【世界のみどり】オーストラリア緑の党元上院議員ジャネット・ライスさんに聞く「女性の上院議員の活躍」
オーストラリア緑の党元上院議員ジャネット・ライスさんに聞く「女性の上院議員の活躍」
緑の党女性ネットワークは、来日中のオーストラリア緑の党元上院議員ジャネット・ライスさんを招いて「女性の上院議員の活躍」をテーマにお話会を行いました。6月11日、緑の党の杉並区議ブランシャー明日香さんが経営する「カフェ・カワセミ・ピプレット」に集まり、オンラインで全国の会員・サポーター(今回は男性も歓迎)が話を聞きました。
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連邦婚姻法の改正:同性カップルにも同じ結婚の権利を与える
私は、オーストラリア緑の党の設立当時からコアメンバーです。自治体議員を6年勤めたのち、2014年から上院議員として働き、今年2024年4月に後継に席を譲りました。上院で担当した分野は、社会・地域サービス、高齢者介護、LGBTIQA+、森林、運輸、外務と幅広く取り組みました。
上院でのハイライトは、同性カップルにも異性カップルと同じ結婚の権利を与える連邦婚姻法の改正です。(2017年12月) 私自身、トランスジェンダー女性をパートナーに持つ、バイセクシャルと公言しています。
なぜ女性が政治家になりにくいか?
私は長年議員として働き成果もあげてきましたが、女性として軽視された経験もあります。政治の世界では、男性が女性を言葉で攻撃したり蔑視したりしてもいいんだという文化がまだあります。委員会などでも女性が無視され、メディアからも軽く扱われることがあります。周りに良い人たち、特に助け合える女性たちがいることが重要です。
政治は女性がやる事と見られない場合も多いです。その理由を考えると、下のようなものがあります。
- 女性には時間がない - 仕事だけでなく家事・育児の責任を負っている。
- 野心が少ない。“重要視されたい”というエゴが少ない。
- 攻撃に耐えることを望まない。
- 尊重され、重視されてこなかった。
- スキルを磨く道が少ない。
- 自信がない。特に尊重されてこなかった場合、あるいは性被害やDVに合った経験がある場合。政治の世界に生き残ろうとする人格的な力や、自分への信頼を持ちにくい。
どうやって女性を応援し、当選させるか?
そんな中で、どのように女性議員を増やすのでしょうか。国会・地方議会・コミュニティ・党内というふうに、場所が違うと方法も異なりますが、次のようなポイントがあります。
- 人とのつながりを持つ。
- 運動をつくる。
- 魅力的でアクセスしやすい政治プロセスを作る。自分たちの生活を良くするための決定に、関与できるという経験。
- 幅広い人たちが参加する運動。貧富の差、若い・年配の差、文化的背景の差にとらわれない。
- アファーマティブ・アクションを通じて、社会的弱者が参加できるようにする。
オーストラリアの政党政治
オーストラリアの政治は、主に2大政党が牛耳っています。中道の労働党と保守的な自由党/国民党の連合です。どちらも新自由主義。大企業から献金を受けており、石炭・天然ガスの採掘と輸出を止めようとしないし、環境を守ろうとしません。教育・健康・住宅・社会保障に予算を投じません。
緑の党は、この状況に一石を投じようとしています。特に上院です。下院は小選挙区制151議席。上院は州ごとの比例代表制で、14%の得票で当選できます。上院を通過しなければ法律は成立しないのですから、上院の力は大きいと言えます。
連邦議会における緑の党
緑の党が最初に議員を出したのは、1983年のタスマニアでした。正式にオーストラリア緑の党を設立したのは1993年です。2000年台までは上院議員2名にとどまっていましたが、市議会・州議会で議員を増やし、現在、緑の党は上院議員11人・下院議員4人、連邦議会で第3政党です。
上院では、2大政党の間の権力のバランスを取っていると言えます。というのも、野党が法案を支持しないと決めたのなら、法案を通すためには緑の党の支持が必要になり、緑の党は重要な力を持つことになります。来年5月に連邦選挙(上院・下院)が予想されています。緑の党は議席を増やそうと頑張っています。
自治体議会の重要性
自治体議会選挙は重要です。国政より当選は容易ですが、下のように重要な意味があります。
- 人々に緑の党を知らせることができる。
- 議員として人々を代表する経験、与党になる経験を積める。
- 州選挙、連邦選挙の際に、同じ選挙区の票を上げることができる。
オーストラリア緑の党の成長要因(こうありたいと思うこと)
私は、上院議員を辞して、今後は、ファシリテーターという仕事をしていきたいと思います。人々、特に女性の政治参加を助け、緑の党を発展させたいと思います。成功の鍵として、下のようなポイントを挙げます。日本の緑の党とも協力したいです。
- 6つの緑の理念を堅持する。人々のため、地球のために、緑の党が何をしようとしているか、人々に知らせる。エコロジカルな知恵、社会的経済的公正、平和と非暴力、参加型民主主義、多様性の尊重。これらはすべて結びついている。
- 良き慣例を実行する。
- 幅広い人々を受け入れ、敬意を持って接する。
- 人の成長を大事にする。ステップアップし責任能力を持てるように成長する機会を作る。
- 合意による意思決定。私たちはみな同等であり、争い合う派閥を作らない。その点は妥協しない、時間をかける。
- プロセスとより良い管理を構築する。選挙運動だけではない。
- 緑の党のターゲットは既存の新聞購読者ではない。したがって、デジタル戦略が重要。
- ただし、緑の党は、草の根政党なので、SNSは重要だが顔を合わせてのコミュニケーションに勝るものはない。ドアノッキングや戸外での宣伝活動を重視する。
- まず自治体選挙に注力する。特にチャンスの大きい選挙区に。
- 当面は、若者、女性、先住民へのアプローチを強化する。