【論説】長時間労働を容認する「働き方改革」法案の撤回を求めます

        【論説】長時間労働を容認する「働き方改革」法案の撤回を求めます

 

                                                   2018年 5月24日
                                      緑の党グリーンズジャパン運営委員会

  現在、国会では「働き方改革」関連法案が審議されています。この法案の中心柱は長時間労働を規制することですが、そこには残業の上限規制に大きな抜け穴があり、逆に規制を緩め働き過ぎを助長する高度プロフェッショナル制度(高プロ)創設も含まれています。
多くの疑問や批判にもかかわらず、安倍政権はこの法案の早期成立を図ろうとしています。
 私たち緑の党グリーンズジャパンは、この法案の撤回を求めます。

  日本は、先進国のなかでも際立った長時間労働の社会です。平日1日当たり11時間以上働く労働者、つまり1日3時間以上の残業(時間外労働)をするフルタイムの労働者は、男性で約3割、女性で約1割もいます。残業がもたらす長時間労働は、多くの働く人びとの心身を破壊し、痛ましい過労死・過労自殺を生んでいます。働き過ぎによって脳・心臓疾患を患った人は年795人、うつ病に罹った人は年1591人(2015年度、労災申請件数)もいます。過労死・過労自殺した人は、申請件数で年約500人、認定件数だけでも年200人に上っています。また、長時間労働の慣習は、女性に家事・育児の負担を押しつけて性別役割分業を固定化し、ワークライフバランスの実現を妨げる原因となっています。
 日本では、残業時間の上限が法的に定められていないため、労使間の協定さえあれば残業は無制限に許容される野放し状態が続いてきました。長時間労働をなくすためには、まず残業時間の上限を罰則付きで定める法的規制が必要不可欠です。
 今回の法案には、残業の上限規制が初めて盛り込まれました。しかし、その内容は、原則として残業の上限を年360時間、月45時間としながら、特例として年間720時間、繁忙時には月100時間未満の残業を容認しています。残業が月80時間を超えると過労死の危険性が一挙に高まることが実証されています。にもかかわらず、月100時間までの残業を容認したことは、死ぬまで働かせてもよいとすることに他なりません。
 また、この法案では長時間労働の是正に不可欠な勤務間インターバル(前日の終業時刻と翌日の始業時刻の間に一定の休息時間を確保する)の規制が企業側の義務とされず、単なる努力義務にとどまっています。
 私たちは、年間総労働時間1300時間をめざす立場から、残業を少なくとも月45時間以下に制限し、労働者1人当たりの業務量を減らしていって将来的に残業ゼロに向かうべきだと考えます。また、勤務間インターバルの義務付けが必要だと考えます。

  さらに、今回の法案は、長時間労働の規制に逆行し、特定の仕事をする労働者には労働時間の規制を外してしまう項目が入っています。裁量労働制を営業職にまで拡大適用する項目は削除されましたが、高プロ制度が導入されています。これは、金融商品の開発やコンサルタントなど5種類の専門的業務に従事し、年収1075万円以上の人たちを労働時間の規制対象から除外するというものです。政府は、「時間ではなく成果で評価される働き方を労働者が自ら選択できる」(安倍首相)と自賛していますが、残業代も深夜労働手当もなくどれだけ働かせても違法にはなりません。
 働き過ぎを防ぐために、政府は、適用には労働者本人の同意が必要、健康確保のために年104日以上の休日付与が入っている、と説明しています。しかし、立場の弱い労働者が会社側の提案を拒むことは困難ですし、4週間のうち4日休ませれば24日を24時間働かせても許されます。さらに、適用対象は全体の4%弱の労働者に限られていますが、経団連は年収400万円以上の一般の労働者にまで拡大適用することを提言していますから、省令によって適用対象が拡大される恐れがあります。
 残業の上限規制と並べて、労働時間の規制を外し働き過ぎを助長する項目を入れることは、長時間労働の規制という法案の主たる目的を台なしにすることです。高プロ制度の創設を絶対に認めることはできません。

 23日の衆議院厚生労働委員会では、データや資料が間違っているのに委員会を強行する委員長に対し、野党が解任を求め、国会の外でも過労死遺族の方々が詰めかけて座り込みが行われるなど、この法案への強い抵抗が表明されていました。
 私たちは、より少なく働き、より豊かに生きる社会をめざす立場から、多くの働く人たちや過労死家族の会をはじめ当事者の声を反映した長時間労働の規制法案の作成と成立をめざします。

 

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