【声明】南北首脳会談を受けて

【声明】南北首脳会談を受けて

 2018年4月28日
緑の党グリーンズジャパン運営委員会

 

 昨日(4月27日)、韓国の文在寅大統領と北朝鮮の金正恩委員長は、朝鮮半島の完全な非核化の実現を謳う「板門店宣言」に署名し、休戦状態にある朝鮮戦争の終結、南北首脳会談の定例化等を含む画期的・歴史的な合意を発表しました。

 双方にどのような思惑があるにせよ、北朝鮮が開発してきた核兵器・技術の具体的な廃棄プロセスが明記されていないにせよ、あるいは両国内にさまざまな懸念や課題があるにせよ、両国間の平和は東アジアの安定にとって戦争よりもはるかに望ましいものであり、これを歓迎する両国市民の想いに私たちも共感します。

 また、この実現に向けて積極的に動いた文政権の成立が、公正な政治と平和を求める韓国市民の動きによって支えられたものであったことは、平和構築における市民の役割の意義とその大きさを私たちにあらためて示しています。今回の宣言でも明記された「各界各層の多方面的な協力と交流、往来と接触の活性化」が進展し、両国首脳の意図や思惑をも超えて、平和へのプロセスが不可逆的な形で一層進むことを期待します。

 一方、「圧力あるのみ」と叫び続け、「国を取り巻く安全保障環境の悪化」を口実に安保法制を制定し、「9条改憲」の必要性を訴え、今回の南北合意に至る動きが進む中でも「『微笑み外交』に目を奪われるな」などと頑なな態度をとり続けてきた安倍政権は、東アジアの平和プロセスから取り残されています。安倍政権は「拉致問題の解決なしに国交正常化なし」との主張を繰り返して来ましたが、まず日朝国交正常化こそが必要であり、その上でこそ、両国間のさまざまな課題とともに、包括的な議論や交渉と、それによる拉致問題の解決が可能になるのです(※1)。それは、今回南北両国間で重ねられた対話が北朝鮮の核実験の中止や実験場の廃棄の表明へとつながった経緯を見ても明らかです。また、韓国や中国なども含むこの地域の平和と安定に向けた国際的な枠組みの中での対話や議論こそが、解決をより具体的・現実的なものにします(※2)。日本政府の対応は、こうした方向とは逆を向いていると言わなければなりません。

 日本政府には、これまでの対応を見直し、自ら率先して日朝国交正常化交渉を再開し、両国間の諸課題を解決する姿勢を明確に示すとともに、北東アジアにおける平和構築のプロセスへのイニシアチブを積極的に発揮することが求められます。一方で、そのような姿勢と資質の欠如した安倍政権にその役割を担うことは期待できず、この政権と日本の政治のあり方を変えることこそが問題解決の第一歩だと言わなければなりません。私たち日本の市民には、日本の主権者として、またこの地域の平和構築の重要な当事者の一人として、そのための努力が求められています。

 

  • ※註:以下いずれも敬和学園大学(新潟)非常勤講師の江口昌樹氏(緑の党会員、昨年11月逝去)著「拉致問題を越えて-平和的解決への提言」からの引用・編集。
    1)日朝間には『拉致問題』以外にも植民地支配の清算・戦後賠償問題や在日朝鮮人への差別などさまざまな懸案があり、それらを置き去りにすることはできない。したがってその解決のためには日朝国交正常化が必要条件となる。
    2)「拉致問題」は日本人ばかりではく、国連人権委員会が認めている北朝鮮による人権侵害のひとつ。拉致の最大の被害国は韓国。したがって、現実問題として日本人拉致問題の解決だけを先行させることはできず、包括的なアプローチが必要。
  • ※なお、この談話の作成にあたっては、上記で紹介した江口さんが生前関わっていた「日朝友好新潟県連絡会」が4月27日付で公表した声明を参考にさせていただきました。同声明においても江口氏の指摘が反映されています。

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