【論説】COP26を受けて- 未来世代と途上国に責任を果たす積極的な対策と社会の...
【論説】COP26を受けて
-未来世代と途上国に責任を果たす積極的な対策と社会の転換を
2021年12月1日
緑の党グリーンズジャパン 運営委員会
■重要な決定と重大な課題
英国グラスゴーで開催されたCOP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会合)は11月13日に閉会しました。本会合では「地球の気温上昇を1.5℃に抑制する努力を追求する」ことが合意され、従来の努力目標だった「1.5℃」が明確にされた意義は重要です。
一方で、気候変動によって現実に被害を受けている途上国への支援資金の枠組みは、きわめて不十分なものにとどまりました。また、現在の各国政府の国別約束(NDC)をすべて実現できたとしても「1.5℃」には程遠く、このままでは「2℃」を超え、気候崩壊を招くことも指摘されました。そのため、「2030年目標を遅くとも2022年までに強化する」という、十分とは言えないまでも重要な決定がなされました。
総じて、この会議は「1.5℃」の重要性を共有し、今後の対策強化に向けた枠組みと可能性をかろうじて残したものの、未来世代や途上国・島嶼国の期待に沿うものではありませんでした。
各国-とりわけ先進国-政府には、妥協の産物とも言える今回の合意を、より実効性ある形で実現する努力が強く求められています。
■脱化石燃料への加速
会議期間中、脱化石燃料を加速させる動きが見られたことは、数少ない積極的要素のひとつです。温室効果ガス排出削減対策のない石炭火力発電所の新規建設中止などを盛り込んだ声明に、ヨーロッパ諸国など40か国以上が賛同しました。2017年に発足した「脱石炭連盟(PPCA)」は、石炭産業で発展してきたドイツ、イギリス、カナダなどを含む計165の国・自治体・企業が参加したことをCOP期間中に発表しています。また、新規の石油・ガス掘削を阻止するための「ビヨンド石油・ガス連合(BOGA)」には6つの国と地域が増え、脱石炭にとどまらず、石油、天然ガスも含めた化石燃料の使用をやめようという動きが活発になっています。
■日本政府の姿勢は犯罪的
しかし、日本政府はこうした脱石炭・脱化石燃料の動きには背を向け、COP26でも積極的な役割を果たせませんでした。日本は、温室効果ガスの累積排出量が世界6位であるにもかかわらず、10月に閣議決定されたエネルギー基本計画では、2030年でも19%もの石炭火力発電を使うとしています。
COP26での世界リーダーズサミットにおける岸田首相のスピーチは、1.5℃目標や脱石炭・脱化石への具体的な言及もなく、途上国への支援として火力発電の水素・アンモニア混焼を強調したもので、環境団体からは「2030年以降だけなく、2050年に向けても石炭発電を続けようとしている」「『ゼロエミッション火力発電』を妄信している」と批判を浴び、またもや不名誉な「化石賞」を受賞しています。
また、日本政府は「石炭は安い」「日本の石炭火力発電は高性能」「再エネが普及すると電気代が高くなる」「太陽光発電の場所が足りない」「原発は温暖化対策」といった偏った情報を発信し続けています。途上国や次世代の人々の命を顧みない不誠実で無責任な行動は、気候犯罪(Climate Crimes)と呼ぶべきものです。
■未来世代と途上国への責任を
国際社会は、未来世代や途上国の切実な声に応える責任があります。とりわけ日本政府と先進国には、脱化石燃料を真っ先に実現するとともに、NDCの飛躍的な引き上げとそのための積極的施策が求められます。さらに私たちは、際限のない成長をめざすグローバル経済からの脱却と、自治・分権・分散型の地域循環社会への転換こそが必要であることを訴えます。そのために私たちは、国内外の仲間たちと共に、地域と世代を超える「気候正義」の実現を掲げ、政治的発信と活動を続けます。
PDFファイルは⇒https://greens.gr.jp/uploads/2021/12/ronsetsu_20211201.pdf