【論説】国と東電は二度と悲劇を繰り返さず、被害者に最大限の償いを

【論説】国と東電は二度と悲劇を繰り返さず、被害者に最大限の償いを
    -原発を巡る一連の裁判の判決・決定について

 2018年3月30日
緑の党グリーンズジャパン運営委員会

 

 現在、東京電力福島第一原発事故による被害の賠償を求める集団訴訟が、全国で30件あまり係属しており,その原告数は1万2000人を超えています。今月(3月)に入り、これらのうち5つの裁判で相次いで判決や決定が言い渡されました。この判決・決定について私たちの見解を示します。

 ■3つの判決で国または東電の責任を認定

 これらのうち、国を被告とした京都地裁判決(15日)と東京地裁判決(16日)は、福島第一原発施設の敷地高さを超える津波の襲来について国の予見可能性を認め、国が東京電力に対して非常用電源設備の安全確保対策の実施を命じていれば原発事故は回避可能であったと認定し、その責任を認めました。また、東京電力についても、福島地裁いわき支部判決(22日)も含めたこれら3つの判決で、同様に原発事故の予見可能性と結果回避可能性を認め、安全確保対策を怠ったことには大きな過失があるとし、その過失を考慮要素として事故の被害の賠償額を算定しました。

 ■函館地裁判決は大間原発の安全性を認めていない

 一方、建設中の原発への初めての司法判断となった大間原発差止訴訟の函館地裁判決(19日)は、住民側の請求を棄却したものの、原子力規制委員会による審査の長期化により大間原発の建設のめどが立っていないことを危険が具体化していない最大の理由とし、原発の安全性については直接の判断を避けています。また、同判決は、規制委員会が被告電源開発の説明に疑問を投げかけ、その根拠となる資料の不足等と、今後の審査にどの程度の期間を要するかすら明らかでないことを指摘しています。規制委員会は、この指摘が意味するところを真摯に受け止めて、科学的事実を多角的に検討し、慎重の上にも慎重な判断を行うべきです。

 ■強引な佐賀地裁決定

 玄海原発差止仮処分についての佐賀地裁決定(20日)は、我が国を代表する地震学者である島崎邦彦氏が名古屋高裁金沢支部で証言した内容を、強引に捻じ曲げた解釈(※1)を加えています。また、その決定理由では、他の決定においては原発を差し止めるか、少なくとも審査が不合理な理由として指摘する火山予測の困難性を認めながら、火山対策が合理的であると強弁しています。さらに、「破局的噴火を自然災害として想定すべきだとする立法政策はとられていない」と述べ、原子力規制委員会設置法(以下「設置法」)第1条において福島原発事故の教訓を明記されていることも、多数の火山学者の見解も無視した許し難い姿勢を取っています。しかし逆に言えば、こうした強引な曲解と具体的安全性の判断回避なしに住民の訴えを退けられないということを示しています。
 また、こうした判断は、原発への規制が、設置法の要請に沿っていないことにも起因していると言えます。今回同時に公表した原発ゼロ法案に関する声明(※2)でも述べているように、ゼロ法における規制の強化は、このような司法判断を許さないことにもつながります。

 ■被害の救済と原発の廃止・再生可能エネルギーの拡大を

 東京電力と国は、全ての被害者に十分な補償をすべきであり、特に国は、応急仮設住宅と民間借り上げ住宅の無償提供の今年3月末での打ち切りを速やかに撤回すべきです。また、原子力損害賠償紛争審査会は、諸判決をより前進させた賠償基準を示す必要があります。
 一方、東京電力は、原子力損害賠償紛争解決センター(以下原紛センター)が提示した和解案を相次いで拒否しています。私たちは、東京電力に対し、そのような傲慢な振る舞いをやめること、国に対しては、原紛センターの和解案に法的拘束力を持たせるような法改正を求めます。
 そして、二度とこのような被害が出ないよう、国はすべての原発の運転を止めさせ、再稼働のための安全対策にかける予算や資金を、廃炉や再生可能エネルギーの拡大と原発立地地域の経済再生などに充てるべきです。

 私たち緑の党グリーンズジャパンは、今後も、東京電力福島第一原発事故の被害を受けた方々を支援し、その救済を求め、原発の速やかな廃止と再生可能エネルギーへの転換に全力を挙げていきます。

 ※註
1:島崎邦彦氏は名古屋高裁金沢支部において、(1)入倉・三宅式それ自体が科学的に誤っているわけではないが、(2)地震前に知られていた情報を基に地震動を予測した場合、他の式と比較して地震動が過小評価になると証言した。ところが佐賀地裁決定は、(1)の証言を理由に、(2)の指摘まで事実上撤回されている、と判示してしまった。
2:https://greens.gr.jp/seimei/22480/

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