河北新報 社説にて「緑の党」が取り上げられる!

http://www.kahoku.co.jp/shasetsu/2012/08/20120802s01.htm

緑の党/民意をすくい取る回路築け

東京電力福島第1原発の事故を契機に、多くの国民が原発の行方を不安視している。ところが、「脱原発依存」に向けた政府の動きは鈍く、むしろ逆行さえしている。

「政治は民意を反映していない」。そんないら立ちが国会を取り巻くデモには渦巻いている。

脱原発など環境政策を前面に掲げた「緑の党」が旗揚げした。私たちの文明やライフスタイルを貫いている「経済成長至上主義」を改めると同時に、参加型の民主主義を徹底し政治再生の旗手たらんとするという。

意欲的な試みだ。国民不在の政争に明け暮れている永田町の政治文化を、市民を基点に刷新する可能性も秘めている。

ただ、成功させるためには、理想を語るだけでは足りない。ある種の「したたかさ」が必要だ。脱原発に向けた工程表を早急に練り上げ、代表を国会に送り込む戦術が欠かせない。

党の母体は地方議員70人でつくっていた「みどりの未来」。基本政策として脱原発、再生可能エネルギー導入のほか、社会的公正の実現などを掲げる。

共同代表の1人、東京・杉並区議の須黒奈緒さん(33)は「原発再稼働反対の声が満ちあふれているのに、政府は受け止めようとしない。市民の側から政治を動かし、変えていく必要がある」と結党の理由を語る。

緑の党は1972年、オーストラリアで巨大ダム建設から熱帯雨林を守るために結成されたグループが嚆矢(こうし)とされる。現在、世界90カ国にあり、欧州では既成政党でさえ無視できない政治的影響力を持つ。

ドイツでは緑の党と社会民主党(SPD)が1998~2005年に連立を組み、政権綱領に脱原発を組み込んだ。その後就任したメルケル首相は一時、原発推進にかじを切ったが、福島の事故後は再び脱原発路線に。決断の背景に、緑の党の存在があったことは疑いようがない。

日本版「緑の党」も国際組織である「グローバルグリーンズ」と連携しながら、少数ではあってもキャスチングボートを握れる勢力を国会内に築くことを目指す。

来年夏の参院選比例代表に10人を擁立するほか、次期衆院選でも候補者を立てる。

参院選では候補者1人当たり600万円の供託金が必要となる。市民からのカンパに頼ることになるが、総額1億円ほどと見込まれる選挙資金をどう賄うか難題が待ち受けている。

3.11以降、脱原発に共感する有権者が増えている。山口県知事選で、脱原発と自然エネルギー導入を訴えてきたNPO法人所長が健闘したことは、環境・エネルギー政策で事実上、選択肢を奪われている現状に対して有権者が不満を募らせていることの表れだ。

緑の党は脱原発への道筋を信頼できるデータとともに提示してほしい。地方議員が多い特性を生かし、党の意思決定に地域の声を反映させていく視点も大事だ。そして被災地・福島こそが、その原点であるべきだ。

2012年08月02日木曜日