【声明】高浜原発3・4号機の運転差止仮処分を覆した福井地裁判決は安全を保障するも…

【声明】
高浜原発3・4号機の運転差止仮処分を覆した福井地裁判決は安全を保障するものではない
-すみやかな脱原発と自然エネルギーへの転換を-

2016年1月3日
緑の党グリーンズジャパン 運営委員会

 昨年12月24日、福井地方裁判所は、関西電力(以下「関電」)に対して高浜原発3・4号機の運転差止めを命じた仮処分決定(昨年4月)を取り消し、同時に、関電大飯原発運転差止仮処分の申し立てについても棄却しました(*1)。同地裁の決定に対し、私たちはただちに速報版の声明を公表しました(*2)が、今回、あらためてこの決定やその背景にある問題点と私たちの立場を明らかにします。

 今回と同じ福井地裁が下した大飯原発運転差止判決(2014年5月)は、①4つの原発に5回にわたり基準地震動を超える地震が10年足らずの間に到来しているのに、基準地震動の策定方法が基本的に従前と変わっていない ②地震における外部電源の喪失や主給水の遮断から過酷事故に至る危険性がある ③使用済み核燃料が堅牢な施設に囲われることなく保存されている 等、重大な指摘を示し、昨年4月の高浜原発運転差止めの仮処分にも、これと同様の考えが反映されています。これらの指摘は、日本の全ての原発にあてはまる問題であり、政府・事業者・規制委員会が真摯に受け止めなければならない重要な課題です。

 しかし、それを無視して、関電は高浜原発の再稼働の準備を進め、規制委員会も設置変更を許可しました。今回の決定は、再稼働に向けた準備を既成事実化しようとする関電や規制委員会の主張や姿勢をそのまま追認するもので、速報版の声明で指摘した通り、司法の責務を放棄したものと言わなければなりません。

 また、今回の決定では、原発が「安全」であるかどうかの判断基準として、福島原発事故の経験を踏まえて「危険性が社会通念上無視できる」かどうかという「規範」を示しています。そうであるならば、批判的科学者や技術者の知見・見地からの検討も具体的に加えられなければならないにもかかわらず、それらは生かされず、結果的に、示された「規範」と、それを適用した結論とを結びつける論理は矛盾し、破綻しています。

 一方、本決定においても,原告弁護団・関係者の粘り強い運動の成果は反映されています。決定は高浜原発に「過酷事故が起こる可能性が全く否定されるものではない」ことを認め、批判的科学者・技術者の指摘を踏まえたさらなる安全対策を明確に求めています。司法においても、「3.11」以降の脱原発を求める市民の運動や世論を完全には無視できないことが示されていると言えます。

 国や事業者は、こうした指摘こそを重く受け止めるべきであり、その上で、速やかに脱原発と持続可能なエネルギー社会へシフトすべきです。

 また、今回の決定の直前、再稼働への地元自治体や福井県の合意手続きが進む一方で、同原発から5キロ圏の舞鶴市や京都府は「同意のプロセスから除かれており遺憾」と表明しています。避難計画も不十分なまま、影響の広がる可能性のある地域の住民や自治体の関与なしに、地元立地自治体への原発交付金や「経済効果」などによる誘導によって再稼働が進められていく政治的プロセス自体も大きな問題です。

 私たち緑の党は、すみやかに脱原発を達成し、持続可能なエネルギー社会へシフトするために、原発誘導施策の転換を含め、多くの市民の皆さんとともに、今後も各地域やさまざまな現場において、連携を深め、提案し、行動していきます。

 

*註
(1)大飯原発3・4号機については2014年5月に差止判決が下されたが、判決が確定していないため、差止の仮処分が申し立てられていた。今回の棄却は「規制委員会の審査が未了であること等から保全の必要性がない」が理由であり、大飯原発が安全であると判断したものではない。
(2)緑の党運営委員会声明(速報)「高浜原発運転差止仮処分を覆した福井地裁決定は司法の責務の放棄」(2015年12月25日)https://greens.gr.jp/seimei/16351/

※補足:これまでも紹介している通り、高浜・大飯原発の運転差止の申し立てには、緑の党の松本なみほ・長谷川羽衣子両共同代表も申し立て人として加わっており、笠原一浩・前運営委員も弁護団の一員として参加しています。

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