【見解】原子力損害賠償法の改正先送りを受けて

【見解】 原子力損害賠償法の改正先送りを受け、
      「集団無責任体制」と原子力からの脱却をあらためて訴える

2012年9月4日 緑の党運営委員会

  さる8月21日、政府・民主党は1961年制定の原子力損害賠償法(以下、原賠法)の改正先送りを決定しました。同法は第16条で国会の議決により「必要な援助」を行うことができると定めていますが、この規定は「国が賠償を肩代わりしてくれる」との甘い認識を電力会社に与えました。電力会社は、わずか1200億円を賠償するための保険加入が義務付けられているに過ぎません。また、現行の法制度ではメーカーに製造物責任を取らせず、その結果メーカーを安易な原発推進に走らせてきました。
一方で、政府には、これまで率先して原発推進の政策を遂行してきたという点で、電力会社やメーカーよりも大きな責任があります。それにもかかわらず、政府は福島第一原発事故の反省なく未だに原発の再稼働を進めようとし、また同事故によって生じた多大な被害にも真摯に向き合おうとしていません。現在の賠償体制は、東京電力の存続を前提とした上で、東京電力の資産のみで十分賠償できない分については、政府が自ら賠償するのではなく、東京電力に援助するといういびつな形を取っています。
  守られるべきは電力会社ではなく被害者であり、賠償にあたっては、決して東京電力の存続にこだわるべきではありません。その上で、東京電力の資産によって償えない被害は、「援助」ではなく、政府が自らの責任によって賠償すべきです。
  また、福島第一原発事故のような事態を防ぐためには、そもそも原子力から脱却することが必要です。本来であれば電力会社に対し、全損害を賠償するための保険加入を義務付けるべきですが、そのような巨額の補償に応じうる保険会社は存在しません。そのような、民間の保険会社がリスクを取りえないような危険な施設を、政府が推進すべきではそもそもなかったのです。電力会社が十分な賠償の準備をしないことを許容し、メーカーを免責する原賠法は、安全神話と無責任体制の産物であり、現実に福島で起こった事態に適切に対応することを不可能としています。そのような、自らの債権回収に固執して貸し手責任を取らない銀行も含めた集団無責任体制の下、再び事故が起こっても、誰も責任を取ることができません。
  緑の党は、東京電力が自らの資産によって全ての被害者に償うこと、東京電力によって償えない損害は政府が自らの責任において賠償すること、そして二度とこのような被害を出さないため原子力から直ちに脱却することを改めて求めます。