【論説】電通・関電の過労死事件-犠牲を無駄にしないために

【論説】電通・関電の過労死事件-犠牲を無駄にしないために

                                             2017年1月26日

                                緑の党グリーンズジャパン運営委員会

 電通社員・高橋まつりさんが2015年12月25日に自殺した事件は、遺族の訴えが厚労省の強制捜査へと動かし、高橋さんへの非人間的なパワハラや連日の残業などの労働実態を暴き、1年を経て、社長を引責辞任へ追い込みました。電通は1991年にも入社2年目の社員が過労自殺するという事件を起こしており、2014年6月にも関西支社(大阪市)が天満労働基準監督署から是正勧告を受け、また2015年8月にも本社が三田労基署から同様の勧告を受けていました。大手広告会社である同社の組織的なブラック企業の体質が明らかになっています。

 また、2016年10月、敦賀労基署は、高浜原子力発電所(福井県高浜町)の運転延長に向けた原子力規制委員会の審査の対応にあたっていた関西電力の40代の男性社員の自殺(2016年4月)を「過労自殺」と労災認定しました。これについては1月6日、同労基署が関電社長を出頭させ、管理職を含む全社員の労働時間管理の徹底を求め指導するという事態に進展しています。

 日本の企業の現場で蔓延する長時間労働やパワハラは、数多くのの悲劇的な過労死・過労自殺事件を引き起こしています(厚労省統計によれば、過労死・過労自殺をあわせた認定件数は近年200件前後にのぼるが、これらは氷山の一角である)。また、1カ月の残業が最も長かった正社員の残業時間が「過労死ライン」の80時間を超えた企業は20%を超えており、さらに、統計上の労働時間・残業時間に表われない「サービス残業」についても、東京都産業労働局の実態調査(2009年)などによれば、「約4割の企業にサービス残業が存在する」と見込まれています。

 これらの問題の背景には、まず、企業が人件費を削減するために正規雇用を縮小させていることがあげられ、人手不足となった社員に過大な仕事やノルマ、責任が押し付けられている実態があります。これが社員の心身を追い込んでいます。

日本の時間あたりの労働対価が他の先進諸国と比較して極めて安く、労働時間が長いことも問題です。平均時給水準は欧米の3分の2程度で、法定労働時間は欧米の1.2~1.3倍となっています。残業など法定外の労働時間を加えると、この差はさらに拡大します。法定労働時間の規制も緩く、いわゆる36協定問題など、本来例外的な時間外労働が常態化しています。労働現場で、企業に対抗する労働組合の力が弱体化していることも深刻です。労働時間の短縮に向けて強制力を持った法的枠組みの強化が必要です。

 また、関電の過労死事件の背景には、厚生労働省が原発再稼働に向けた原子力規制委員会の審査に対応するための電力会社の業務を「公益上の必要により集中的な作業が必要」として、審査対応業務には年360時間の上限以外は適用しないとする通達を出していた(2013年11月)こともあります。原発の稼働そのものに公益性が認められないことは言うに及ばず、働く人の命を犠牲にしてよいほどの公益性など、どのような業務にもありません。厚労省はこの通達をただちに撤回すべきです。

 さらに、企業による従業員への異常なCS(顧客満足度)意識、過剰サービス教育の強制も問題です。サービスは無料と教え込まれ、サービス自体に付加価値として加算しません。宅配、コンビニ、レストラン等などの現場では、夜、早朝、祝日関係なく、同じ時給で働かされ、どんなに忙しく立ち仕事で疲れていても、笑顔での接客を要求されています。若者や非正規労働者を中心に、多くの人たちが、非人間的な環境の中での労働を余儀なくされているのです。

 悲劇をこれ以上繰り返してはなりません。私たちは、すべての人々が人間らしく、自然と調和しながら暮らし、働くことができるよう、さまざまな場面で全力を尽くしていきます。

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