【世界のみどり】福島の大惨事から2年-アジア太平洋グリーンズネットワークが共同声明を発表


福島の大惨事から2年となる3月11日、アジア太平洋グリーンズネットワーク(APGN)は共同声明「フクシマ後の世界 -- グリーン経済への出発」を発表しました。
http://www.asiapacificgreens.org/news/fukushima-two-years-apgn-statement より



フクシマ後の世界 -- グリーン経済への出発
アジア太平洋地域緑の党共同声明
2013年3月11日



フクシマの惨禍が与えた世界的衝撃は、市民の安全を確保し、次の世代のために私たちの地球を守る私たち全員の責任をあらためて示しました。私たちはみな、核サイクルに加担しているのです。すなわち、ウラン採鉱、精製濃縮、発電、放射性廃棄物、核兵器、さらには私たちの貿易相手国の行動を阻止しないという「共謀」によってです。

世界の緑の党は反核運動や平和運動を土台にして成長してきました。 グローバル・グリーンズ憲章は、いかなる形における原子力利用もその拡大に反対し、早期にこれをなくすよう尽力するための政治的プログラムを推進しています。グローバル グリーンズの創設理念である社会的公正、非暴力、エコロジカルな知恵、持続可能性、参加型民主主義、そして多様性の尊重こそが、新しい道筋を切り開くのです。この道筋こそ、少数の強欲ではなくすべての人の必要を満たす経済、「将来の世代がそのニーズを満たす努力を妨げることなく私たちのニーズを満たすことができる世界経済の構築」(グローバル・グリーンズ憲章5.3)なのです。

近年、「原子力ルネサンス」が、気候変動問題に関する議論を乗っ取っていることを私たちは知っています。それは、「強欲の経済」の反映であり、アジア太平洋地域の新興工業国に対して不当な圧力をかけるものです。グローバルな原子力産業の主張は事実無根です。原子力は二酸化炭素排出を減らすことはなく、事実、原子力エネルギーを生み出すのに必要なインフラは並外れた量の石油と石炭を要します。また、原子力エネルギーは真にグリーンな電力よりずっとコストがかかり、原発停止による電力不足や価格上昇は原子力ムラによる脅しに過ぎません。現実問題として、真に豊かな生活の質を伴った経済発展は、持続可能で賢明なグリーン経済を通して実現できるのです。

この重大な局面に際し、私たちは、アジア太平洋地域の人びとに対して、以下の3つの行動を呼びかけます。

1. 2011年3月11日に発生したフクシマ原子力災害の被災者に哀悼の意を表する各地域の行動に参加し、核や原子力のない世界への確固たる決意を示してください。

2. 緑の党の候補者が議席を得られるよう投票し、持続可能で賢明なグリーン経済を構築するために、それぞれの国や地域での緑の党の設立や発展を支えてください。

3. 原子力政策に関する住民投票による正当な民主主義的プロセスを要求し、情報公開や参加型民主主義を支持し、原子力発電所や核廃棄物処理施設周辺の住民とその将来世代の人びとが安心な生活を脅かされるおそれに対して拒否権を発動できるように社会的及び環境的正義を要求してください。

署名者:
アジア太平洋グリーンズネットワーク協議委員会
グローバル・グリーンズ協議会
インドーウッターラカンド・パリヴァータン党(UKPP)
日本ー緑の党 Greens Japan
韓国―韓国緑の党
モンゴルーモンゴル緑の党
ニュージーランドーニュージーランド・アオテアロア緑の党
パキスタンーパキスタン緑の党
フィリピンーフィリピン緑の党(カリカサン党)
台湾―台湾緑党



ニュースブリーフ

2013年の3月11日は、東日本大震災による地震と津波、それらによる福島第一原子力発電所のメルトダウンと大量の放射能漏洩から2周年にあたります。それにより、30万人(*1)が我が家からの避難を余儀なくされ、数十万人は今でもこの災害による長期にわたる放射能汚染にさらされ続けています(*2)。グローバル・グリーンズが共有する社会的公正、エコロジカルな知恵、参加型民主主義という価値観は、フクシマの教訓から学ぶための道筋を指し示しています。


社会的公正

放射能の恐怖と背中合わせになった福島の住民は家を失い、仕事を失い、事業を失い、農地を失い、地域社会を失い、そして生活も奪われました(*3)。フクシマ災害の大きな要因は政府、規制当局、原子力産業が抱える構造的欠陥によるものです。それは、原子力のリスクに対する知見の欠落と、適切な原子力安全基準を順守しないこと、緊急時の住民保護の失敗、被害者への適正な補償も行わないことです。

原子力を推進する人びとは、それが最も低コストのエネルギーだと言います。 しかしフクシマ災害が日本にもたらした被害額は今後10年間で2500億米ドルと推計されています(注4)。東京電力が2012年6月に国有化されたので、フクシマ災害の費用は日本の一般国民が負担することになりました。国庫補助されている原子力被害応急対策基金へ電力会社が請求した補償額は2012年12月までに3.24兆円(365億米ドル)にのぼります。同時に、電力会社の破産を防ぐため政府は2012年5月に1兆円(125 億米ドル、2012年のレート)を投入しており、フクシマ災害から1年あまりですでに国税から3.5兆円が支出されていることになります(*5)。

原子力発電のコストはこれほどに高く、多額の補助金を得てやっと稼働しているのです。一般の保険会社は原子力発電の保障を引き受けないため、事故が起きれば結局は納税者がそのツケを負担することになるのです。これは日本だけの問題ではありません。世界中に作ってしまった436基もの原子炉がひとつでも大事故になれば同じことが起きます。結局は納税者が負担するのです。

原子力は電力会社にとっても決して安価といえないことは、東京電力の株式が2011年3月の災害以後 94%も下落し、今後は補償や発電所周囲の除染に10兆円以上が必要になると予想されていることからも明らかです(*6)。


エコロジカルな知恵

新しいタイプの原子炉にはチェルノブイリのような技術的制約がないとか、福島のような危険地域には建設しないなどと主張する御用学者もいます。しかし、事故は必ず起きるものです。今回の津波は、私たちの未来は不確かであり、想定外の大災害も起こりうることを示すものです。危険な気候変動の悪影響がより激しく、ますます増えていくにつれ、私たちは、将来の安定性やコントロール能力を暗黙の了解とすることによって私たちの安心な生活に対するリスクを増やすのではなく、むしろ原子力に内在する深刻で世界的規模に及ぶ危険を直視することを学ばなければなりません。


参加型民主主義

核物質がもたらす廃棄物は国際的問題です。放射性物質は、私たちの生活手段が依拠する海洋を満たし、私たちが吸う大気を汚染します。放射能汚染は、地球全体に広がるのです。核物質を生み出した私たちは、核物質が生み出す災害の当事者ともなったのです。

グローバル・グリーンズは、その中でも特に北東アジアの核保有大国である日本、韓国、台湾を含むアジア太平洋グリーンズネットワーク(APGN)は、現在と将来の世代の安全のために、原子力の利用を強く否定します。私たちはこの地球を共有しているすべての市民に対して、いかなる場所にも危険な核物質を存在させない決意を呼びかけます。

ここにグリーンズは、危険な原子力発電をできるだけ早く全廃するように強く要求します。またグリーンズは、原発が全廃されるまでの間に、汚染をつくり出した者が復元の全責任を負うことを提案します。核のリスクを発生させた会社が復元の費用を負担すべきであって、被害を受けた人々が負担すべきものではありません。第一に優先されるべきは人々であって、原子力産業の保護ではありません。

さらにグリーンズは、フクシマの教訓に学び、この危機的な状況を鑑みて、安全で適正なコストの電力――再生可能エネルギーに最終的に切替えることを呼びかけます。再生可能エネルギーは実績と頑健性と適正なコストが証明されていて、危険でしかない原子力発電に置き換わる能力をすでに持っています。過去5年間を見れば、風力と太陽光発電は281 ギガワットが建設されており、11.75ギガワット(*7)が建設された原子力と比べて24倍にもなっています。2012年の1年間だけでも、風力発電と太陽光発電だけで、大型の発電用原子炉20基分に相当する設備が建設されています(*8)。

放射線の影響下で暮らす人々を偲び、「フクシマ」で生活がまったく変わってしまった人々に思いを馳せ、この教訓を糧にして、核の脅威から解放された世界を作っていきましょう。

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(*1) Acton,J and Hibbs, M.“Fukushima Could Have Been Prevented(フクシマ災害は防げた)” ヘラルド・トリビューン・インターナショナル、2012年3月9日 http://www.nytimes.com/2012/03/10/opinion/fukushima-could-have-been-prevented.html

(*2) Froggatt, A., McNeill, D., Thomas, S., Reule, R. “Fukushima Fallout: Nuclear business makes people pay and suffer(フクシマの余波、原子力産業は市民に負担を負わせ苦しめた)” グリーンピースインターナショナル 2013年2月 http://www.greenpeace.org/international/fukushima-fallout/

(*3) 同上

(*4) ”Fukushima cleanup cost could cost up to $250 billion(福島の除染コストは2500億4ドルにのぼるか)” 2013年3月1日http://newsonjapan.com/html/newsdesk/article/89987.php

(*5) ロイター発、ヘラルド・トリビューン・インターナショナル http://www.nytimes.com/2012/05/15/business/global/tokyo-electric-posts-another-shortfalll.html 2012年5月14日

(*6) Inajima, T. and Yasumasa, S. “Fukushima “$137 Billion Cost Has TEPCO Seeking More Aid(東電 1370 億ドル見積り、政府に一層の支援要請)” ブルームバーグ 2012年11月8日 http://www.bloomberg.com/news/2012-11-07/fukushima-137-billion-cost-has-tepco-seeking-more-aid.html

(*7) IAEA/PRIS, http://pris.iaea.org/public; “Global Wind Energy Outlook” 2012, GWEA, http://www.gwec.net/wp-content/uploads/2012/11/GWEO_2012_ lowRes.pdf; “Global Market Outlook for Photovoltaics until 2016”, EPIA http://www.epia.org/index.phpeID=tx_nawsecuredl&u=0&file=/uploads/ tx_epiapublications/Global-Market-Outlook-2016.pdf&t=1359035167&hash= 390c31d6e803e7c10b066e9ef72271831cf54c0d

(*8) Froggatt, A., McNeill, D., Thomas, S., Teule, R. “Fukushima Fallout: Nuclear business makes people pay and suffer(フクシマの余波、原子力産業は市民に負担を負わせ苦しめた)” グリーンピースインターナショナル 2013年2月 http://www.greenpeace.org/international/fukushima-fallout/

(翻訳:緑の党翻訳チーム)

この声明発表は、世界の緑の党のネットワーク(グローバル・グリーンズ)のサイトにも掲載されています。
http://www.globalgreens.org/news/fukushima-two-years-apgn-statement