【論説】 政府の「地方創生」策でなく、緑の「地域創生」を

 

【論説】 政府の「地方創生」策でなく、緑の「地域創生」を

 

                                             緑の党グリーンズジャパン 運営委員 小森忠良

                                                                                                                          2015.7.28

 昨年5月、増田前総務大臣を座長とする「日本創成会議」は、若年女性人口の減少で、地方都市は約半分が消滅するという過度な「消滅可能都市」論を展開、多くのマスコミ報道も追随しました。これを受けて政府も2060年に1億人の人口を維持するために、出生率の低い東京圏から高い地方へ「ひと」を移動させて人口を増やすために、地方に「しごと」を 創り、(30万人の雇用創出)、経済成長(実質2%、名目3%の高い経済成長)を実現するための人口維持が狙いの「地方創生戦略」を打ち出しました。国が人口目標を立てて地方に割り振ってくる(自治体ごとに「長期人口ビジョン」の制定を義務づける)のは、本末転倒です。

 政府は、さらに昨年末、その一環として、「まち・ひと・しごと創生総合戦略」を閣議決定し、現在、全国の地方自治体は一斉にその戦略策定作成作業に入っています。ここで戦略の対象となる政策は、①しごとづくり②ひとの流れ③結婚・出産・子育て④まちづくりに関することとなっています。とりわけ「しごとづくり」は、まち・ひと・しごと創生の好循環を生みだす重要分野と位置付けています。これをうけ、第一段階として2014年補正予算で、プレミアム付き商品券等の約4200億円の「地域住民等緊急支援のための交付金(消費喚起型)」が実施されました。

 「総合戦略」は、「地方にしごとをつくり、安心して働けるように」「地域循環経済」などを掲げ、企業の地方移転、地方移住の推進、若い世代の経済的安定などを掲げています。その理念自体は良しとしても、一方で安倍政権はTPPの推進や労働者派遣法の改悪を進めており、「地方にしごと」どころか、地域経済に大きな打撃を与え、若者たちの不安定雇用を一層拡大する政策を進めています。また、中小企業や地場産業の育成については昨年の補正予算から本年度予算にかけて一時的な大盤振る舞いなどはあっても、その持続性は何ら担保されていません。さらに、地域経済の牽引役としてグローバルニッチ企業や大規模農業生産法人の役割や投資といった観点がことさら強調され、地に足のついた循環経済を実現するための具体的な施策は脆弱です。

 今後、全国で1700余の市町村と47都道府県が一斉に「○○市まち・ひと・しごと創生総合戦略」を策定しますが、その結果どのような国になるのでしょうか。自治体が、専門家の手を借りて総合戦略を策定し、国はKPI(重要業績評価指標)を設定し、効果を検証すると言いますが、近視眼的な設定になりがちで、最終的には予算ありきでこれまでの地方へのバラマキとなることが懸念されます。地方創生戦略は、国家戦略の隠れ蓑として、これまでの地方経済の豊かさを望む既得権益層への心地よい宣伝戦略となることでしょう。

 自民党は、先の統一自治体選挙マニュフェストで、「地方が主役の真の地方創生を」とよびかけ、地方に権限委譲をすると見せかけながら、実は中央集権的に、「コンパクト+ネットワークでまちづくり」や「スマートウエルネス住宅・シティの実現のため、都市再生」等の国家のデザインを強制するものであり、地方の自主性やしなやかな自律力を奪うものになります。地方分権ではなく、中央集権で「地方を考える」姿勢がおかしいと考えます。

 これまで、まちづくり、インフラ再整備、医療・介護・福祉、教育、雇用、産業などの諸分野において、地域の活性化のための努力は行われてきましたし、短時間で成果の出るものではありません。

 岐阜県の中山間地にある郡上市石徹白(いとしろ)地区では、長年、過疎に悩んできましたが、国や県の補助金を使いながら、移住したNPO職員と地元の方が知恵と資金を出し、2007年から農業用水を利用した小水力発電に取り組んできました。2014年から出力100Kw規模の水力発電所の建設に入り、完成予定の2016年には地区全体の電気を従来の電力会社から購入するこく自給できる見込みとなりました。これに関連して農業分野を中心に雇用が生まれ、石徹白の暮らしと知恵を体験する「いとしろ青空学校」は都市住民との交流を促進、都会からの新規定住がはじまり、人口減少の流れが止まりつつあります。こうした地域発の創生事例は、全国でも多く見られることでしょう。

 中央から戦略策定を要請されて動く「地方創生戦略」でなく、地域住民が主体となったまち、ひと、しごとづくりが大切だと私たちは大切だと考えます。みなさんがそれぞれの地域で、リーダーシップを発揮し、緑の「地域創生」のイニシアティブをとっていこうではありませんか。

 

<ご参考>

首相官邸ホームページ
まち・ひと・しごと創生本部
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/sousei/

 

東海農政局(石徹白得地域づくり協議会)
http://www.maff.go.jp/tokai/noson/shinko/kizunadukuri/itoshiro.html


石徹白マイクロ水力発電事業
http://itoshiro.blog98.fc2.com/

 

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