【論説】省庁・自治体 雇用率不正算定問題…社会の側が抱える「障害」の是正に向けて

【論説】省庁・自治体の雇用率不正算定問題
  -実態解明と早急な対策、そして社会の側が抱える「障害」の是正に向けて

2018.9.4
緑の党グリーンズジャパン運営委員会

 中央省庁で「障害者雇用」が水増しされていた問題で、次々と驚くべき実態が明らかとなっています。政府による8月28日の発表によれば、昨年の全省庁の雇用数計6900人のうち約半数にあたる3460人分が不正に算入されていたことが判明しました。中には死亡者を算定していた省庁もあり、きわめて悪質だと言わなければなりません。法解釈の厳格な運用が求められる裁判所でも不適正な算入があることも明らかになりました。

 さらに、全国の多くの自治体でも同様の問題が判明しており、民間企業に範を示すべき中央省庁と自治体で、合わせれば水増しは1万人規模に膨らむと見込まれます。法制度の精神がないがしろにされ、過去40年にもわたり、採用されるべき障害者の雇用の場が奪われ続けてきた事実に、当事者・ご家族や支援団体はもとより市民社会に憤りと衝撃が広がっています(※1・2)。

 国では、厚労省と各省庁が「ガイドラインの理解不足」「厚労省の説明が曖昧」などと責任を押しつけ合っています。官公庁には民間で義務付けられた外部機関のチェックがありません。公的機関でのこれだけ大規模・広範な不正運用は、意図的なものである可能性も指摘されています。

 政府は弁護士らも含めた第三者委員会で実態を解明するとしていますが、障害当事者団体が要求するように、これには当事者の参加が必須です。また、中央省庁だけでなく地方自治体における実態も徹底的に明らかにする必要があります。

 「働く」という観点で障害者も自己実現や社会参加を果たせるよう施策面から後押しするのが障害者雇用促進法であり、そのために定められたのが法定雇用率のはずです(※2)。また、障害者が地域で働ける社会に向け、社会の側が様々な是正を行なうことを、改正障害者雇用促進法の「障害者差別禁止指針」および「合理的配慮指針」(※3)は謳っています。これらは、障害者が働けない「障害」が社会の側にあり、社会の側にそれを是正する責任がある、とする当事者・支援者らの長年の訴えが定着したものでもあります。

 各省庁・自治体は、実態解明と併行しながら、法定雇用率の早急な実現とともに、法制度・指針の理念に沿って、障害者の働きやすい職場環境への改善、バリアやハードルの是正・解消、さまざまな支援が必要です。それだけではなく、そうした取り組みを通して、障害のない人たちも含む「働き方」も見直し、誰にとっても安心できる職場へと創り変えていくことにもつなげるべきです。私たち緑の党は、障害者も含む多様な個性が尊重されることによってこそ、豊かな社会が実現できると確信しています。

  私たちは、当事者・支援団体や、あらゆる差別撤廃を求める国際的な潮流とともに、障害のある人もない人も、全ての人びとの個性が尊重される社会をめざし、これからも発信し、行動していきます。

 

※註
 1)特定非営利活動法人DPI(障害者インターナショナル)日本会議「国及び地方自治体の障害者雇用水増しに対する声明」
http://dpi-japan.org/blog/demand/国及び地方自治体の障害者雇用水増しに対するdpi/

2)全国手をつなぐ育成会連合会「障害者雇用促進法における行政の不作為の改善を求める声明」
http://zen-iku.jp/wp-content/uploads/2018/08/180824seimei.pdf

3)厚生労働省HPより「改正障害者雇用促進法」および同法改正に伴う障害者差別禁止指針について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/shougaishakoyou/shougaisha_h25/index.html

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