緑の党グリーンズジャパン動物関係政策集

2024年2月

本政策集は、緑の党の基本政策・自治体政策集の中から動物関係・関連政策を抜き出し、新規に追加したものも含め、動物問題に特化した課題別政策集のひとつとして整理したものです。

今後さらに内容を補強していく予定です。

■基本的方針と特に急ぐべき課題

  • 生物多様性は地球環境そのものでもあり、人類だけでなく全ての生物にとって重要であること、そして深刻な気候変動によってそれが危機的な状況にあることを認識し、その立場から動物関係政策を整備する。
  • 家庭・実験動物施設・動物園・学校飼育・畜産等におけるアニマルウェルフェア(※1)を確⽴するとともに、野⽣⽣物との共存や適切な管理を進める。
  • 本政策集で掲げる施策の実現に向け、動物愛護法の改正を進める(※2)とともに、動物福祉法のような法体系の整備をめざす。また、動物愛護団体への支援策を設ける。

■家庭飼育・取扱業者規制等

  • ペット動物取扱業者の免許制の導⼊と殺処分ゼロ(※3) をめざす。
  • 従来の殺処分中心の動物管理センターのあり方を見直し、保護・啓発施設への転換を図る。
  • 飼い主のいない犬猫の殺処分ゼロを目指すとともに、問題の背景にある課題の理解や啓発、不妊去勢施術への補助の充実と多頭飼育の規制強化を進める(※4,5)。
  • 取り扱い業者について、登録制から許可制・免許制へと規制を強化する(※6)
  • 飼育する人の責任を明確化する。
  • 動物取引市場における合法性と安全性の確認の義務化、検疫体制の強化等により輸⼊規制を強化する。

■畜産業関係

  • 家畜のケージ飼育の規制、飼育場所の衛生管理、安全な飼料の使用、不自然な品種改良の規制とともに、新たな認証制度や所得補償制度の導入などを通して、工場的畜産からアニマルウェルフェアや環境に配慮した畜産への転換・誘導を図る(※7)。
  • 畜産が環境や温暖化ガス排出に与える負の影響等(※8)に関する啓発などを進める。

■展示動物および闘犬・闘牛・闘鶏など

  • 展示動物の保護のための基準や規制を強化する。
  • 動物を闘わせる行為を禁止する(※9)。

■動物実験等

  • 実験動物飼養施設の届出制の確⽴や⽴⼊調査を強化する。
  • 化粧品や薬品の安全確認のための動物実験をできるだけ行なわないよう、代替手段を講じる努力義務を明確化するとともに、そのための技術開発を進める。

■野生動物

  • 野⽣動物による農作物被害問題等について、持続可能な第一次産業や里山・里海との共⽣の観点から、動物の犠牲を可能な限りゼロを目指す対策を講じる(※10)。
  • 開発工事等に関する環境アセスメントについて、制度全体の改善と併せ、希少動物の⽣息への負の影響(絶滅の可能性含む)の観点を強化する。
  • 気候変動対策として必要な風力発電についても、野鳥の飛行ルートへの影響やバードストライクのリスクなど、計画から環境アセス・建設・廃棄のプロセスにおいて、立地・規模・様式の選定などの十分な考慮を求める仕組みを整える。

■災害

  • ペットだけなく、畜産動物・実験動物・学校飼育動物・展示動物などの災害対策を進める。

■狩猟・漁業など

  • 学校給食や病院食で代替肉やビーガンメニュー、野菜中心メニューなどの食の選択を可能にするよう施策を進める。
  • 毛皮製品などの規制を進める。
  • 鯨漁・イルカ漁などについて、苦痛を伴う方法の規制を進める。
  • くくり罠での狩猟を規制する(※11)。

■教育

  • 学校施設での動物飼育については「ふれあい」から動物福祉の観点へと抜本的に見直し、動物の種の特性や多様性、命の大切さなどの教育を重視する内容へと転換する。

◎参考(文中注釈番号の参照用)

※1 動物の福祉の指標となる原則として国際的に「①飢えと渇きからの自由 ②肉体的苦痛と不快からの自由 ③外傷や疾病からの自由 ④恐怖や不安からの自由 ⑤正常な行動を表現する自由」の「5つの自由」が提唱されている。

※2 動物愛護法(2019 年改正)によって、家庭動物は不十分ながら「動物愛護法」で虐待かどうかチェックする基準と罰則が設けられたが、実験動物に関してはそれにあたるものはまだなく、動物実験の代替や削減のあり方が附則に記されただけとなっている。動物実験等については以下のような課題がある。

・各省(文科省・厚労省・農水省)で指針の運用を具体的に定めたものも特にない。文部科学省の動物実験基本指針は、動物実験を行なう研究者らによる自主管理となっている。
・日本学術会議の「動物実験の適正な実施に向けたガイドライン」もあるが法的な遵守義務はない。
・動物実験計画の審査は同じ組織の人間だけでやってよいことなどの問題もある。
・飼養実験動物の⽴ち⼊り検査は静岡などで行なわれているものの、問題があっても調査・指導・罰則のしくみがない。また、国全体としてどんな動物が何匹使われているか政府統計もない。

※3 犬猫殺処分数については 2020 年統計で犬猫あわせて 23,764 頭(ひきとり 72,433、譲渡・返還 49,584、譲渡返還率は 68,5%)。
(環境省_統計資料 「犬・猫の引取り及び負傷動物の収容状況」 [動物の愛護と適切な管理] (env.go.jp))。

※4 動物取扱業の抜き打ち検査などはいくつかの県で行なわれているが、少数にとどまっている。また、実験動物飼養施設については実態把握すら全く進んでおらず、条例で届出制をとっている静岡県・兵庫県のみが⽴⼊調査を行なっている。
静岡県は動物愛護法に基づいて定めた「静岡県動物愛護管理推進計画」に従って、実験動物飼養施設に年に一度の検査。施設名称や実験内容は公開されないながらも、施設の規模、年間実験回数や使用頭羽数、使用頭羽数1万匹を超える9施設のうち獣医師がいるのはたった一カ所であること、環境省が不適切とするエーテルが殺処分に用いられていること、マウス、犬、ウサギのケージサイズなどからも日本の実験施設は国際水準にないことが判明している(「日本の動物実験施設は国際水準にない 静岡県平成 30 年度実験動物取扱状況調査から│PEACE 命の搾取ではなく尊厳を」 (animals-peace.net))。
なお、兵庫県は届け出制としているが、毎年の訪問は行なっていない。

※5 多頭飼育の規制を自治体の動物愛護条例に取り⼊れることが必要。現状では各自治体で対応がばらばらとなっている。

※6 日本では動物取扱業者は登録制になっているものの、EU 諸国や米国、台湾等で動物取扱業者は免許制になっており、本来、国の法改正が必要となる。自治体においては、こうした法制度の遅れが無責任な飼育や多頭飼育崩壊の背景にあることを理解し、実行可能な範囲で動物福祉を重視した施策の充実を図る必要がある。

※7 たとえば「東洋経済」記事 「『工場畜産』の爆発的拡大が生む百害」 https://toyokeizai.net/articles/-/46919 など参照。

※8 食料の生産・加工・流通・調理・消費・廃棄の過程から排出される温室効果ガスは、全世界の排出量全体のうちおよそ3分の1を占め、さらに肉類は他の食品と比して温室効果ガスの排出量が多い。また、Green Peace Japan 「牛のゲップだけじゃない。肉の大量消費が引き起こす10の環境問題まとめ」https://www.greenpeace.org/japan/campaigns/story/2021/07/05/52110/ も参照。

※9 東京都、北海道、神奈川県、福井県、石川県などでは条例で規制されている。

※10 野⽣動物については、千葉県、滋賀県等が⽣物多様性維持の観点を施策に盛り込んでいる。
また、「新潟ワイルドライフリサーチ」(http://blog.wironkemono.com/)は、農業従事者・行政・猟師による地域ぐるみとなった害獣対策ノウハウを提供している。

※11 世界では禁止・見直しが進んでいる。