢を崩していません。2014年以来、毎年のように原発の運転を差し止める司法判断が示されており、今回は国の設置許可処分そのものが不当だとして取り消されることになりました。これ以上、こうした司法判断を無視することは、民主主義国家において許されません。規制委員会は、今回の決定を重く受け止め、判断のあり方を見直すべきです。
■原発からの撤退、エネルギー政策の転換を
多くの裁判所が人権擁護の観点から原発再稼働に警鐘を鳴らし続けた背景には、東京電力・福島第一原発事故の悲惨な事故を直視した多くの市民の声があります。同事故から間もなく10年を迎える今、今回の決定と市民の声を受け、国は原発からの一刻も早い撤退を決断すべきです。
原発は、十分な安全性を求めれば莫大な対策費がかさみ、その負担は消費者に押しつけられます。また、関西電力の本拠地である大阪と大飯原発の関係に象徴されるように、過疎地に建設して大都会に電力を供給するというシステム自体が分散型エネルギー社会とは相容れず、持続可能性はありません。その推進は再生可能エネルギーの拡大を阻み、深刻化する気候危機への対処という観点でも未来はありません。
私たちはあらためて、二度と核の被害を引き起こさないよう、エネルギー政策の根本からの転換を強く求め、そして社会そのものを豊かな自然のリズムに沿った持続可能なものへと創り変えることの重要性をあらためて訴えます。
PDFファイルは⇒https://greens.gr.jp/uploads/2020/12/ronsetu20201210.pdf