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【論説】「北方領土」問題-ナショナリズムを超えた議論を アイヌ民族の権利実現と…

2018/09/28

*この「論説」のアイヌ語訳版ページ⇒http://greens.gr.jp/seimei/24051/

【論説】「北方領土」問題-ナショナリズムを超えた議論を
   アイヌ民族の権利実現とともに、この地域を平和共存と民族共生のモデルに

2018年9月27日
緑の党グリーンズジャパン運営委員会

 

 9月12日、日ロ首脳会談が行われました。この会談でロシアのプーチン大統領が「あらゆる前提条件をつけず、年末までに平和条約を結ぼう」「争いのある問題はそのあとで条約をふまえて解決しよう」と述べましたが、安倍首相はノー・コメントでした。これに対し、野党各党は、安倍首相の対応が「北方領土」の現状追認・固定化につながり、日本の主権を譲り渡すという点で「弱腰外交」だと批判しています。

 言うまでもなく、ロシアの「北方領土」領有に歴史的正当性はありません。ロシアの領有を前提とし、経済的利益を優先するプーチン大統領の提案は、他の領土問題で取ってきたロシアの姿勢から考えても、信頼できるものではありません。

 しかし、「条約締結後に領土問題を解決」という考え方自体は、平和条約締結後に歯舞・色丹の2島の引き渡しを明記した日ソ共同宣言(1956年)でも明確に謳われ、当時双方が受け入れた方針です(※1)。プーチン大統領のご都合主義的な提案を支持できないことも言うまでもありませんが、この合意を棚上げにし、かつ後述する「重要な当事者」の存在を抜きにして「領土問題の解決なくして平和条約の締結無し」のみを主張する国内与野党の立場は、ナショナリズムに基づいたものだと言わざるを得ません。

 私たち緑の党は、2013年参院選においてアイヌ民族の出身者である島崎なおみさんを比例候補として擁立しました。その立場からも、国内外で交わされるナショナリズム的な議論で見逃されている重要かつ本質的な問題を指摘しなければなりません。

 そもそも「北方領土」とされる地域はアイヌの土地でした。例えば択捉島には314のアイヌ語地名が記されています。四島の島名もすべてアイヌ語であり、古来、アイヌ民族が住んでいた地域です。それにもかかわらず、日本がとりわけ明治時代、アイヌ民族の権利を徹底的に踏みにじってきたことを忘れてはなりません。北海道開拓の過程では、多くのアイヌの人々が生活基盤を奪われ、また学校教育などを通じて言語や文化も奪われていきました。日本が「北方領土」を自国の領土と主張したのは、この地域を「支配」していたことを理由にしていますが、その「支配」こそ、アイヌ民族への差別・抑圧の結果そのものでした。アイヌ民族の権利やその抑圧の歴史を度外視して「日本固有の領土」と主張しても、正当性はありません。2011年2月の「世界先住民族ネットワークAINU」の声明(※2)では、「ロシアと日本のやり取りはアイヌ民族から見れば泥棒同士の権利争い」と断言しています。「自国の領土」として実効支配を強めるロシアと、「固有の領土」論を繰り返して抗議・遺憾表明を繰り返す日本政府や与野党の思考や議論には、北方諸島の主権者たる先住民族アイヌ(樺太アイヌのエンチユを含む)の存在が欠落しているのです。

 2012年、国連の社会権規約委員会は日本政府に対し、次の勧告を行っています。「30.委員会は、アイヌ民族が先住民族として認められ、かつその他の進展が達成されたにも関わらず、経済的、社会的および文化的権利の享受に関してアイヌ民族が不利な立場に置かれたままであることを依然として懸念する。委員会は、アイヌ語が消滅の危機にあることをとりわけ懸念する。」(第15条、第2条第2項)

 日本政府は、速やかにこの委員会の勧告を受け入れ、アイヌ民族の歴史的権利を確立し、自己決定権、言語権、自然資源利用権など、アイヌ民族が本来持っていたすべての権利を保障すべきです。それとともに、「北方領土」に関する交渉においても、アイヌ民族の代表を交渉当事者として加え、その意見を踏まえた合意を模索する必要があります。

 もちろん、「北方領土」に今現に住むロシアの人々、かつて住んでいた日本の市民の権利や存在も尊重されねばなりません。また、この地域の「領有」「管理」がどのような形になるにせよ、敵対的な基地や兵器が設置されない平和な地域であることが関係者によって保証され、かつそれが国際的にも明らかにされる必要があります。さらに、この地域の豊かな漁業資源などを、日本とロシアだけでなく、アイヌ民族も参加して共同で保全していく発想と枠組みも必須です。私たち緑の党は、「北方領土」問題の解決にあたってアイヌ民族の権利実現を求めるとともに、この美しい北の島々を、全ての関係者や当事者の参画による平和共存と民族共生のモデルにすべきだと考えます。

 

※註
1)ただし、1973年の「日ソ共同声明」
http://www8.cao.go.jp/hoppo/shiryou/pdf/gaikou23.pdf)では、「双方は、第2次大戦の時からの未解決の諸問題を解決して平和条約を締結することが 両国間の真の善隣友好関係の確立に寄与することを認識」するとしている。

2)「世界先住民族ネットワークAINU」の声明(2011年2月)
http://greens.gr.jp/uploads/2018/09/20110207_AINU_sengen.pdf

 

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