【声明】 政治を変えるのは市民自身 -天皇への山本太郎議員の「手紙」問題-
【声明】 政治を変えるのは市民自身 -天皇への山本太郎議員の「手紙」問題-
2013年11月11日 緑の党グリーンズジャパン 運営委員会
山本太郎参議院議員が原発事故問題などの「手紙」を天皇に渡したこと(10月31日)で、自民党をはじめ複数の政党や政治家が山本議員への処分や辞職を求めて来ました。これを受け、参院議長による「厳重注意」と「皇室行事への出席禁止」という処分が決まり(11月8日)、本会議に報告して議事録に残すことになりました。政治家・マスコミや文化人などによるバッシングは今も続いています。
しかし今回の「処分」は、国会外の行動に対して厳罰を強行できなかったという側面があるものの、正規のルールに基づかない異例の措置で、合理性を欠くものです。
また、原発事故被災地の深刻な苦しみに向き合うことなく、再稼働や原発輸出を推し進めている自民党や民主党右派などに、山本議員を非難する資格はありません。さらに、政府や自民党こそ、天皇や皇室を「政治利用」し続けてきました。特に本年4月28日、安倍首相は自らが強行した「主権回復の日」に天皇・皇后を動員しましたが、沖縄の人々にとってこの「4・28」は本土の主権回復と引き換えに統治権が米国に委ねられた「屈辱の日」であり、歴代政権もこの記念式典自体を避けてきたものです。この「政治利用」は、山本議員の「手紙」と比べればはるかに露骨かつ重大で、政権による違憲行為と言えます。自ら重大な政治利用を重ねながら、今回の事件を山本議員潰しや脱原発運動批判に利用しようとする動きは強く批判されなければなりません。
一方、山本議員の行動の背景には、原発事故の深刻な影響や被曝労働の実態に対する危機感があったことは理解できるものの、今回の行為は「主権在民」の観点からは問題があると言わざるを得ません。
原発問題を含めて政治を変えるのは市民自身であり、その代表たる国会議員は「制度圏」において法や施策の確立に向けて活動する責務があります。また、日本国憲法は、旧帝国憲法下における「天皇主権」とその政治利用の反省を踏まえ、基本原理に「主権在民」を謳い、第4条で「天皇は、国政に関する権能を有しない」と規定しています。したがって、自ら立法によって原発問題に対処すべき国会議員が、天皇の権威に頼って政治的課題について具体的な要請をしたり政治的メッセージを発しようとするのは不適切であると言わなければなりません。
私たちは、市民主権の観点で山本議員の行動にも一定の問題があったと認識しますが、一議員の「手紙」への過剰なバッシングに終始する政治家やマスコミの議論はきわめて浅薄であり、政権与党による天皇・皇室の「政治利用」が事実上放任されていることこそ、きわめて重大な問題であると考えます。