【声明】東京高検検事長の勤務延長と検察官法「改正」の撤回を!

 

【声明】東京高検検事長の勤務延長と検察官法「改正」の撤回を!
    -法の支配と民主主義の危機にあたって-

 

2020年3月28日
緑の党グリーンズジャパン運営委員会

  内閣は、2月7日、同月に63歳となる東京高等検察庁検事長・黒川弘務氏について、同年8月7日まで勤務延長するとの人事を発令しました。これは、政権と近いとされる黒川氏が定年で退官する前にその定年を延長させ、現検事総長退任後にそのポストに就任させる意向によるものだと言われています。
  この延長の法的根拠について、安倍首相は国家公務員法に基づき閣議決定したと答弁しました。しかし、検察官の定年については、検察庁法で「検事総長は、年齢が65年に達した時に、その他の検察官は年齢が63年に達した時に退官する。」と定められています(同法22条)。そして政府は、1981年4月、検察官については検察官法があるので国家公務員法は適用されないと答弁しています。
  検察庁法22条が国家公務員法の特例を定めたのは、国家公務員の中でも検察官の職務が、政治的勢力からの圧力・干渉を排除することが求められることによります。このような検察庁法という特別法が存在するにもかかわらず、敢えて一般法である国家公務員法を適用することは解釈上、きわめて無理があり、これまで確立された政府見解にも反します。
  しかも、人事院給与局長は今年2月12日の衆議院予算委員会において「現在まで特に議論はなく、(国家公務員法の)解釈は引き継いでいる」旨を答弁しました。その後の答弁変更は不自然きわまりなく、この2月12日の答弁こそ、本来の政府見解というべきです。さらに、解釈変更の経緯を示す文書について、森法務大臣は、2月25日の同委員会分科会において、「口頭の決裁もあれば、書面の決裁もある」と不合理な答弁を行っています。仮にこのように重大な解釈変更を書面に残さないのであれば、それ自体が民主主義への冒涜です。
  さらに、政府が国会に提出した検察官法「改正」案では、63歳以上は高検検事長や地検検事正といった要職に就けないとしつつ、政府が判断すれば特別にそのポストにとどまれる、とする規定を新たに盛り込みました。このような曖昧な要件では、政権の意にかなった検察官が定年を延長されることになってしまいます。
  法の支配を踏みにじる不合理で恣意的な解釈変更や法改正を許せば、国会で定めた法律の安定性を覆して、これまで確立されてきた検察の独立性を揺るがし、司法権への政治的な介入を許すことになります。これまでも安倍政権は、「内閣人事局」を置くことによって官僚の人事権を握り、さらに内閣法制局人事にまで政治介入し、集団的自衛権容認・解釈改憲を強行し、政権の思惑に官僚を忖度させ、これを基礎にして強引な政権運営を続けてきました。今回の定年延長問題は、こうした積み重ねの上に、三権分立という憲法の基本原理も形骸化させることによって、民主主義・立憲主義の最も大切な基礎を破壊するものだと言えます。

  黒川氏の検事総長就任がまだ最終的に確定したわけではありません。私たちは、違法な解釈変更、定年延長を直ちに取り消し、法の支配を覆す検察官法「改正」を撤回するよう、民主主義を守ろうとするすべての政党・市民とともに、強く働きかけていきます。

 

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