【声明】日本学術会議法案に抗議し、その撤回を強く求めます
【声明】日本学術会議法案に抗議し、その撤回を強く求めます
2025年6月6日
緑の党グリーンズジャパン運営委員会
「国の特別の機関」とされている現在の日本学術会議(以下「学術会議」)を廃止し、特殊法人「日本学術会議」(以下「新法人」)を新設する法案が去る5月13日、各方面からの強い批判の声(※1)を無視し、自民・公明・日本維新の会の賛成多数で衆議院で可決され、現在、参議院で審議されています。
2020年10月、当時の菅義偉内閣総理大臣が、日本学術会議推薦の会員候補者105名のうち6名の任命を拒否しました。当時、これは大きな問題となり(※2)、今なお解決に至っていません。本法案は、当時の拒否の理由も明らかにされず、当時の反省や合理的な根拠も示されないまま、提出されています。
学術会議は、時の政治権力から独立した立場で、政府に対し、科学的根拠に基づく政策提言を行う機関(ナショナル・アカデミー)です。本法案の最大の問題点は、このナショナルアカデミーに対し、政府を含む外部の介入を許容する新たな仕組みとして、「選定助言委員会」「評価委員会」「監事」などの機関が幾重にも盛り込まれている点です。これは、ナショナルアカデミーとして備えるべき国際的な要件(※3)-①学術的に国を代表する機関としての地位 ②そのための公的資格の付与 ③国家財政支出による安定した財政基盤 ④活動面での政府からの独立 ⑤会員選考における自主性・独立性-を奪うもので、学問の自由に対する重大な侵害です。
日本の戦前の政府による学問への介入や言論統制と一体となった戦争への歴史、そして現在のトルコ・ロシア・中国などでも問題となっているナショナルアカデミーへの介入(※4)を見れば明らかなように、学問の自由は民主主義と連動しています。その意味で、日本における一連の動きも、歴史的・国際的な観点からもこの問題の重大さを認識する必要があります。
また、今回脅かされているのは、学問の自由だけではありません。この法案の事実上の契機となった2020年の任命拒否事件の背景には、当時成立が強行された安保法制がありました。これは一連の教育の右傾化、特定秘密保護法、経済安保法、「安保3文書」などの動きとも連動しています。
さらに、この問題は、民主主義国家のあり方にも迫るものとなっています。法案に賛同する側からは「公金が入ってるのだから一定の介入は当然だ」旨の主張がありますが、それが成り立つならば、内閣法制局・会計検査院・検察庁・裁判所などにも高い独立性は不ということになってしまいます。実際、そのような介入が安倍政権以来進められており、今回もその強権政治の拡大の一環でもあります。
現在、法案に対し、国会周囲で連日、市民や研究者らが声を上げています。私たち緑の党グリーンズジャパンも、すべての市民や立憲野党とともに、政府に対し、今回の法案を撤回し、任命を拒否されている6名の学者を直ちに任命するよう強く求めます。
※註
1) 「日本学術会議法案に反対する会長声明」(2025年3月18日) https://www.nichibenren.or.jp/document/statement/year/2025/250318_2.html
2) 当時、緑の党グリーンズジャパンも声明「日本学術会議問題―菅政権による憲法と学問の軽視、強権政治に抗議します」(2020年10月23日) で強く抗議。https://greens.gr.jp/seimei/29140/
3) 日本学術会議幹事会「より良い役割発揮のための制度的条件」(2024年6月7日)https://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-25-s182-2.pdf 参照
4) ナショナルアカデミーの各国での危機的な状況等については、隠岐さや香(東京大学教育学研究科)氏がまとめたサイトhttps://sites.google.com/view/academies-in-crisis 参照。
全文→https://greens.gr.jp/uploads/2025/06/seimei.gakujyutu.pdf