【世界のみどり】グローバル・グリーンズ 「リバプール宣言」 -2017.4.2
2017年3月31日から4月2日、イギリス・リバプールで緑の党第4回世界大会(グローバル・グリーンズ)が開催され、この大会の成果が「リバプール宣言」として発表されました。
暫定第二次版をお届けします。2017.4.17
原文(英文)は➡こちら
グリーンズ 世界的運動、統一ビジョン
世界は憂慮すべき危険な傾向にあります。その傾向がもたらす課題に立ち向かうために、多様な主体が団結し始めています。グローバル・グリーンズは、持続的で公正、自由で民主的な変革の担い手として、私たちに共通の価値観を追い求める多くの戦いに参加してきました。世界は私たちが未来世代から借りているに過ぎません。その世界を未来の世代に返すために必要とされる根本的変換を成し遂げるために、私たちはこの先も連携をより強化することを誓います。
環境危機、不平等、武力紛争が増大しつつあり、政治的かつ社会的な変化を求める声が上がっています。悪質で独裁主義的な指導者と右翼政治家が、その不満の声を利用しています。ポピュリスト的手法を使い、彼らは事実上全ての問題について、少数派、反対派、「よそ者」、とりわけ移民と難民申請者に責任を押し付けています。気候変動あるいは緊縮財政そして社会分裂などの現実の問題に対して、ロシア大統領プーチン、米国大統領トランプ、トルコ大統領エルドアン、フィリピン大統領ドゥテルテなどの指導者たちは、虚構の解決策を示しています。私たちグリーンズはその対極にいます。私たちは恐怖を希望に、憎しみを慈しみに、人種差別主義を全ての人への尊重に替えることを求めます。
私たちグリーンズは実践的かつ理想的な政治を提供します。多様性を尊重し、平和を進め、真の民主主義を構築し、不平等に疑問を呈し、とりわけ、自然と将来の世代を尊重する社会を、私たちは信じます。 私たちのグローバル・グリーンズ憲章に掲げられるこれらの緑の価値観は、地球上の緑の党に共通しています。 緑の党それぞれの多様性を尊重し、共通理念と実践的なアプローチの両方を携えてアクションに活かします。
気候変動
気候変動は、私たちが直面する最大の脅威であり、人々、 人間社会、環境、未来に対する脅威です。私たちグリーンズは、産業革命以前からの気温上昇を1.5度までに抑えるというパリ協定の目標を達成するよう、気候変動に関し迅速に行動するよう尽力します。
すべての人のためのクリーンな電気
太陽光、風力、その他の再生可能なエネルギー源は、 地球にパワーを与えます。グリーンズは、クリーンな電気へのアクセスをすべての人に与えるために努めるとともに、 原子力を排除し、新しい大規模ダムと産業規模のバイオマス発電を拒否します。
化石燃料を地中にとどめる
私たちグリーンズは、すべてのレベルで、2020年までに化石燃料への補助金をG20諸国において終了するためのキャンペーン、そして政府と公的機関による化石燃料からの投資撤退のためのキャンペーンをしています。グリーンズは、フラッキング(訳注:水圧破砕法)、新しいまたは拡大した石炭採掘、海上石油・ガス掘削に反対します。
森林を保護する
自然な森林は気候解決の一部であり、他の 自然環境も同様です。グリーンズは、それらを保護します。
損失と損害の補償
私たちグリーンズは、脆弱な国々が気候変動により生じた損失と損害の賠償を得られるための、国際法での枠組みも含めた支援を実現するよう尽力します。
エコロジー
すべてのいのちが依存している地球システムは、前例のない速度で、破壊され、汚染され、劣化させられています。人間の活動をグローバルサステイナビリティの制限内に抑える緊急の変革がなければ、結果は壊滅的となる可能性があります。グリーンズはローカルからグローバルまでの全てのレベルでのエコロジカルな持続可能性と回復性に向けて共同行動を導く比類ない位置にあります。
自然を保護し復元する
私たちグリーンズは、生物多様性および森林、海洋、氷帽、山の氷河を含む重要なエコシステムを保護し回復する決意です。
必須の人間支援システムを変革する
私たちグリーンズは、持続可能な食糧、水、都市システムをサポートするエコロジカルな経済と新しいガバナンスを促進します。グリーンズは、動物保護者でもあり、他種への慈しみを促進し、工業的畜産や他形態の残虐行為に異議を申立てています。
民主主義
もし真摯な民主主義が機能しなかったら、気候変動も環境問題も社会的課題にも取り組めないでしょう。参加型民主主義によってこのような課題に対する有効な解決策を見出せると確信しています。
民主的プロセスへの参加
私たちグリーンズは、参加の障壁となる不当に高額な立候補費用(供託金)や制限的な政党登録規則は取り除くように働きかけるとともに比例代表制の導入を促します。一党支配や'終身任期’は民主主義に反するものとして非難します。選挙監視団には可能な限り参加していきます。
女性のエンパワメントで政治参加をすすめる
私たちグリーンズは、女性の政治参加を妨げる要因を生活のあらゆる局面から取り除き、政治的均等を促進します。グローバル・グリーンズ女性ネットワークの活動を支え活発化を進めます。
若い世代に政治参加を働きかける
私たちグリーンズは、あらゆる形の政治参加ができるように若い人たちを力づけます。参加型民主主義を念頭にグローバル・ヤング・グリーンズがこの方向へ進めるように協力していきます。
グリーン・シールドに再び尽力する
2001年に立ち上げられたグリーン・シールドは、脅威に晒されているグリーンズの仲間の保護を支援するよう、緑の党の国会議員や活動家を結集しています。この枠組みは主に政府への強い働きかけを使って、収監や拷問や人権抑圧や危険の中での生活から救出しようとするものです。
政策は企業でなく政府が決める
私たちグリーンズは、公的な空間や力を取り戻すとともに、企業が民主主義をしっかりと守るよう転換させるために力を尽くします。貿易協定に「投資家対国家の紛争解決(ISDS)」条項が盛り込まれ、投資受入国を通常の法的枠組み外にある秘密主義の裁決機関に訴える権限が外国企業に与えられている場合、その条項を廃棄します。
私たちグリーンズは、中南米ではカナダ採鉱企業、ナイジェリアではシェル社が、資源搾取と環境破壊しておきながら、母国では議会に工作活動を行い影響を与えているといった事実を暴露するなどして、これに(国際的に)協力して対抗するよう尽力します。
市民社会を保護する
私たちグリーンズは、個人の自己決定権、市民組織や社会的自己組織化を支持します。市民社会と市民組織による活動領域のあらゆる拡大を大切にし、政権によるいかなる侵害やそのような傾向には反対します。
報道の自由を尊重する
私たちグリーンズは、報道の自由を含むあらゆる自由権を尊重し拡大させます。ジャーナリストに対する不当な拘束や独立報道機関への抑圧に反対します。
社会的公正
私たちグリーンズは、より平等な社会を支持します。不平等はだれをも傷つけるものであり、収入や財産の著しい不平等は貧困や社会の崩壊につながります。グローバル化によって確かに社会的進展と新たな機会が生まれましたが、その反面で資産と権力がわずかな人たちのみに集中するという負の側面を持っています。すべての人びと全員の生活の質を向上させるためには、平等とインクルージョン(社会的包摂)とが不可欠です。
ジェンダーと性認識
私たちグリーンズは、解放と多様化を推進します。女性が完全に対等でない社会を拒否するとともに女性のエンパワメントは緑の理念の核心であると主張します。ジェンダーは(男女という)二元的なものに限られず、性認識は多様であると認識しています。グリーンズはこれまでも、ゲイ・レズビアン・トランスジェンダーの平等な権利を促進してきました。
移住および避難
私たちグリーンズは、国外避難する権利、避難(移住)者がもつ権利を擁護します。難民を社会問題の原因とみなすような(政治的)意見は認めません。難民の数は気候変動や世界的不平等、戦争や武力衝突のために増加しています。すべての政府は、とくに富裕国は、避難の原因を認識し、解消に貢献する責任があります。
公正な税制
私たちグリーンズは、企業も裕福な個人も正当な税を支払うべきであり、国、地域(訳注:国より広い範囲を指す)、そして国際的な「税逃れ」に対しては断固として闘います。またグリーンズは、わずか8人の超富裕者の資産が世界人口の半分のそれを上回るような状況を看過できません。
教育
私たちグリーンズは、すべての人が無料で良好な教育を受ける権利があると主張します。私たちはまた、国際交換学生プログラムへの協力を通じて民主主義と国際的視野を育てます。職業環境の変化に応じて、だれもが生涯を通じた学習の機会を提供されるべきです。
公正な移行 (※訳注)
私たちグリーンズは、環境上の責務、デジタル革命、機械化によってもたらされた労働の質と配分の変化によって影響を受けた個人やコミュニティーに、「公正な移行」(訳注:より持続可能な社会への移行を促進するため、国際労働運動が国際社会と共有して提唱している理念・原則)を提供することを約束します。
※参考:「公正な移行」に間する資料
http://www.ilo.org/tokyo/information/pr/WCMS_436503/lang--ja/index.htm
持続可能な開発
私たちグリーンズは、生態系を保護し、自然環境を尊重する、人々の人びとによる人びとのための新たな経済構築を目指します。
経済の転換
私たちグリーンズは、持続可能な開発目標SDGに沿った経済の転換を行い、工業、サービス産業、農業のいずれもが経済的に順調でしかも持続可能であることをめざします。これとあわせて寡占、企業特権、企業による統治を抑止し、土地の収奪を防止します。
地球の限界(※註注)の中で暮らす
経済が永遠に成長することはありえません。私たちグリーンズは、地球上で人類に割り当てられた範囲の十分に内側で(生態系の意味で)公平に生きていける経済活動への移行に積極的かつ喫緊の課題として取り組みます。
※「地球の限界( planetary boundaries)」とは、「その境界内であれば、人類は将来世代に向けて発展と繁栄を続けられるが、境界(閾値)を越えると、急激な、あるいは取り返しのつかない環境変化が生じる可能性がある」境界のこと。地球システムと環境科学者のグループが、持続可能な開発のための前提条件として、あらゆるレベルでの政府や、国際機関、市民社会、科学界および民間部門を含む国際社会向けに、「人類のための安全動作領域」を定義するように設計されたフレームワークとして提案した。
斬新な社会構造
緑の党的文化は「消費主義」に反対します。グリーンズは、再使用と修理とリサイクルとが容易になる循環経済を望みます。私たちは、協同組合のような組織による共同所有に基づいた経済をめざし、一部ではなく多数のために役立つ経済システムをつくっていきます。
平和
エコロジカルな問題、社会正義、民主主義、平和は繋がっています。人々が民主的にコントロールし市民的・人間的権利(女性の権利を含む)を享受している場合にのみ、矛盾を平和的に解決する機会があります。人類は、時間とともに人間が適応し、学び、そして変わることを可能にするルールを多層的につくり、私たちが受け継いだものを将来世代に受け渡さなければなりません。
核のない世界
私たちグリーンズは、 ウランの採掘、輸出、および使用の根絶のために行動し、核軍縮のための運動を展開します。
法の支配
私たちグリーンズは、その中核において、国連との多面的国際秩序を維持し更に発展させることに努めます。強者が意思のままに活動し、弱者が言われるままに振舞わなければならない国際関係システムを拒否します。
公正な貿易
公正な貿易は平和的国際発展のための必要条件です。私たちグリーンズは、社会の土台を壊すような貿易を通じた搾取に反対します。
軍事化の拒否
私たちグリーンズは、国際関係の軍事化を拒否します。私たちは、国境を変え、人々から自由を奪うような軍事的手段の使用を決して受け入れません。