【論説】原発はCO2対策に貢献しない- 地球の未来を奪う石炭と原発から決別し…

 

【論説】 原発はCO2対策に貢献しない-
     地球の未来を奪う石炭と原発から決別し、持続可能な社会への転換を


2020年9月4日
緑の党グリーンズジャパン運営委員会

  北海道電力は「低炭素社会実現と電気料金の低廉化の両立」に向けて、「経営ビジョン2030」(4月)や株主総会(6月)において、泊原発(全3基)の全基稼働を打ち出しました。同電力に限らず、全国の大手電力会社(沖縄電力を除く)、そして原発推進派からもいまだに同様の主張が繰り返されています。
  しかし、原発が低炭素社会の実現に役立たないこと、コスト面での優位性も無いということは、すでに明らかです。

CO2削減にも逆行する原子力発電
  原発は、定期点検や事故時の長期間停止に対応したバックアップが必要となる上、細かい出力調整が困難なため、電力需要に合わせた調整を火力発電など他の発電方法に頼らざるを得ないという構造的問題を抱えています。実際に、これまでの電力供給量を見れば、原発の発電量に伴って火力なども増大し、結果的にCO2排出量も増大しています。
  また、日本のCO2排出量の推移を見れば、原発がCO2排出に寄与するなどという主張が完全な誤りであることが明確に示されます。日本は「3.11」まで原発を増やしてきましたが、その間、リーマンショックの時期を除き、CO2排出量はほとんど減りませんでした。逆に、「3.11」後の2013年から2016年まで原発が稼働を止めてきた間こそ、CO2の排出が減ってきたのです(※1)。 社会がエネルギー消費のあり方を見直し、再生可能エネルギーの拡大を図ってきた結果であり、原発のない社会の実現可能性を示しています。
  IPCC 第五次評価報告書でも「原子力エネルギーは低炭素エネルギー供給への貢献を増加し得る」としつつも、「各種の障壁とリスク」を指摘(※2,3)するとともに、原発を除いた場合のコスト上昇はわずかだとしています(※4)。

非現実的な原発総コスト
  原発は再生可能エネルギーなどの発電方法と比較してコスト面で有利であると主張されてきました。確かに、経産省の試算によれば、95年当時で原発のコストが9円に対し、風力で24円、太陽光で105円と大きな差がありました。しかし、2015年の同省の試算によれば2030年時点での推計として原発が10.3円、太陽光は13円~16円とかなり近接しています(※5)。
  また、ここで示される原発のコストは、①試算当時の2015年以降も原発の規制強化により膨らみ続ける安全対策費用 ②使用済み核燃料の再処理に要するコスト(少なくとも20兆円近く) ③東京電力福島第一原発事故の深刻な被害 などが十分考慮されていません。
  国際的な調査でも、2010年には原子力より割高だった太陽光や風力のコストは、すでに逆転し、2019年には原発の26%程度にまで下がっています(※6)。コストの面からも、どちらに未来があるかは明らかです。

「非化石」を口実に原発を免罪
  今年度から、CO2を排出しない電力の環境価値を取引する「非化石証書」に、大型水力や原発などを加える制度が始まっています。環境や人々の生活に取り返しのつかない深刻な影響を及ぼし、持続不可能で廃棄物処理のめども立たない巨大プラントである原発を「非化石燃料」として分散型・自然エネルギーと同列の扱いとすることは、許されません。気候変動対策に乗じた原発の維持・推進に、私たちは強く抗議します。

  私たち緑の党は、深刻さが一層増している気候危機を前に、市民のみなさんや他の立憲野党と共に議論・協力しながら、再エネ100%の実現、社会や経済のあり方の転換に向けてあらゆる政策資源を投入すべく、活動を進めていきます。


※註
1) 日本の二酸化炭素排出量の推移 (1990-2018年度) 
 https://www.jccca.org/chart/chart04_03.html
2) 自然エネルギー財団資料HP記事 「IPCC最新報告書における原子力発電の位置づけ(明日香壽川)」 :
 https://www.renewable-ei.org/column/column_20140522.php
3) IPCC5 次評価報告書 第 3 作業部会報告書 「政策決定者向け要約」(環境省翻訳):
 http://www.env.go.jp/earth/ipcc/5th_pdf/ipcc_5th_report_wg3.pdf
4) 上記部会報告書 「技術的要約」(英文原文):
 https://www.ipcc.ch/site/assets/uploads/2018/02/ipcc_wg3_ar5_technical-summary.pdf
 注:2)の記事では当該記述がこの「技術的要約」の「p47」にあるとしているが、正しくは「p70」にある。
5) 経済産業省「発電コスト検証ワーキンググループ」の「長期エネルギー需給見通し小委員会に対する発電コスト等の検証に関する報告」(2015年5月): https://www.enecho.meti.go.jp/committee/council/basic_policy_subcommittee/mitoshi/cost_wg/pdf/cost_wg_01.pdf
6) 国際的な金融投資期間「LAZARD」が分析した各発電コストに関する資料: 
 https://www.lazard.com/media/451086/lazards-levelized-cost-of-energy-version-130-vf.pdf (p8のグラフを参照)

 

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