【声明】経済産業大臣の「エネルギー・環境戦略」資料に騙されない
【声明】 経済産業大臣の「エネルギー・環境戦略」資料に騙されない
-必要なのは世論誘導ではなく、脱原発への具体的道筋-
2012年9月6日 緑の党運営委員会
「(原発ゼロで)光熱費3万円超」、「2010年比2倍に」などというセンセーショナルな見出しが先日(9月4日)の新聞各紙に掲載されました。
7月にエネルギー環境会議によって示された「3つの選択肢」は、「ゼロシナリオ」を含めいずれの選択肢も既存の原発を40年間まで稼働させることが前提となっている一方、原発存続に伴うリスクにも触れられておらず、判断材料を欠いた問題の多いものです。しかし世論の70%は、この中では「ゼロシナリオ」を支持しました。
今回公表された経済産業大臣名の資料(※1)は、ゼロシナリオによる「光熱費2倍、月3万円」という数字を示しています。しかし、15%シナリオとの差は僅か数百円から最大3000円程度(月)で、20-25%シナリオとの差も同程度と見込まれます。ゼロシナリオのみが過大な光熱費負担であると錯覚させるようなデータの示し方は、脱原発の困難性を意図的に強調し、原発の活用へと世論を回帰させることを狙った欺瞞的なものと言えます。
さらに、この資料では各シナリオの計算根拠などが明示されておらず、使用済み核燃料や停止した施設の管理・処理など超長期的なコストまで含む原発のコストを過小評価し、福島原発事故を踏まえた安全対策に必要な費用も十分には考慮されていません。しかも、再生可能エネルギーのコストは過大評価し、国内・地域産業にもたらす便益や、拡大に伴うコスト低下などが適正に評価されていません。
政府がなすべきことは、脱原発の問題点をあおり立てるのではなく、再生可能エネルギーの拡大に向けた政策的な支援やエネルギー使用削減のための制度設計、あるいは当面の天然ガス導入に伴うコストや温室効果ガス排出を削減するための、多角的な調達先検討や熱効率の改善です。
私たちは政府に対し、世論の圧倒的多数となった脱原発に向けた具体的な道筋を市民が主体的に選択できるよう、正確で透明な情報の提供・公開と、開かれた熟議の枠組みや国民投票を含めた民主主義的な制度の確立・拡大を求めます。
(※1)経済産業大臣「エネルギー・環境戦略策定のための検討事項について」平成24年9月(http://www.npu.go.jp/policy/policy09/pdf/20120904/shiryo2.pdf)