【見解】誰もが地域で普通に暮らすことのできる社会を ―精神科病床の転換は原則として…

【見解】誰もが地域で普通に暮らすことのできる社会を
―精神科病床の転換は原則として認めるべきではありません

2014年7月7日
 緑の党グリーンズジャパン運営委員会

  厚生労働省が設置する「長期入院精神障害者の地域移行に向けた具体的方策に係る検討会」は、7月1日、「病棟転換型居住系施設」を認める方針を固めまし た。精神科病床の削減にあたって、既にある病棟・病床を、グループホームなどの居住の場に転換することを認めようというものです。

 多くの入院患者は、自宅やアパートなど地域での生活を望んでいます。街から離れたところに立地しているケースの多い精神科病院の中に居住施設が作られることは、このような願いに反して隔離を持続することを意味します。

  今年、日本は、障害者権利条約を批准しました。条約の第19条は、「この条約の締約国は、障害のあるすべての人に対し、他の者と平等の選択の自由をもって 地域社会で生活する平等の権利を認める」とし、「障害者が、他の者との平等を基礎として、居住地を選択し、及びどこで誰と生活するかを選択する機会を有す ること並びに特定の生活施設で生活する義務を負わないこと」と定めています。精神科病棟の居住系施設への転換を安易に進めることは、誰もが地域で普通に暮 らすことのできる権利をないがしろにし、条約の理念に反するものです。

 日本は、人口では世界の2%未満にすぎませんが、世界の2割もの精 神科病床を有しています。10年以上の入院患者数は6万5千人に上り、そのまま病院で一生を終える人も少なくありません。これら社会的入院の問題は、財政 負担の削減や病院経営の支援の観点からではなく、まずは人権の観点から考えられなければなりません。

 緑の党は、多様性を認め合う社会こそ 豊かな文化を生み出す、という社会ビジョンに立ち、精神科病床の転換は原則として認めるべきではないと考えます。病のために一時的に社会から切り離されて 暮らすことを余儀なくされた人々が、地域で自分らしい生活に戻るために必要な支援策を充実させることが必要です。

  「障害」は、「障がい のある人々」にではなく、社会にこそ問題があることの表われであることを認識すべきです。さまざまな「障がい」に対応できる地域社会は、誰もがいきいきと 心ゆたかに暮らすための基盤です。緑の党は、互いの差異を尊重し、補い合い、学び合う社会を目指し、議論と提言を重ねていきます。

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