【声明】日本学術会議問題―菅政権による憲法と学問の軽視、強権政治に抗議します
【声明】日本学術会議問題―菅政権による憲法と学問の軽視、強権政治に抗議します
2020年10月23日
緑の党グリーンズジャパン運営委員会
去る10月1日、菅義偉内閣総理大臣は、日本学術会議が推薦した会員候補者105名のうち6名を任命しませんでした。
日本学術会議法は、同会議の「独立」性を明確に謳い、政府からの諮問を受け、勧告する機関であると定めています(※1)。真理の解明をめざす学問の営みは、本質的に既成の価値観を超えた新しい知見をめざすものであり、政府からの独立性が保障されることは必須の条件です。また、憲法23条が保障する「学問の自由」は、個々の科学者の研究の自由だけでなく、大学の自治のような制度的保障をも含んでいます。学術会議の高い独立性は、そのような観点から定められたものです。
内閣総理大臣は、同会議を管理及び監督するものではなく、ただ「所轄」するにすぎません(※2)。また、内閣総理大臣は、同会議の推薦に「基づいて」同会議の会員を任命する(※3)と規定されています。その推薦の基準とされるのは、「優れた研究又は業績」(※4)ですが、基準を満たしているかどうかを判断するのは同会議であって、内閣総理大臣は制度上も判断できません。内閣総理大臣は、学術会議の会員自身から病気その他やむを得ない事由により自発的な辞職の申出を受けた時や会員として「不適当な行為」がある場合でさえも、辞職の承認や退職をさせるには日本学術会議の承認や「申し出に基づ」かなければできません(※5)。政府も、会員の選考及び推薦に関する学術会議法の規定について、第98回国会において、内閣総理大臣による任命は形式的任命に過ぎず、会員を選別するものではないこと、さらに、形式的であれ任命を必要とする理由については、選挙を経ずに公務員に就任するために形式上やむを得ないものにすぎない旨、答弁しています。
したがって、現内閣の言うような「総合的、俯瞰的活動を確保する観点」からの任命拒否などというのは法制度上も絶対に根拠になりえないし、同会議の独立性・自律性を著しく侵害するもので、法律に明白に違反するものです。しかも、菅総理は任命拒否の具体的な理由を全く説明しておらず、会員候補者の研究内容や思想内容にまで立ち入って検討し、その内容ゆえに、任命を拒否したものと強く疑われます。これがまかり通れば、政権の前に科学者を萎縮・屈服させることにつながります。
東京電力福島第一原発事故の根本原因が、原子力安全委員会(※6)への政府による干渉にあったことを踏まえれば、学術機関の独立性が失われては、御用機関によって再び深刻な事故や環境・生態系被害が引き起こされかねません。
多くの市民による批判を受け、菅総理や自民党は急遽、「行政改革」「学術会議の改革」を言い始めました。批判に正面から答えず、あからさまな問題のすり替え以外の何物でもありません。
また、今回脅かされているのは、学問の自由だけではなく、諮問組織などの「独立性」でもあります。「公金が入ってるのだから(政権の意向に反するべきではない)」などという主張は、内閣法制局、会計検査院、検察庁、裁判所などにも高い独立性は不要だと言うことに等しいものです。実際、そのような介入が安倍政権以来進められており、今回の事件もその強権政治拡大の一環でもあることに注意が必要です。
私たち緑の党グリーンズジャパンは、すべての市民や立憲野党とともに、今回任命拒否された6名の学者を直ちに任命するよう、強く政府に求めます。また、このような政府の違法な権力濫用がどのようにして起きたか、誰がどのようにこの件に関わったのか、すべてのプロセスを公開し、真実を明らかにすることを求めます。そして、学問をはじめとする社会の様々な領域において、多様性が実現されるよう、今後も努めていきます。
※註
1: 日本学術会議法3~5条
2: 同法1条2項
3: 同法7条2項
4: 同法17条
5: 同法25・26条
6: 原子力の安全の確保に関する事項について企画・審議・決定する機関。原子力規制委員会の前身のひとつで、「3.11」後の2012年9月に廃止。
PDFファイルは⇒https://greens.gr.jp/uploads/2020/11/seimei20201023.pdf