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【世界のみどり】米国緑の党大統領候補 ジル・スタインは第二の「ラルフ・ネーダー」か?

2016/09/30 ジル・ラルフ
Jill Stein(ジル・スタイン)氏Facebook
https://www.facebook.com/drjillstein/?fref=ts より

足立力也(緑の党グリーンズジャパン国際部)


 今年11月に本選をひかえ、米国大統領選挙が盛り上がってきました。9月26日(現地時間)には恒例の(第一回)候補者討論会が開催され、米国内のメディアがこぞってこれを報道。当初差をつけられていたドナルド・トランプ候補(共和党)がヒラリー・クリントン候補(民主党)を猛烈に追い上げるなか、クリントン氏は積極的な言論を展開。トランプ氏はこれまでと比べるとやや抑制的な口調で守りに徹しました。討論終了後の世論調査ではクリントン氏の「勝利」とした視聴者が圧倒的ではあったものの、支持率に大差はなく、レースを僅差にとどめた感があります。

 一方で、米国では民主党も共和党も「どちらも支持しない」という人たちがもはや比較多数になっているとも言われます。その人たちの有権者の行動パターンは、「妥協して二大政党のどちらかの候補者に投票する」「投票しない」「“第三の候補”に投票する」の3つに分かれることになります。その“第三の候補”として、リバタリアン党のゲイリー・ジョンソン候補とともに注目を集めているのが、緑の党のジル・スタイン候補です。

 過激な発言を繰り返すトランプ候補を多くの人が危険視するなかで、スタイン候補がクリントン候補の票を奪い、結果トランプ候補を利するのではないか、という声も聞かれます。2000年の米大統領選において、緑の党のラルフ・ネーダー氏がジョージ・W・ブッシュ氏(共和党)VSアル・ゴア氏(民主党)の稀に見る接戦のなかで3%弱の票を獲得したことで、「ブッシュ氏を勝たせた」という言説が展開されたことがその背景にあります。しかし、その主張は正当でしょうか。

 計算上の話をするのであれば、当時ネーダー候補に投票した人たちのうちわずか500人が(最終決戦の場となった)フロリダ州でゴア候補に投票していれば、ゴア候補が大統領になっていたと言われます。つまり、他の49州では関係なかったし、訴訟にまで発展したフロリダですら誤差の範囲内(再集計が義務付けられる0.5%以内)です。わずかそれだけの数をネーダー氏のみに押し付けるのは、単なるスケープゴート探しでしかありません。ましてや、二大政党のどちらも支持しない人が多数派となった現在、「民主党でも共和党でもない、第三の選択肢」としてのスタイン氏は、選択肢としての重要性がかつてなく高まっているのです。

 問題は、“First Past the Post”、つまり「絶対得票数や得票率にかかわらず、他候補と比較して1票でも多く獲得した候補者が勝つ」という選挙制度にあります。その制度のなかでは、「有利な2者のなかでよりマシな方」を選択する以外の行動を有権者が取りづらくなってしまいます。結果、有権者が心から求めている社会的要求とはかけ離れた候補者に投票行動が誘導されることになります。スタイン候補が常時数%の支持率を示しているなかで、自分への投票だけでなく、選挙制度そのものの改革を声高に訴えているのは、そこに理由があるのです。

 スタイン候補が現時点で勝つ見込みは非常に小さいでしょう。しかし、選挙制度を変えることで、スタイン候補の主張の重要性は増し、これまで選挙が終わればかき消されてしまっていた小さな声がより多く拾い上げられることが期待できます。さらには、そういった小さな声を代表する人たちが寄り集まり、最終的に多数の支持を受ける将来像にもつながってくるでしょう。決選投票制度や、単記委譲式投票制度などを導入すれば、同じ1人を選ぶにしても、より有権者の意図に沿った選び方ができます。そういった、より民主主義的な制度改革まで見据えた、一部の権力者による票取りゲームを超えるための戦略なのです。

 今米国では、その考え方こそが米国が本来目指していたはずの「民主主義」だと考える人たちが増えてきました。それがスタイン候補支持率の増加にも表れています。独立系メディアのみならず大手メディアですらスタイン候補の一挙手一投足を報道するようになってきました。ネーダー氏の時より扱いは大きくなっています。しかし、選挙の世界ではまだまだ排除されたままです。

 先の討論会では、スタイン候補は参加を許されませんでした。討論会を主宰する委員会自体が二大政党によって支配されているからです。4年前の前回選挙では討論会に「1観覧者として」入場しようとしたスタイン候補が警察に拘束され、今回は数十人ものスタイン氏支持者が逮捕されるという事態に発展しました。もちろんスタイン氏もその支持者も一切暴力はふるっていません。これは、米国が他国を外交的に「攻撃」するときに使う常套句である「政治犯の拘束」に他ならず、米国の民主主義が、米国が敵対視する国々とさして変わりない一面を持ち合わせていることを示しています。

 スタイン候補の躍進で米国の民主主義が進化すれば、米国によって軍事的・経済的影響を強く受けている現代世界にとっても大きな前進となるでしょう。単なる泡沫候補でもなければ、他人の票をかすめ取るだけの存在でもありません。世界秩序に決定的な影響を与える超大国・米国に新しい選択肢が生まれたのです。これは世紀単位の画期的出来事です。私たちも、スタイン候補と米国緑の党と連帯しつつ、より「グリーン」な世界へ変革するチャレンジを続けていきましょう。

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