【見解】 持続不能なアベノミクスにNO! エコでフェアな経済にYES!

 

【見解】 持続不能なアベノミクスにNO! エコでフェアな経済にYES!

2013年6月12日 緑の党運営委員会

 アベノミクスは、円安と株高の到来によって不況脱出への期待を高めてきました。しかし、アベノミクスは、けっしてフェアでも持続可能なものでもありません。最近の株の乱高下は、その予兆と言えます。とりわけ、不安定な雇用を強いられている人びと、年金や生活保護によって命をつないでいる人びとにとってはきわめて破壊的なものです。

財政破綻とバブルは来るが、賃金が上がる保証はない

 「大胆な金融緩和」(「第1の矢」)は、これまでよりも2倍のおカネを日銀が民間金融機関に供給するという政策です。これは、実体経済を活性化する効果が疑わしいばかりか、副作用を生む危険性があります。すでに日銀は、ゼロ金利政策の下で量的金融緩和によって大量のおカネを銀行に注ぎこんできましたが、そこから先の企業や個人には回らず、不況脱出につながりませんでした。今後さらにいっそうの金融緩和を行なうと、カネあまりで不動産バブルが起こったり、円安の加速でガソリン・灯油・食料品・電力料金が値上がりすることが予想されます。こうしたことによって物価が上がっても、給料が上がる保証はありません。日銀が金融緩和策として大量の国債を購入し続けることは、政府の借金膨脹を尻拭いすることになるだけです。

 「機動的な財政出動」(「第2の矢」)は、国債を増発して八ツ場ダムや高速道路建設など大型公共事業に200兆円(10年間)を投入するという政策です。これは、自然環境を破壊し、財政赤字を膨らませ、いま異議申し立てのできない子どもや孫の世代に大きな負担を背負わせます。バブル崩壊後の90年代に100兆円を投じた公共事業投資は、一時的な景気回復の効果しかなく、国債残高だけが2.2倍になりました。国の借金が991兆円(国民1人当たり779万円)、GDPの2倍に達している現在、同じ愚行を繰り返せば、財政破綻を招きます。

 「成長戦略」(「第3の矢」)は、労働者を自由に解雇できる規制緩和やTPP参加や法人税減税などが中心です。さらに、原発の再稼動も含まれようとしています。これらの政策は、企業の投資を促進することが眼目です。しかし、ここ10年間、企業の利益が増えても、労働者の給料は下がり続けてきました。非正規雇用で働く人が急増してきたからです。「成長戦略」で企業の成長を後押しするだけでは、人間らしい働き方のできる雇用の拡大や給料の引き上げには必ずしもつながりません。

経済活性化の鍵は、非正社員で働く人の所得向上

 デフレ不況からの脱出の鍵となるのは、非正社員で働く人をはじめ労働者の給与と所得を引き上げることです。だからこそ、安倍政権も企業に賃上げを要請するという異例のパフォーマンスをとったのです。このことは、アベノミクスの本来の発想、つまり景気が回復し経済が成長すれば自ずと雇用も増え賃金も上がるという経済成長至上主義の限界や弱点を明白に示しています。現実には、業績の良い特定の企業の正社員のボーナスは増えましたが、非正社員(全体の35%)や中小企業で働く労働者(全体の70%)の賃金はほとんど改善されていません。300兆円にまで膨らんだ企業の内部留保の一部を還元させる仕組みを作れば、これらの人びとの賃金を引き上げることは十分に可能です。

 さらに、長期的には人びとを幸せにする経済の活性化のためには、いのちを優先し命を支える産業分野に公的および民間の資金を投入し、雇用を創りだすことが必要です。エコ(持続可能性)とシェア(公正)を実現する経済への転換をめざす経済戦略こそ、求められています。

 

私たちの提案

 緑の党は、次のように提案します。

  • まず非正社員で働く人びとに生活できるだけの賃金を保障するために、同一価値労働同一賃金の原則に立って非正規と正規の間の格差をなくし、時給や社会保険加入の面で均等待遇を義務づけます。
  • 最低賃金を、生存権を保障する立場から、最低でも年収200万円以上になるように時給1000円に引き上げます。最低賃金を規定する生活保護基準の切り下げを許しません。
  • 正社員で働く人びとについては、心身を破壊する働きすぎをなくすために残業の上限を法的に規制し、ワークシェアリングを進めます。
  • 労働者の権利を守る既存の法律の実効性を高めると同時に、セーフティネットの確立なしに解雇規制を緩和することを許しません。
  • 脱原発・再生可能エネルギー、農業と食、ケア(医療・介護・健康)・子育ての分野におカネを投入し事業を興こせば、10年間で400万人以上の雇用を新しく創りだすことができます。そのために、ケアや子育ての分野で働く人びとに適正な報酬と安定した雇用を保障します。
  • 円安に浮かれTPPに参加する輸出依存型の経済成長に戻るのではなく、循環型の持続可能な経済、地域内でモノ・カネ・仕事が回る経済へ向かいます。
  • 中小企業への貸し渋り・貸し剥がしをやめさせ、地域の経済や中小企業に資金が回るように地域再投資法を制定します。
  • 政府の公共事業予算を半分以下に縮小し、公共事業は災害からの復興と自然環境再生のために最小限必要なものに絞り込みます。

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