【見解】消費税率の引き上げと復興法人税廃止は、社会的公正に逆行する
【見解】 消費税率の引き上げと復興法人税廃止は、社会的公正に逆行する
2013年10月5日 緑の党・運営委員会
安倍首相は10月1日、消費税率を来年4月から3%引き上げて8%にすることを正式に表明しました。同時に、消費増税による景気の腰折れのリスクを避けるという名目で、6兆円もの経済対策を決定しました。そこには復興特別法人税の1年前倒しの廃止を含む大幅な企業減税、2020年東京オリンピックに向けてのインフラ整備などの大型公共事業が目白押しに並んでいます。
私たちは、消費税率の8%への引き上げとそれに伴う6兆円の経済対策に強く反対します。
■社会保障の充実を先送りしたまま増税だけ先行
第1に、今回の消費税率引き上げは、社会保障の充実を先送りしたまま増税だけを先行させるものです。もともと消費増税は、社会保障の充実のための財源確保が目的だと言われていました。しかし、最低保障年金の創設といった抜本的改革は棚上げされ、生活保護基準の切り下げや介護サービスの大幅なカットなど「効率化」の名による社会保障の削減が目立っています。そして、消費税率3%引き上げによる8兆円の増税によって財政にゆとりができたとして、自然破壊のムダな公共事業の予算を膨らませる動きが強まっているのです。
■消費増税をしながら、復興法人税廃止と法人税減税は本末転倒
第2に、消費増税によって人びとに負担増を求めながら、法人税を減税して企業を優遇する不公正な税制を実行しようとしています。復興特別法人税の前倒し廃止は、被災者のことよりも企業の利益増大に肩入れする政権の姿勢を象徴するものです。安倍首相は、法人税減税によって企業の利益が増えれば、賃金の上昇と雇用の拡大につながり、消費も上向き、税収も増えるという経済の好循環が生まれる、と主張しています。しかし、企業はすでに225兆円という巨額の現金・預金を内部に貯めていますが、これを賃金の引き上げには回していません。景気回復が叫ばれていても、民間の平均給与は1年前よりも下がっています。法人税減税による利益の増大分は、企業の内部留保を増やすことだけに終わる可能性が大きいのです。国の借金が1000兆円を突破した現在、消費増税とセットで2兆円近くの企業減税を行なうことは、財政赤字をさらに膨らませ、将来世代にツケを回す愚かな政策だと言わざるをえません。
■逆進性緩和の措置はおざなりのまま
第3に、今回の消費税率引き上げは、逆進性を緩和する措置をおざなりにしたまま行なわれます。消費税は、税負担の世代間公平性という点では優れているとしても、所得の低い人びとに重い負担を負わせる逆進性という重大な欠陥を持っています。したがって、どうしても消費税率を引き上げる必要がある場合には、食料品や生活用品への軽減税率、給付付き税額控除といった逆進性緩和の措置を導入する必要があります。しかし、今回の税率引き上げに当たっては、こうした措置を本格的に導入しないまま、低所得者(住民税非課税世帯の2400万人)に対して一律1~1.5万円を給付する措置をとるだけです。年収250万円未満の世帯では消費税率3%の引き上げで5.5万円の負担増になると試算(第一生命経済研究所)されていますが、1~1.5万円の給付金では逆進性の緩和には役立ちません。
■公正でエコロジカルな税制へ
私たちは、少子高齢化が進む社会では、社会保障を充実させるためには税負担の増大が避けられないと考えます。しかし、税負担の増大は、公正の原則に立って行なわれるべきです。消費増税だけに頼って財政再建を進めることは間違いであり、ましてや法人税を減税しながら消費増税を行なうようなやり方は許されません。
私たちは、環境破壊の公共事業の中止などムダな財政支出を減らしながら、公正でエコロジカルな税制の実現をめざします。所得税の累進性の強化、相続税や金融課税の強化、法人税率は引き下げず租税特別措置の廃止による課税ベースの拡大、環境税の本格的な導入を急ぎます。これらの改革の確実な実現なしには、消費増税はありえません。
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