【声明】核燃料デブリの取り出しに固執するのではなく、現実的解決策の模索とロードマップの見直しを
【声明】核燃料デブリの取り出しに固執するのではなく、現実的解決策の模索とロードマップの見直しを
2023年10月21日
緑の党グリーンズジャパン運営委員会
東京電力は去る9月10日、福島第一原子力発電所2号機で核燃料デブリの試験的な取り出しに着手しました。前月、取り出し装置を構成する押し込みパイプの順番が間違っていることが現場で判明し、いったん中止された後の措置で、今後の行く末を暗示するような経過をたどっています。
今回の着手にあたり、東京電力は「放射線リスクの低減を目的とする廃炉作業の中核をなす『燃料デブリの取り出し』という新たなステージに進みます」とのコメントを公表し、マスコミも一部は「廃炉最大の難関に向けた取り組みがようやく始まった」などと報道しています。しかし、実態は何も決まっておらず、廃炉工程は先行きが不透明な状態です。
現在の作業はタイムスケジュール第2期に当たり、予定よりすでに3年ほど遅れています。これから始まる第3️期「廃炉措置終了までの期間」が30〜40年で終了は不可能であると、大方の専門家は見ています。
格納容器内は高線量で、被ばくの危険性から人が直接作業することは不可能です。燃料デブリは核燃料がコンクリートや鋼材と溶け合った塊で、物理的破壊や搬出は困難です。そのため長年議論しても方針や工法が決まらず、取り出すロボットも開発中ですが、本格取り出し計画は検討段階ということです。その困難さは、事故後13年経て880トンのうち、試験的取り出しで予定されていた3gはおろか、全く取り出せていないことが証明しています。そして、一連の作業工程で作業員を被ばくの危険にさらすことも問題です。
また、取り出し費用は8兆円と試算されているものの、その後の管理方法も、そしてその費用を誰が負担するかも決まっていません。危険と負担を将来の世代にわたって負わせ続ける試験取り出しは、原発事故を過小評価させ、福島の復興を印象付けるためのアピールに過ぎません。環境を汚染し続ける処理汚染水の問題こそ最優先で取り組むべき課題であるにも関わらず、そこから目をそらせようとするものでもあります。
緑の党グリーンズジャパンは、安全性・合理性など大きな問題を抱える燃料デブリの取り出しに固執するのではなく、まず「広域遮水壁と集水井(※1)」など汚染水流入・増加を抑制した上で、チェルノブイリ事故後の石棺なども含めた現実的廃炉の方法の模索と早急なロードマップの見直しを求めます。
※註
1:柴崎直明・福島大教授が提言(https://www.chosyu-journal.jp/shakai/26437)
PDF全文→https://greens.gr.jp/uploads/2024/10/seimei_deburi.pdf