【談話】戦後72年を迎えて

【談話】戦後72年を迎えて

2017年8月15日

緑の党グリーンズジャパン共同代表
中山  均      
長谷川 羽衣子  
長谷川 平和    
松本 なみほ   .

   本日、先の世界大戦が日本の敗戦によって公式に終結して72年を迎えました。戦争期間中だけでなく、その前後も含め、犠牲となった全ての方々に哀悼の意を表し、傷ついた人びとやそのご家族に対し、あらためて心よりお見舞い申し上げます。

   しかし、今もなお、世界中で貧困と格差が広がる中、テロや紛争が頻発し、混乱の中で、子どもたちを含む多くの人びとが犠牲となっています。また、アメリカで誕生したトランプ政権をはじめ、他者に対する敵意や不安を煽る右翼・排外主義的な政治勢力が台頭し、世界情勢を混乱させています。

  東アジアも危機的な状況にあります。北朝鮮は核兵器の開発やミサイル発射を繰り返し、アメリカのトランプ政権との間で互いに激しい非難や挑発の応酬を重ねています。両国は、自制を求める各国の要求を無視し、軍事的緊張を高め、日本もこの緊張を口実にミサイル防衛体制の強化を図っています。こうしたエスカレーションは、軍事衝突に至るリスクを高めることにつながります。全ての当事者は、そのような行動を自制し、外交や交渉によって問題解決に向けて努力を重ねなければなりません。

   また、韓国で誕生した文政権は、政治・経済面では日本と協調しつつ、「慰安婦」合意の検証も打ち出しています。日本政府は、朝鮮半島の分断が日本による侵略戦争・植民地支配の負の遺産でもあることを自覚し、北朝鮮・韓国をはじめ周辺諸国との誠実な相互理解を深めるとともに、侵略戦争の犠牲者に対する真の賠償や補償を通して「戦後問題」の解決を図らなければなりません。

   核兵器問題をめぐっては、今年、大きな動きがありました。被爆した生存者が高齢化する中、被爆者や被爆地をはじめ、世界中の市民の努力によって、国連加盟国の約3分の2の賛成により、核兵器禁止条約が締結されました。しかし、核保有国や日本政府は署名を拒否しました。被爆国でありながら被爆者・被曝地の願いに背を向ける日本政府に対し、広島・長崎両市長はそれぞれ今年の平和宣言において明確に批判しています。私たちは、日本政府を非難するとともに、核保有国や日本をはじめ、全ての未加入国が一刻も早く加入し、核兵器廃絶を早急に実現するよう求めます。

   侵略戦争の反省とあまたの戦禍の経験から手にした日本国憲法の理念は、この間、安倍政権による集団的自衛権をめぐる解釈改憲や安保法制によって、傷つけられ続けています。内閣支持率の低下の中で一時的に小康状態にあるとはいえ、安部政権は改憲を明言しており、戦争への危険はいっそう増しています。南スーダンPKOに派遣された自衛隊の「日報」には、戦闘の生々しい実情が記録されていました。戦争に日本が巻き込まれ、直接踏み出していく事態が現実のものとなろうとしています。しかも、その「日報」の隠蔽やその後の政府対応を見れば、市民や国会さえ知らないところで、日本社会が自覚の無いまま、深刻な戦争状態に踏み込んでいく危険性を明確に示しています。

  これまで、そして今日これからも、戦争の悲惨さに思いを馳せ、先人たちの努力を引き継ごうとするさまざまな営みが各地で行なわれています。被爆者・被爆地、そして沖縄の人びとの取り組みをはじめ、困難な状況の中でも、これまで積み重ねられてきた国内外の先人たち、今も声を出し続けている人々の努力に、私たちは希望を見い出します。ヨーロッパで台頭する右翼勢力に対し、緑の党の仲間たちが各地で市民や他の政治勢力と連携しながら対抗し、一定の成功を収めていることも、私たちを勇気づけてくれています。

   私たち緑の党は、「地球ひとつぶ」の中で広がる豊かな自然、地域や世界中の人々とのつながりの中で、分かち合い、支え合う公正で持続可能な社会、平和で心豊かに生きることのできる社会の実現をめざし、地域と世界中の仲間たちとともに、行動を続けることをあらためて決意します。

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