【談話】IPCC 第3作業部会第6次評価報告書の発表を受けて
【談話】IPCC 第3作業部会第6次評価報告書の発表を受けて
~政府は「炭素税ベーシックインカム」や「公正な移行」の議論を始めよ~
2022年4月12日
緑の党グリーンズジャパン共同代表 松本なみほ
4月5日、IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change:気候変動に関する政府間パネル)の第6次評価報告書の第3作業部会報告が発表されました。この報告は、「気候危機は人間活動によるものであることは疑いの余地がない」と明言した第1作業部会報告(昨年8月)、「気候変動が進めば30億人以上が適応できなくなる」と警鐘を鳴らした第2作業部会報告(今年3月)に続き、「2025年までに温室効果ガス(GHG)を削減に転じさせなければならない」と指摘しています。また、グテーレス国連事務総長は「世界の国々が提出しているGHG削減計画では21世紀中にパリ協定で目標とされた温暖化1.5℃を超えてしまう。いますぐ強力な削減策を実行しなければならず、再生可能エネルギーへのシフトを3倍速させなければならない」と表明しています。
しかし、この緊迫感をよそに、日本では4月1日時点で7基もの石炭火力発電所の建設が進んでいます。私の住む神戸では、日本政府から建設のお墨付きを得た神戸製鋼がCO2回収機能を備えていない4基目の石炭火力発電所の試運転を始めようとしています。今報告において、石炭火力発電における水素・アンモニア混焼は、有効な削減政策に入っておらず、CO2を回収して埋めるCCSも、技術的にもコスト的にも効果的な削減策とはならないと指摘されています。にもかかわらず、日本政府は化石燃料由来の水素利用推進に注力するばかりか、海外の既設石炭火力についても、水素・アンモニア混焼の導入支援を可能とする解釈をして「支援という名の気候破壊」を続けようとしています。
日本政府が打ち出した「2030年までの(2013年比)46%削減」は、2010年比換算で42%にとどまります。これは気温上昇を1.5℃に抑えるための2030年までの世界全体の「(2010年比)45%削減」に届かず、これまで多くの温室効果ガスを排出(世界第5位)してきた先進国として、「気候正義」の観点で果たすべき責任から考えればきわめて不十分です。グテーレス国連事務総長が政府や大企業を嘘つきだと糾弾する言葉は日本に向けられたものであるとさえ感じます。
緑の党グリーンズジャパンがこれまで主張してきたとおり、2030年までの脱石炭は必須です。加えて、日本において「公正な移行」や「炭素税ベーシックインカム」といった脱炭素で影響を受ける労働者や生活者の尊厳と暮らしを守る制度についての議論を始めることもまた急務です。
私たちは、世界の緑の党の仲間や市民グループから学んだ気候危機とコロナ危機を乗り越えるための政策を「グリーンリカバリー+(プラス)」としてまとめ、今月末に発表する予定です。このグリーンリカバリー+を通じて、誰も取り残さずにこれらの危機を回避することに全力を尽くしていきます。
PDFファイルは
⇒【談話】IPCC第3作業部会第6次評価報告書の発表を受けて
《参考》
【談話】IPCC 第 2 作業部会第 6 次評価報告書の発表を受けて
~政府は「2030 年脱石炭」と「途上国への補償」で先進国の責任を果たせ~