【報道】 パキスタンメディアに掲載

http://www.brecorder.com/articles-a-letters/187/1227824/

■反原発の勢いで国会をめざす日本の緑

2012年8月15日
神林毅彦

反原発の機運が高まる日本で市民グループが政党を立ち上げた。7月末に設立された
緑の党は次の国政選挙で候補を擁立し、環境政策と脱原発を掲げるという。緑の党は
選挙法上の政党要件獲得を目指しており、そうなれば日本初の環境政党となる。

政党支持層の拡大だけでなく政党要件についても前途は楽観できないが、反原発デモ
の規模を見れば追い風と言ってよいだろう。東京はもちろん各地で数万人が反原発デ
モに参加しており、原子力発電の廃止を訴えている。日本の発電量の約1/3が原子力
だった。

反原発デモの出発点は昨年(2011)3月の地震と津波による福島第一原子力発電所のメ
ルトダウンとそこからの放射能汚染だ。日本最悪の原子力事故への対応から既存政党
への不信感が強まり、それまでに国政政党への準備を進めてきた市民組織が緑の党の
設立を早めたのだ。

野田佳彦首相が2基の原発再稼働を許可したことも民衆の怒りを買っている。西日本
にあるこの原発直下には断層がいくつも走っていると指摘されている。日本国内の残
り50基ほどの原発は定期保守で停止したまま、国民の反対が強いためまったく再稼働
できないでいる。国会周辺のデモに参加した市民は「野田も民主党もまったく支持で
きない、緑の党を応援します」と話していた。

「市民の意見に基づいて政策を民主的に練り上げていけば支持が集まるはずです」と
緑の党の設立を進めてきた中山均氏(新潟市議)は話している。緑の党は5人以上の国
会議員が必要だとする政党要件をまだ満たしていないため、いわば名前だけの党だ。
ある参院議員が2002年に政党設立を試みたがうまくいかず、その2年後には落選した
ために中断されたままだった。(訳注:中村敦夫氏による「みどりの会議」)

首相が総選挙を急ぐだろうという大方の予想どおりになれば、脱原発などで市民団
体・NGOとの政策協力を見込んだ選挙準備ができるという中山氏の考えだ。世論調査
では緑の党の支持率が明らかになっていないが、与党民主党に失望した有権者が必ず
しも既成野党へ流れるわけではないことも示されている。

野党の中でも最大の自民党はこの地震国に50基以上の原発を作ってきたのだから、反
原発を強めている有権者には民主党よりも不適格な存在だ。その他の既成政党も支持
率は下がりつづけ、有権者の60-70パーセントは無党派層と見られている。

今こそ日本に「反原発を掲げる緑の党が必要なのです」と、ベアベル・ヘーン氏(ド
イツ緑の党、副代表)は東京で開かれた緑の党設立総会で挨拶した。しかし国政選挙
での当選は容易ではない。莫大な資金を要するだけでなく、小選挙区制で得票2位の
候補は当選できないため既成政党が有利になっているからだ。

国会議員が5人に満たない政党では候補者が政党名を名乗れずに「諸派」と扱われる
ことも、団体プレーを好む日本の有権者への浸透を妨げる。「ドイツ緑の党に並ぶ力
を得るまでには課題がたくさんある」と、代替エネルギーに詳しい技術者の都筑建氏
(太陽光発電所ネットワーク、事務局長)は話す。

しかし期待は大きく、新しい緑の党で主力となる70人ほどのメンバーは「設立に向け
て大変な努力をしてきました」と総会後の記者会見でヘーン氏は答えた。またオース
トラリア緑の党で上院議員のスコット・ラドラム氏も日本に初めて環境政党が設立さ
れたことを歓迎し、「大きな変革が始まる、その現場に同席できました」と総会の席
上で述べた。緑の党は主要政策に脱原発、電力節減、再生可能エネルギーの推進を掲
げており、新しい党への期待が高まる中、すぐろ奈緒氏(緑の党共同代表)は「支持基
盤は広がる」と積極的だ。


(緑の党国際局翻訳チーム訳)