【論説】小手先の政治資金規正法改正―選挙制度の抜本的改革と一体の議論を
【論説】小手先の政治資金規正法改正―選挙制度の抜本的改革と一体の議論を
2024年8月7日
緑の党グリーンズジャパン運営委員会
自民党の「裏金」問題に端を発した改正政治資金規正法が6月に成立し、公布されました。自民党への強い反発の世論を背景に、国会での議論が注目された中、結局のところ政治改革の大きな流れを作ることなく幕引きとなりました。
政治資金の透明性向上、監査の拡充、政治資金パーティ券の購入者公開基準の引き下げ(「20万円超」から「5万円超」)などの改正がなされたものの、いずれも抜け穴だらけで、企業団体献金の禁止は実現せず、裏金の温床・背景となった「政策活動費」も温存し、月100万円の調査研究広報滞在費(旧「文書文通費」)の透明化も事実上先送りにされました。
そもそも「裏金」がどのようにして使われたのかという実態解明もなしに制度を小手先で変えたところで、本質的な対策になるはずはありません。自民党の権益構造や体質、公明や維新の妥協と政治パフォーマンスなどの複合的な産物とも言える法改正は、市民議論とかけ離れたものでした。
政治資金規正法はこれまでも何度かの「改正」を経ています。リクルート事件(1988年)や佐川急便事件(1992年)などの一連の構造汚職を受け、1994年、政治家個人への企業・団体献金の禁止や、政治資金パーティーの公開基準額の引き下げ(100万円超から20万円超)などが図られました。今回と同様、抜け道だらけで本質的な対策が取られないまま、この問題が多くの政治学者やマスコミによって小選挙区制必要論にすり替えられ、規制法改正と同じ年に同制度の導入に至りました。
しかし、狭い地域で少数の議員を選ぶ制度は、利権と政治―業界団体と議員の癒着を生み出してきました。1人だけを選ぶ小選挙区制でその傾向は一層顕著となり、政策的争点も曖昧にされたまま、政治家がただ票を得るための活動や業界団体の利権の代弁に終始し、利権・金権的な腐敗が蔓延することにつながってきました。さらに、選挙区の党公認という生殺与奪権を持つ党執行部に政治家が逆らえなくなったことで、政策的・政治的な劣化も進みました。今回の「裏金」問題については、金権政治や構造汚職の根絶を掲げて導入された小選挙区制度が何らその解決策になっていないこと、そしてこの間一層深まってきた政治の劣化などと一体の課題として、より多角的で公正な観点から議論する必要があります。
私たちは、改正政治資金規正法がきわめて不十分なものであることをあらためて強く批判するとともに、公正で透明な政治の実現のためにも、政治資金規正法の徹底した改革とともに、この問題を選挙制度の抜本的改革とともに議論する必要性を訴えます。
全文(PDF)→ https://greens.gr.jp/uploads/2024/08/ronsetsu_seijishikin.pdf