【声明】日本政府の温室効果ガス削減目標の据え置きのままの提出に強く抗議します!

 

【声明】
 日本政府の温室効果ガス削減目標の据え置きのままの提出に強く抗議します!
 -COP26までに数値目標を引き上げて再提出すべき-

 

2020年4月2日
緑の党グリーンズジャパン運営委員会

  日本政府は、コロナウイルス感染症の拡大による社会の混乱に乗じる形で、3月30日、2020年以降の温室効果ガス排出削減の国別目標(NDC)を、現状の「2030年度に26%削減(2013年度比)」のまま国連に提出することを決定しました。

  国連は「2030年に温室効果ガスの45%削減(1990年比)」を呼びかけ、各国にこれまで以上の数値目標の引き上げを求めてきました。しかし今回の日本政府の決定は、昨年のCOP25で国際批判を受けた「現状据え置き」を見直すことなく、再びそのまま居直るものです。このような対応は、国際社会における日本の信頼をさらに失墜させるだけでなく、気候危機に立ち向かう国際協調の枠組みそのものを崩しかねない無責任な行為です。

  そもそも、日本政府の掲げている「26%削減(2013年比)」という値は、国連の掲げる目標の基準年となっている1990年比で見ればわずか18%でしかありません。また、政府は今回の提出文書で「2014年以来4年連続で削減」「合計で8%を超える削減」「世界の温室効果ガス削減に貢献」などとする「実績」を恥ずかしげも無く主張していますが、この20年間ほどで最大の排出量となった2013年を基準とした削減実績や目標は欺瞞的なものでしかありません(※1)。

  さらに、今回の文書では「(今後)更なる野心的な削減努力を反映した意欲的な数値を目指し、次回のパリ協定上の 5 年ごとの提出期限を待つことなく実施」「イノベーションの実現」などとしていますが、これらは根拠も具体性もない言い訳と空約束に過ぎません。日本政府が「野心的」「意欲的」な行動を取ってこなかったことは、国際社会からの批判にもかかわらず石炭火力を強引に推進し、目標値の据え置きを重ねてきたこれまでの対応で明らかです。

  2020年中のNDC目標の強化・提出を予定する国は、108カ国に増えています。EUも排出削減目標を「40%削減」から「55%削減」へと引き上げ、スイスは2030年に50%削減、ノルウェーも2030年に40%削減のNDCを表明しています。日本の不十分なNDCは、積極的な取り組みを重ねている国際社会、そして温暖化や海面上昇の深刻な危機に直面している途上国や島しょ国と世界の市民に対する重大な裏切りです。

  現在各国が提出している2030年までの削減目標を足し合わせても、2100年までに約3度も気温が上昇すると予測されています。気温上昇が不可逆的な危機への転換点となる「2℃」を避け、「1.5℃」を死守するために、人間活動におけるCO2排出が可能と見積もられる「炭素予算」はあと8年分しかありません。排出量世界第5位の日本は、相応の責任を果たさなければなりません。

  私たち緑の党は、日本政府に対して、今回のNDCを直ちに撤回し、自治体や市民の広い議論と参画のもと、国際社会と未来世代の期待に応えうる積極的・画期的な削減目標と計画の策定・実現を強く求めます。

 

※註 1) 2013年に最大の排出量を記録したのは、2009年のリーマンショックからの回復や2011年の東日本大震災に伴う原発停止と化石燃料発電の増加によるものとされている。ただし、その後の原発再稼働が劇的に進んでいないにもかかわらず、「3.11」以前のレベルまで排出削減が実現できていることは、原発が温暖化対策に有利であることを証明するものではなく、むしろ原発が再エネや省エネの拡大を阻んできたことを逆説的に証明するものと言える。

 

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