【報告】 4.13国際シンポジウム 「希望は“緑”-なぜドイツは脱原発を選択できたか-」

ハインリッヒ・ベル財団来日記念シンポジウム

「希望は“緑”-なぜドイツは脱原発を選択できたか-」参加レポート

郡山昌也(国際担当運営委員)

緑の党は、4/13(土)にキャンパスプラザ京都でハインリッヒ・ベル財団来日記念シンポジウム「希望は“緑”-なぜドイツは脱原発を選択できたか。日本の私たちにできること-」を開催しました。このシンポジウムの講師には、ドイツ緑の党国会議員で原子力政策責任者のジルビア・コッティング・ウールさん。元欧州委員会の委員で『EU共同体と再生可能エネルギー』の著者もあるベル財団の評議会共同議長ヒャエレ・シュレーヤーさん。そして、ベル財団EU/アメリカ代表で、国際法と民主主義論の論客セルゲイ・ラゴディンスキーさんの3人が参加する予定でした。

https://greens.gr.jp/event-info/6045/

 

【海外ゲストの来日キャンセルもカバー!】

ところが、4月に入って急きょ決まった国会の調査委員会で、ジルビアさんが(ゴアレーベンなど)核廃棄物の最終処分場に関する最終報告を責任者としてしなければならなくなり、またセルゲイさんも急病のために来日できなくなってしまいました。そのため、ジルビアさんからは国会と最終処分場問題の状況を報告するビデオメッセージを寄せていただき、講演のパートの一部を、唯一来日したミヒャエレさんにカバーしてもらいました。

セルゲイさんの代わりには、急なお願いにも関わらず、環境経済学がご専門でドイツ緑の党にも詳しい関西学院大学総合政策学部准教授の朴勝俊さん。また、国内の環境NPOからは気候ネットワーク事務局長の田浦健朗さんに「脱原発と気候変動(地球温暖化)」について講演いただきました。

この後に、「ドイツ緑の党と持続可能でグリーンな経済」をテーマにパネルディスカッションが行われました。第2部では、7月の参議院選挙に向けて、脱原発を目指す「緑の党」の3名の予定候補者と選挙公約である「緑のプロジェクト(第一次案)」が紹介されました。

 

 

【地震にも負けずに行われたシンポジウム】

実は、この日の早朝5時半過ぎに兵庫県の淡路島を震源とする震度6の強い地震が発生しました。1995年の阪神・淡路大震災以降では、近畿地方で最大の震度と規模で兵庫、大阪、京都、福井など広い地域が揺れました。その影響で、関西国際空港に向かう特急を含めてこの地域の全ての電車がストップ。京都駅に行ってみると「当面は復旧しないだろう」という話で茫然としましたが、ドイツから飛んできた飛行機はなんとか無事に着陸。空港近くに住む「緑の大阪」のメンバーの方が車で迎えに行ってくれて、ミヒャエレさんたちはなんとか予定通りの時間にホテルに到着。集合時間の12時にギリギリで間に合いました。シンポジウムでは、最初にミヒャエレ・シュレーヤーさんに基調講演をしてもらいました。

 

冒頭に「今朝も強い地震がありましたが、稼働中の大飯原発もここ京都から約50キロ圏にあると聞いています。こんなに地震の多い日本に原発は必要でしょうか?私たちは、2011年の東日本大震災による巨大な地震や津波、福島原発事故の被害にあわれて今も苦しんでおられる皆様を大変お気の毒に思っています」と切り出しました。そして「緑の党はいまや政治と経済の両方において、エコロジカルな(環境への)責任、オルタナティブなエネルギー(脱原発)、政治への参加、非暴力な紛争の解決、そして男女平等の民主主義などに関するグローバルブランドになりました」。「緑の党は、経済を持続可能にすることで競争力も高めるいい政策を持っていると多くの有権者に評価されています。この緑の党が、いま日本の政治風景に登場しようとしていることは素晴らしいことだと思います。私は、緑の党が日本に力強い根を張って成長していくことを信じています」と話し出しました。

そして、30年におよぶドイツ緑の党の歴史や、社民党との連立政権(1998~2005年)により達成した実績(2023年までの脱原発を決めた「改正原子力法」や自然エネルギーの固定価格による買取制度や発送電分離と電力自由化を含む「再生可能エネルギー法案」の導入などを紹介。そして、ミヒャエレさんの専門分野である再生可能エネルギーによる約40万人の雇用創出(地域経済振興策)などについても、その要点を説明してくれました。

 

 

【ドイツで躍進する再生可能エネルギー産業!】

ドイツで脱原発が実現できた背景には、原発の代替となる「再生可能エネルギー」産業の急速な発展があります。今回初来日されたミヒャエレさんは、緑の党の政治家としてベルリン特別市の環境保護・都市開発大臣(1989~1990年)や、ヨーロッパ(欧州連合:EU)政治の中心である欧州委員会の委員も5年間務めた方です。また再生可能エネルギーに関してはドイツだけでなくヨーロッパレベルの第一人者のひとりでもあります(※EUでは統一通貨ユーロの導入だけでなく農林水産業やエネルギー政策、外交・安全保障政策なども共通政策化しており、欧州委員会のEU加盟国への政治的な影響力は大きくなっています)。

ドイツでは風力や水力、太陽光発電、バイオマスや地熱などがすでに総発電量の25%を超えています。EUでは、2020年までに35%を超える見通しで原発なしでも電力需要をカバーできるのは当然だそうです。地方分散型で、自治体や生産組合などで拡大している再生可能エネルギー産業によって経済的な競争力やエネルギーの自給力も高っていることなど、将来に対して希望を持てるとても元気の出る実例を紹介してくれました。ドイツやEUレベルでこの流れをリードしてきた当事者本人が語るのですから、説得力がありました。

 

 

【予定候補者と選挙公約「緑のプロジェクト」を紹介!】

第2部では、夏の参院選に向けて、緑の党公認の3人の予定候補者が抱負や決意を語りました。最初に、シンポジウムの司会も務めた京都が地元の長谷川羽衣子さん。緑の党共同代表で、昨年7月の大飯原発の再稼働に対して体を張って抗議をした環境活動家でもあります。兵庫県の松本なみほさんは、環境政策コンサルタントで子育て中のママ。緑の党ひょうごの共同代表でもあります。最後に東京から駆け付けてくれた田口まゆさんは、自死遺族の当事者でNPOの代表を務めていましたが、今度の参院選に挑戦することになったと緊張しながらも力強く語ってくれました。この勇気ある女性3人の候補者に向けて、特別ゲストのミヒャエレさんから激励の言葉をいただきました。これに続いて、参院選の選挙公約「緑のプロジェクト」について、副運営委員長の井奥雅樹が説明しました。

 

 

【欧州委員会の委員も輩出したドイツ緑の党】

ドイツ緑の党を母体とするベル財団評議委員会の共同議長やベルリン自由大学の講師なども務めるミヒャエレ・シュレーヤーさん。女性の権利運動から政治に関わるようになった彼女は、欧州委員会の委員を務めた最初で唯一の緑の党の政治家でもあります。ヨーロッパには欧州議会もありますが、欧州連合(EU)の執行機関であり実質的な政治力を持っているのは欧州委員会です。その委員は、当時12あった総局(Directorate General=省庁)の事務次官のような地位ですが、政治家が務めることになっています。

公共財政の専門家でもあるミヒャエレさんは、欧州委員会の予算総局の委員(閣僚)として5年間(1999~2004年)を務めました。当時はまだ他の総局が担当する政策にも影響を及ぼすことができたといいます。彼女がこのドイツの国会議員(大臣)をもはるかに凌ぐ政治的影響力のあるポジションに就けたのも、1998年に緑の党が社民党との連立政権で与党に入ったからこそ。その地位を活かして、EUレベルでも再生可能エネルギー政策を推し進めたのですから、ドイツ緑の党はすごいと思いました。そんなミヒャエレさんは気難しい人だとばかり思っていましたが、気心が知れれば気さくな人で、オフにはビールを飲んで冗談で大笑いする一面もあります。今回の一週間のアテンドで少し親しくなれました。

 

 

【ハインリッヒ・ベル財団とは】

ベル財団は緑の党を母体とした政治財団(非営利のシンクタンク)で、本部をドイツ・ベルリンに置き、東欧やアフリカなど世界33ヶ国に支部を展開しています。セミナーやシンポジウムの開催、政治教育などの活動を通じて、国際的に持続可能でグリーンな経済発展および、社会的公正や民主化を推進する活動を行っています。

http://www.boell.de/

今回、ベル財団の評議会共同議長でもあるヒャエレ・シュレーヤーさんは、4月14日に「脱原発をめざす首長会議」が主催して、伊勢市で開催された脱原発と再生可能エネルギーに関する公開シンポジウムを協賛し、講師として参加するために来日しました。以下に、そのシンポジウムの概要をHP情報などからお伝えします。なお、伊勢シンポジウム実行委員会の皆様および脱原発をめざす首長会議の皆様には、海外ゲストの来日キャンセルに伴い多大なご迷惑をお掛けしたことに対しまして、深くお詫び申し上げます。

 

4/14公開シンポジウム「自然と共存するエネルギーのまちへ」in 伊勢

-なぜドイツは脱原発を選択できたのか?-

 

4月14日(日)、脱原発をめざす首長会議は、三重県伊勢市において公開シンポジウム「自然と共存するエネルギーのまちへ-なぜドイツは脱原発を選択できたのか?-」を開催しました。当日は、300人以上の一般来場者と奈良県生駒市の山下真市長も参加しました。

http://mayors.npfree.jp/?cat=6

 

ドイツは福島原発事故のあと17基中8基の原発をすぐに廃止し、さらに2022年までに原発を全廃することを国会で決定しました。事故当事国でありながら原発に回帰しつつある日本との違いはどのようなところにあるのでしょうか?今回のシンポジウムは、ドイツの経験と実践を知る機会になりました。発言者は①ドイツの脱原発政策選択の実際、②脱原発のエネルギープログラム、③日本の地域社会でできることのテーマで発言と討議を行いました。なお、国会での核廃棄物の最終処分場に関する答弁のため欠席されたジルビア・コッティング・ウール議員(ドイツ緑の党)による映像メッセージも流されました。

 

シンポジウムの登壇者は、元欧州委員会委員で『EU共同体と再生可能エネルギー』著者のミヒャエレ・シュレーヤーさん。環境エネルギー政策研究所(ISEP)所長の飯田哲也さん。伊勢市長で、脱原発をめざす首長会議会員の鈴木健一さん。元国立市長で脱原発をめざす首長会議事務局長の上原公子さん。また、緊急の用件で参加できなくなった海外ゲストの代わりに、立命館大学経営学部教授で国内外の再生可能エネルギーの実践例にも詳しいラウパッハ・スミヤ・ヨークさんと、環境経済学者でドイツ緑の党にも詳しい関西学院大学総合政策学部准教授の朴勝俊さんがご参加下さいました。

 

【関連HPおよび映像リンクなど】

4/13「希望は“緑”なぜドイツは脱原発を選択できたのか-日本の私たちにできること」

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ドイツのエネルギーシフト(気候ネットワーク/ハインリッヒ・ベル財団)
http://www.kikonet.org/research/get.html

緑の党HP京都シンポジウム案内
https://greens.gr.jp/event-info/6045/

4/14公開シンポジウム「自然と共存するエネルギーのまちへ」in 伊勢
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/74149

脱原発首長会議HPの報告
http://mayors.npfree.jp/?cat=6