ホーム > 政策集 > 節電所が切り開く未来

政策集

節電所が切り開く未来

●節電所ってなに?

 電気が足りない時には燃料を燃やして発電所を動かし、それでも足りなければ新しい発電所を立てる…そんな時代は終わりました。これからは「節電所」の時代です。欧米ではマイナスの電力という意味で「ネガワット(Negawatt)」とも呼ばれ、拡大し続けるエネルギー需要に対応するための切り札のひとつとして取り組みが進んでいます。

 「節電所」は単なる「省エネ」ではなく、電気をより効率的に使うことで社会全体の使用量を減らすための、様々な技術や制度の総称です。例えば、省エネ家電を普及させたり、建物の断熱をしてエネルギー効率を高めたり、ピーク時の電気料金を高くすることで需要を減らす制度や、電気が足りないという時に工場やビルが需要を抑える制度を作ったりと、私たちはいろいろな方法で節電所を「建設」することができます。これらの技術や制度を節電「所」と名付けるのは、決して誇張ではありません。なぜなら、電力需給が逼迫した時に停電を防ぐ方法としては、100万kWの発電と100万kWの節電には同じ価値があるからです。さらに言えば、国内の節電によって1000万バレルの石油が節約できれば、それだけの油田を掘り当てたのと同じ価値があるのです。

発電所は建設に長い時間と巨額のお金が必要で、しかも運転中は排気ガスなどによる環境問題を発生させます。なかでも原発の巨大なリスクは福島原発事故で現実のものとなりました。それに対して節電所は、建設期間が非常に短く環境に優しく、多くの場合に金銭的なメリットをもたらしてくれます。さまざまな政策措置を通じて、この節電所を着実に「建設」し「活用」して行くことで、社会全体のエネルギー効率を高め、エネルギー消費自体を大幅に減らすことが可能なのです。

 

表1 節電所の概念

(1) 省エネと効率化

省エネ: 需要者の意識による節約で不便を伴う場合のあるもの

効率化: 設備・機器の効率改善により不便を伴わないもの

(2) 効率化の補助金

家庭や企業の省エネや効率化を支援するために、政府などが資金を提供すること

(3) 事業

包括的な省エネルギーサービスを提供し、顧客の光熱費節約分から報酬を受け取るビジネス

(4) 需要管理(DSM)

電力会社による顧客の需要抑制の試みで、エアコン等の遠隔操作、効率化のための補助金、時間帯別料金実施など様々な措置が含まれる

(5) 需要応答(デマンドレスポンス、DR)

一般的に、顧客の電力需要が価格に反応するようにすること。
日本では主に、スマートメーターの普及による時間帯別料金という意味で、米国では主に、大口需要家が発電所と類似の条件で節電分の電力を送電網に供給するという意味で、この言葉が使われる場合が多い。

 

●原発50基分!アメリカの節電所

  「節電所」には様々な方法があります。例えば、電球を白熱灯からLEDに変えることも立派な「節電所」の建設です。日本中の白熱灯や蛍光灯をLEDに換えると年間電力消費量の約9% (原発13基分)の節約となる、という試算もあります(日本エネルギー経済研究所)。また、省エネを請け負うESCO事業は既にビジネスとして成立しており、大阪府の庁舎や医療機関などの事例ではおおむね2割以上の節約が実現しています。電力が自由化されたスウェーデンなどでは、企業や家庭に「節電プラン」を提示し、その技術を導入・管理する事業が電力会社の収益の大きな部分を占めるまでに成長しています。

最近注目されている「需要応答」は、節電所の本命とも言える重要なキーワードです。需要応答には、各家庭にスマートメーターを設置して時間帯別料金制度を導入することでピークの電力需要を抑制したり、電力不足時に工場など電気を大量に使う事業者が契約に基づいて節電を行う需給調整契約などがあります。

 電力の自由化が進んでいるアメリカでは、ピーク時の需要に合わせて発電所を建設するよりも、ピークカットなど効率的なエネルギー利用を促進した方が経済的であったため、様々な種類の節電所が発達しました(表2) 。これらを合わせると、何と原発50基分もの節電所が存在していることになります(アメリカ連邦規制委員会(FERC))。これは、福島原発事故後の日本の原発と同じ数であり、エネルギー量では日本の原発50基分を超えています。

 日本でも「節電所」を導入し、大量発電・大量消費型の社会や生活から、よりスマートにエネルギーを使う社会や生活にシフトする必要があります。「節電所」こそ、次の世代の子どもたち、そしてその次の世代にまでより良い環境を残すための持続可能なエネルギー・シフトの切り札のひとつであると言えます。

 

図 米国の需要応答資源の潜在量

節電・表

 

表2 米国における節電所(需要応答)の分類

 

(1) 中断可能な負荷(Interruptible Load)

 電力需給の逼迫時に顧客の負荷を削減または遮断できる契約で、日本の需給調整契約に対応する。逼迫時に需要を減らすことに同意する契約をした需要家には割引料金や払戻しが適用される。契約の条件に従って送電線運営機関が事前予告ののちリモコン操作で負荷削減を行う例もある。

(2) 直接的負荷制御(Direct Load Control)

 電力会社が短い予告ののちリモコン操作で需要家の電気設備(エアコン、温水器等)をオフにしたり、スイッチを入れなおしたりする方式。主に家庭や小規模の店舗などに適用される。

(3) 緊急需要応答(Emergency Demand Response)

 需給逼迫時に対価を支払って需要家に負荷の引下げを促す方式。

(4) 供給設備資源としての負荷(Load as Capacity Resource)

 需給逼迫が生じた場合に備えて、一定の節電を約束した需要側資源(節電所)。

(5) 需要の入札・買い戻し(Demand Bidding and Buyback)

 電力会社が必要な節電量を競りにかけ、需要側資源(節電所)が入札に応じることによって、節電単価(円/kWh等)と個々の節電量が決定される方式。

(6) 瞬動予備力(Spinning Reserves)

 緊急的な需給逼迫が生じて数分以内に需給の不均衡の調整に役立てるよう、系統と同期している需要側資源(節電所)。

(7) 非瞬動予備力(Non-Spinning Reserves)

 緊急的な需給逼迫が生じて10分後以降に需給の不均衡の調整に役立つ需要側資源(節電所)。

(8) 制御サービス(Regulation)

 送電線運営機関からのリアルタイムの信号に応じて負荷の上げ下げを行う需要応答の一種。この場合の需要側資源(節電所)は約束の時間帯にわたり連続的に「給電」をしなければならない。

(9) その他(Other)

 他に示したもののほか、需要応答に関連する企業や電力会社の様々な料金制度や契約条件。

(10) リアルタイム価格(Real-Time Pricing)

 前日または1時間前の卸売電力価格の変化を反映させて、1時間単位(あるいはもっと頻繁に)小売価格が変化する電気料金方式。

(11) 極度ピーク時価格(Critical Peak Pricing)

 卸売電力価格が高くなったり電力需給が逼迫した時間帯に、前もって定められた高い小売料金を適用し、消費量を減らすように設計された料金制度。

(12) 制御を伴う極度ピーク時価格(Critical Peak Pricing with Control)

 極度ピーク時価格に直接的負荷制御を組み合わせたもの。

(13) ピーク時払戻し(Peak Time Rebate)

 前もって定められた日のピーク時間帯に節電をした顧客に、電気料金の払い戻しを行う。極度ピーク時価格と同様に、特に需給が逼迫した場合には非常に高い価格が設定されることがある。

(14) システムピーク応答への送電料(System Peak Response Transmission Tariff)

 スマートメーターを設置し、ピーク時の需要を抑制した需要家に対し、送電線利用料を割り引く方式。

(15) 時間帯別料金(Time-of-Use Pricing)。

 時間帯ごとに異なる価格が設定された小売料金制度。時間帯ごとの価格は契約時に定められる。

参考: FERC(2011) 2010 Assessment of Demand Response and Advanced Metering, Staff Report

ページ先頭に戻る