【見解】「従軍慰安婦」報道問題について―朝日新聞バッシングではなく、「日本の…
【見解】「従軍慰安婦」報道問題について
朝日新聞バッシングではなく、「日本の名誉」の真の回復こそ必要
2014年10月12日 緑の党グリーンズジャパン運営委員会
朝日新聞が「従軍慰安婦」を「強制連行」したとする吉田清治氏の証言は虚偽だったと認めた(8月5日)ことを受け、産経新聞や読売新聞などの右派メディア、さらには安倍首相をはじめ政府関係者も含む自民党政治家から、朝日新聞への激しいバッシングが続いています。
もちろん、吉田清治氏の証言について十分な検討を行わず、問題が指摘されても放置し続けた朝日新聞の姿勢は、報道機関として真摯に反省しなければなりません。
しかし、吉田氏の証言は、決して「慰安婦」問題の唯一の証拠ではありません。むしろ同証言は、日本の「慰安婦」問題研究者の間でも客観的な信頼性には欠けるものとして扱われてきました。また、右派言論界や保守政治家たちが攻撃する「『女性に対する暴力問題』特別報告」(いわゆる「クマラスワミ報告」)においても、この証言への異論も併せて紹介しており、決定的証拠として扱っているわけではありません。
クマラスワミ報告は、それまで重ねられた国際人道団体や国連人権委員会などの検討を引き継ぐもので、慰安婦の証言はもとより、日本政府から提出のあった文書や独自に収集した資料などの包括的な解析によって成り立っており、「(慰安婦の証言は)性奴隷制が軍司令部および政府の命令で組織的方法で日本帝国軍隊により開設され厳重に統制されていたことを信じさせるに至った文書情報と符合している」とし、証言や文書資料相互の整合性を認めています。
朝日新聞が吉田氏の証言を否定したことをもって、あたかも「慰安婦」問題そのものが存在しなかったかのように喧伝するのは的外れであり、意図的なすり替えです。こうした議論は、朝日新聞の誤報よりもはるかに悪質で、文字通りデマゴギーそのものです。このような短絡的な論理が連日週刊誌を中心に取り上げられ、朝日新聞だけでなく、慰安婦問題に取り組む人々へのバッシングが重ねられていることも、きわめて異常で深刻な事態と言えます。
兵庫県宝塚市議会は、6年前に「(慰安婦とされた)被害者の尊厳回復に努めることを国に求める」意見書を可決しましたが、今回、この意見書が「決定的な根拠を失った」とする決議を可決してしまいました(10月8日)。右派のデマや虚構が、言論の府である議会へも影響を与えているのです。
「国際社会における日本の名誉を傷つけている」のは、朝日新聞の誤報ではありません。侵略と植民地支配への真摯な反省や補償が不十分な戦後の日本社会、歴史を隠ぺい・否定するばかりか、これを正当化しようとする政治家たちの姿勢、加えて、こうした風潮に乗じて拡大するヘイトスピーチなど差別的・排外的な運動や、これを放置する現代日本社会の対応そのものと言えます。
私たちは、歴史の偽造とも言える一連のバッシングを強く批判するものです。日本が「国際社会において名誉ある地位を占め」(憲法前文)るために、歴史に向き合い、国内外の人々と平和で公正な関係を築いていく必要があることを訴えます。
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