【声明】生業訴訟最高裁判決を受けてー国の政治的責任は何人も否定できない…
【声明】生業訴訟最高裁判決を受けてー国の政治的責任は何人も否定できない
被害者救済と、原発政策からのすみやかな撤退を
2022年6月30日
緑の党グリーンズジャパン運営委員会
最高裁判決は去る6月17日、東京電力福島第一原発事故の被害者が国を相手にして提起した訴訟で、国の法的責任を否定する判決を言い渡しました。同事故に国の法的責任があるかについては、地裁・高裁レベルとも、肯定と否定双方の判決があり、最高裁の判断が注目されていましたが、市民の期待に反する判決となってしまいました。
この最高裁判決においては、4人の裁判官のうち3人が、原発規制に関わる国の権限を行使しなかったことと事故との因果関係を否定し、1人の裁判官のみがこれを認めました。多数派意見は因果関係の肯定に不当に高いハードルを課しており、損害に関する因果関係についての従来の最高裁判決にも反しています(※1)。一方、反対意見は被害の実相や原告の想いに向き合い、詳細な証拠分析や法令の趣旨に基づき、単なる「意見」ではなく、「判決文」の形式で書かれており、分量も判決全体54ページ中30ページに及ぶ異例のものでした(※2)。歴史は、今回示された反対意見こそがあるべき最高裁判決であることを明らかにするでしょう。
また、地震・津波の長期評価の技術的な争点をめぐる判断だけでなく、そもそも原発事故は原発政策と安全神話を進めてきた帰結であることは明白であり、規制を甘くしてきた国の責任は免れないはずです。だからこそ福島原発事故後に原子力安全保安院が廃止され、新たに原子力規制委員会が設置された(それが機能しているかどうか別として)のです。今回の判決は、こうした本質的な問題に踏み込むことができない司法や法制度上の議論の限界も示しています。
また、多数意見の論理に従えば、結局のところ国の規制によっては深刻な原発事故を防ぐことはできない、ということになります。国の規制も、そして司法判断も、原発事故から住民・市民を守ることができないことが、あらためて明らかになったのです。
一方、多数意見も、法的責任はともかくとして、福島原発事故に国が重い政治的責任を負っていることを肯定せざるを得ず、被害者への十分な救済が国の責務であるとしています。
東京電力福島第一原発事故から11年を迎える今、事故は収束せず、未だに多くの被災者が深刻な暮らしを余儀なくされています。国は、その責任において被災者・避難者の被った損害を償い、また原発からの一刻も早い撤退を決断すべきです。繰り返し訴えるように、原発は分散型エネルギー社会とは相いれず、持続可能性はありません。その推進は再生可能エネルギーの拡大を阻み、深刻化する気候危機への対処という観点でも未来はありません。
私たちはあらためて、原発の稼働を前提としたエネルギー政策の転換を強く求め、原発立地地域や関連産業の原発への依存構造を転換する支援・施策の推進、社会そのものを豊かな自然のリズムに沿った持続可能なものへと創り変えることの重要性を訴えます。
※1:たとえば医療事故と医師の責任に関する最高裁判所第一小法廷の1999年2月25日判決では、医師の不作為と患者の死亡との因果関係は、蓋然的因果関係で足りるとしている(判例時報1668号159頁)。
※2:6月23日付東京新聞記事「原発避難者訴訟 国の責任は否定されたが…最高裁判決文に異例の反対意見 三浦守裁判官が痛烈批判」参照 https://www.tokyo-np.co.jp/article/185157/1
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