【見解】 「96条」改憲手続き制限緩和と自民党憲法素案に反対します

 

【見解】  「96条」改憲手続き制限緩和と自民党憲法素案に反対します

 

 2013年5月20日 緑の党・運営委員会

  安倍政権は、憲法の改正のための国民投票の実施の条件となる「衆参議員の3分の2以上の発議」(憲法96条)を「過半数」に緩和することを目指し、これを参院選の争点に掲げようとしています。世論の反対や批判にあって慎重な姿勢を取り始めたとはいえ、安倍首相は改憲の旗を降ろしてはいません。この問題に対する私たちの立場を明らかにします。

 私たちは、「お任せ民主主義」から脱却し、さまざまな重要課題について、市民自らが意思を表明し判断することは重要だと考えます。また、現在の日本国憲法が永遠不変のものでもなく、追加・発展・整理するべき課題があることも否定しません。

 しかし憲法は国の「最高法規」であり、「主権在民」「基本的人権の尊重」「平和主義」といった基本理念を謳い、「立憲主義」の基盤として日本の民主主義制度の枠組みを定めているものです。また、そもそも近代憲法には、政府の権力を制限し、市民の権利や自由を守るという重要な目的があります。そのため憲法には高度の安定性が求められ、その時々の議会内の多数派によってその原理や基本理念が変えられることを防ぐために、日本国憲法でも96条で改憲手続きを厳しく制限しているのです。この制限の緩和は憲法の理念と立憲主義の根幹にかかわる問題であり、認めることはできません。

 また、96条改正の先に自民党が目指している憲法草案は、近代憲法の基本性格とは全く逆に、「個人」ではなく「公共」を重視し、その「公共」を重視した憲法を守る義務を国民に課し、さらに人権の制限についても踏み込んだものとなっています。これらは、人類が長年にわたって獲得した民主主義や「現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利」(憲法97条)の否定です。さらに、「国防軍」を規定し、「集団的自衛権」も容認しており、憲法9条の改正にも重点が置かれています。先の大戦での多くの犠牲や苦難の経験から、日本ばかりでなく世界の市民の平和への願いがこめられたと言うべき9条は、国内一世代だけの議論で変えるようなものではありません。

 私たち緑の党は、憲法改正を考える前に、現行憲法の掲げる「主権在民」「基本的人権の尊重」「平和主義」の理念を積極的に実現していくことこそ、時代が必要としている改革だと考えます。これらは、「参加民主主義」「多様性・社会的公正」「非暴力」という緑の党の基本理念にも通じるものであり、私たちは96条「改正」による改憲制限の緩和と自民党憲法草案に強く反対します。

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