【論説】修整しても、罪刑法定主義を破壊し、言論の自由を脅かす本質は変わらない

      【論説】修整しても、罪刑法定主義を破壊し、言論の自由を脅かす本質は
       変わらない ―共謀罪の速やかな廃案を!―

                  2017年5月10日

緑の党グリーンズジャパン運営委員会

 

 国政野党だけでなく、多くの市民団体・文化人・法学者などが反対する「共謀罪」が盛り込まれた「組織犯罪処罰法改正案」が来週にも衆院で強行採決される可能性が強まっています。私たちは、市民の自由な活動や人権を制約する「共謀罪」の創設に強く反対します。ここでは、その問題点を法的側面からもあらためて明確に論じておきたいと思います。

  私たち緑の党グリーンズジャパンは、その前身である「みどりのテーブル」時代の2005年、共謀罪の問題点「どうなる、どうする、共謀罪」をまとめました(※1)。

 当時の論考においては、まず一点目として、犯罪の実行行為がなくても、共謀・話し合いだけで処罰されるおそれがあり、思想でなく行為を処罰するという近代刑法の大原則に反すること、次に、行為がなくとも共謀で処罰されるのであれば、何が処罰されるべき行為かが明確にならないことから、罪刑法定主義、何が犯罪なのかを法律で定めるという憲法の基本原則に反することなどを指摘しました。

  それから11年以上を経て、国会で様々な議論を経てきたにもかかわらず、今国会で提出された法案においても、そうした問題点は何ら改善されていません。

 まず、犯罪主体を「組織的犯罪集団」としていますが、いったいどのような集団がこれにあたるかの定義はなされていません。「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律」などを見ると、「暴力団」について「その団体の構成員…が集団的に又は常習的に暴力的不法行為等を行うことを助長するおそれがある団体」と定義されていますが、今回の法案ではそのような定義もなく、政府の答弁においても、通常の市民団体などでも「その性格が一変すれば」対象になりうるとしています。これでは、普通の市民が世の中をよくしようと思って作った団体ですら、共謀罪の対象になりかねません。

  次に、政府の説明によれば、「計画」という要件を課しています。「ただの話し合い」では対象にならない、としていますが、一般論としても「計画」と「共謀」の区別はできません。この要件は、何ら歯止めにはなりません。

 さらに、「準備行為」という要件は、刑法の殺人予備罪などが規定する「予備行為」と違って、日本刀の準備や毒薬の準備といった結果発生の具体的危険性ある行為よりも広く対象としています。お金を集めるといった日常的に誰もが行なっている行為ですら「準備行為」となりえます。

  したがって、行為でなく共謀を処罰の対象とし、何が処罰対象となるのかが明確に規定されないという11年前の問題点は、何一つ変わることなく残っています。
 日本国憲法のもとで、このような法案が認められないのは明らかです。

 また、政府は国連越境組織犯罪防止条約を批准するには国内法が必要だとしていますが、条約はこのような法案を求めてなどいません(※2)。この条約を締結するために新たに共謀罪を設けたのは、ノルウェー、ブルガリアの二か国に過ぎません。

  「参加民主主義」を基本理念に掲げる私たちにとって、犯罪防止上の必要性もないまま市民の自発的な活動を抑圧しかねないこのような法案は、決して認めることができません。私たち緑の党グリーンズジャパンは、自由で民主的な社会を求める幅広い市民や他の野党と共に、共謀罪の廃案を強く求めていきます。

 

註)

1:「みどりのテーブル」ニュースレター第2号6ページ
https://greens.gr.jp/uploads/2017/05/midorino_table_NL2_6p.pdf

2:この論点については以下を比較参照。

・法務省「現行法のままでも条約を締結できるのではないかとの指摘について」http://www.moj.go.jp/keiji1/keiji_keiji35-2.html

・日弁連「共謀罪なしで国連越境組織犯罪防止条約は批准できます」https://www.nichibenren.or.jp/activity/criminal/complicity.html

 

 

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